【日本と地震】外国人が話す、災害が起こる“宗教的”な理由

 

このまえ16日の夜、福島で最大震度6強の地震が発生して4人の死者が出た。
2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた地域が、復興に向けてがんばっているなか、去年も震度6強の地震(福島県沖地震)の直撃を受けて“また”今年もだ。
テレビニュースでは、「自分はここで死ぬのかという恐怖を感じた」と青ざめた顔で話す人がいたし、過去2回の改修で借金を抱えた旅館のオーナーが、食器が散乱した床や破壊された窓ガラスを見て「再開する自信はない」と肩を落とす。
コロナのまん延防止措置が解除されて、客が増え始めて週末の予約はいっぱいだったのに、すべてキャンセルするという。
そしてオーナーはため息をついてこう言った。

「どうして何度も何度もひどい目に遭わなければいけないんだ」

この言葉に(無責任な)ネット民の反応は?

・自然には逆らえない
・人の力じゃどうしようもないから天災なんだよ
・どうしてって断層に聞かないとな
・地震の神様お願いもう止めて…
・地震少ないところは火山の射程圏内とうまくできてる
日本に安全な土地はない

なかにはこの地震は自然ではなくて、人が起こした「人工地震だ」という人が大勢いて、ツイッターで一時トレンド入りしたが、「んなワケない」と専門家はバッサリ。

NHKニュース(2022年3月17日)

「人工地震ではありません」 専門家が解説

地震のエネルギーに注目すると、今回の地震は人工地震でないことはすぐわかるという。

日本に住んでいる以上、地震や火山、洪水などの自然災害から逃れることはできない。
ヒトの力を超えたところにあるものは、どうすることもできないのだ。
…ということは分かるとしても、でもやっぱり被害を受けると「なぜこんな目に?」と思ってしまう。

 

 

こういう巨大な自然災害が起こって、その理由を科学以外のことに求めるとしたら、日本人なら「運命」と答えると思う。
なんでそうなったのかサッパリ分からないけど、とにかく起きたことは受け入れるしかない、みたいな。

東日本大地震が起きたとき、当時の東京都知事が「天罰だ」と言ったら、すさまじい批判を浴びてすぐに謝罪して撤回した。
*正確にはこんな発言。

「津波をうまく利用して(日本人の)我欲を一回洗い落とす必要がある。これはやっぱり天罰だと思う」

「罰」は論外として、これが「天意」だったらまだ非難は少なかったと思われ。

キリスト教やイスラム教にはこれと同じような発想がある。
一神教の信者にとって神とは、創造神であるゴッドやアッラーだけで(呼び方は違うけどまったく同じ神)、人間や昆虫などの生き物、山や海などの自然も、この世にあるすべてはその神がつくり出したもの。
そしてこの世で起こることは神の意思によるものだから、東日本大地震もそのひとつで、神がそれを起こさせたという理解をする。

マダガスカル人やタンザニア人などのキリスト教徒、イエメン人やバングラデシュ人のイスラム教徒から話を聞くと、「現実的な解釈や被災者の気持ちを抜きにして、宗教的な観点だけからいうと、地震や洪水などの災害を宗教的に捉えると“神罰”になる」という。
東日本大地震の場合は、日本にはキリスト教やイスラム教を信じない人間が多いから、神が怒って“罰”を与えるためにそんな災害を起こしたと。

でもアメリカ人やイギリス人に言わせると、こういう考え方の人はファナティック(狂信者、熱狂的支持者)だけで、本当に例外中の例外だ。
だから欧米でも、そう考える人がいないことはないらしい。
そういえば2日前に地震が起きたとき、日本にいるブラジル人がSNSにこんなメッセージを書き込んだ。

Terremoto em Fukushima….Deus nos proteja 🙏
(福島で地震…神様、私たちを守ってください 🙏)

一神教では神がすべてで、その意思は絶対的だ。
神を心の底から信じていたのに、「彼の信仰心はどれだけ強いのか?」と神と悪魔の“賭けの対象にされて、全財産を奪われ、さらに子ども全員が殺される不幸を与えられたヨブという人が聖書にいる。
こんな理不尽な不幸を受けても、人間は神につくられた被造物だからそれを受け入れるしかない。

ヨブ記にみるキリスト教と仏教の違い。因果応報か神の意思か?

 

タイ人やミャンマー人などの仏教徒に、地震などの災害が起こる宗教的な理由を聞くと「輪廻と因果応報」をあげた。
*以下、被災者への配慮は一切なしで、輪廻と因果応報の視点から。

地震の被害に遭う人は、過去や前世ですごく悪いことをした人だから、現世のいまその報いを受けてツライ目にあっている。
地震や洪水が起きて助かる人と命を失う人の差も、過去に行った“罪の重さ”によるから、それで亡くなった人はそれだけヒドイことをしたということになる。
だから、それは因果応報のルールに基づくもので仕方ない。
でもその死をもって、前世の悪業は消えるから、来世ではもっと幸せに生きることができる。
2004年に22万人の死者を出すスマトラ島沖地震が起きたとき、ミャンマーやタイの海岸近くにいた多くの漁民が津波で亡くなった。
そのときに「彼らは魚を獲って生活していたから、命を奪ってきた報いを受けたのだ」という話が広がったという。

「どうして何度も何度もひどい目に遭わなければいけないんだ」という問いの答えは、宗教によっていろいろと違う。
でも、いちばん迷信深いのは「人工地震」を信じちゃう人かも。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。