【フランスの宗教対立】戦争&虐殺を終わらせたナントの勅令

 

4月13日、日本でこの日は「決闘の日」だ。
1612年のこの日、宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で戦ったことにちなんで、こんな記念日ができましたよと。

で、その14年前の1598年4月13日は、高校世界史で必ずならう「ナントの勅令」が出た日。
フランス国王アンリ4世によるこの命令によって、プロテスタント(新教徒)にもカトリック(旧教徒)とほぼ同じぐらいの信教の自由が認められたのだ。
つまり、それまでのフランスはこの反対で「修羅の国」だったってこと。
同じ神を信じるキリスト教のプロテスタントとカトリックの信者が対立していて、「決闘の日」が日常茶飯事という状態が続いていた。

1517年にドイツのルターがローマ・カトリック教会のやり方に抗議し、宗教改革が始まってプロテスタントというキリスト教の新しいグループが生まれる。
そんな動きがフランスに伝わると、カトリック一強だった同国で、「ユグノー」と呼ばれるプロテスタントが次々と誕生していって、カトリック信者との対立が深まっていく。
といっても当時のフランスでは、カトリック教会の力が圧倒的にして絶対的。
だから、プロテスタントの人たちは捕まって火刑に処されるとか一方的に弾圧されて、他国へ亡命する信者も多かった。

「自分との違いは間違いだ!」という自分勝手な正義を振りかざし、他人に自分の価値観を押しつけるウザイやつはいまでもいる。
16世紀のフランスでは、カトリック信者がまさにそんな独善的な人間だ。
それで、「ユグノーという異端者を殺すのは正しいこと。それは神の意思にかなう正義の行為だ」という狂気の空気があって、1562年に事件ぼっ発。
フランス北東部のヴァシーで、カトリックの貴族が軍に命じてユグノーを殺害する「ヴァシーの虐殺」が発生する。
これがきっかけとなって、カトリックとユグノーとの間で戦いが始まり、やがて和平を結んで事態は落ち着いた。と思ったらまた戦いが始まって、和平を結んだらそれがまた破られて…の無限ループに突入し、約40年(1562年~98年)にわたって争い続ける「ユグノー戦争」となった。

この宗教対立に人びとは疲れ果てる。もう心底ウンザリだ。
ということで不毛な争いを終わらせるために、国王シャルル9世の妹でカトリック教徒のマグリットと、ユグノーの有力な指導者であるアンリを結婚させることにした。
分かりやすい政略結婚だが、でもこれで両者がひとつになって、同じフランス人同士が殺し合うユグノー戦争はようやく終わったのだった。
…というほど、宗教をめぐる争いは甘くないですぞ。

この結婚によって、ユグノーの力が増大することを恐れたカトリック側(マグリットの母)が、ユグノーの有力者であるコリニー提督を暗殺しようと考えた。
これが終わりの始まりとなる。
キリスト教のサン・バルテルミの祝日である8月24日、仏全土で、カトリック信者が数千~数万人のプロテスタント(ユグノー)を殺しまくる「サン・バルテルミの虐殺」が起きた。

暗殺者たちは国王と母后に供するためにコリニー提督の首を斬って立ち去り、残された体は群衆によって切り刻まれ、胴体はセーヌ川の岸辺まで運ばれて絞首台に吊るされ、そして「豚のように」焼かれた。

サン・バルテルミの虐殺

ユグノーのアンリとカトリックのマルグリット

 

平和のための結婚がこの大虐殺の原因となる。

 

ユグノー戦争の期間中に起きた惨劇としては、「サン・バルテルミの虐殺」が最大にして最悪のもの。
いつまでも続く、カトリックとユグノーとの決闘の日々。
これにピリオドを打つため、上のアンリがフランス・ブルボン朝の初代国王アンリ4世として即位すると、1598年に「ナントの勅令」を出し、ユグノーにもカトリック信者とほぼ同じ信仰の権利を認めた。
これによって、ユグノー戦争とかいう宗教大戦争はやっと終結する。
「ナントの勅令」の発布は近世のヨーロッパで、初めて個人の信仰の自由を認めた画期的な出来事となった。
カ・ユの融合が進んだあと、フランスは国家として統一されていき、社会的にも落ち着いて国家財政も安定していって、17世紀には大繁栄の時代を迎えた。

 

ナントの勅令

 

おまけに書くと、「太陽王」と呼ばれたフランス黄金期の王ルイ14世は調子に乗りやがって、なんとナントの勅令を廃止して、フランスをカトリック中心の国家に戻してしまう。
これで多くのユグノーが外国へ逃げだして、フランスを衰退させる原因となった。
すると、悪化した財政を立て直すために増税するというダメパターンにおちいって、国民の不満を招き、やがてそれがフランス革命につながる。
ユグノー戦争という地獄の宗教対立を終わらせたナントの勅令の価値や重みを、裕福な時代に生まれたこの王は理解していなかったらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。