日本のパンの歴史:侍が初めて作り、明治にあんパンが大人気

 

このまえの火曜日、4月12日は「パンの記念日」だった。
スルーしてたけど静岡県民としては、やっぱり偉大な先輩の話はしないといけないかなと。
江戸時代の1842年4月12日、江川 英龍(ひでたつ)というサムライが日本で初めてパンを作ったから、それを記念してこの日がつくられた。
パンは戦国時代にヨーロッパ人宣教師が伝えたものだから、そのころにも日本でパンは作られたと思う。が、文献で確認できる「日本初のパン」は、伊豆出身の江川がこのとき焼いたもの。

当時、幕末の日本では西洋の船が現れて、「何が始まるんです?」人びとは危機感を募らせていた。
この国難に、西洋の学問を取り入れて日本を守ろうとした江川は、ヨーロッパの砲術を広く伝えて同時にパンも作った。
彼の考えたパンは軍隊が持っていくのに都合のいい、腐りにくい保存食としての兵糧パンだったから、いまの日本の店で売ってるパンとは別ものと思った方がいい。
それは乾パンのような固いパンで…、まあくわしいことは伊豆の国市が再現した「パン祖のパン」を検索してくれ。

 

江川 英龍

 

「パンの記念日」の一週間ほどまえ、4月4日は「あんぱんの日」という記念日だったから、4月はパンの強化月間だ。

江川 英龍(ひでたつ)の思いとは別で、日本は開国して西洋文化を取り入れる道を選ぶ。
江戸幕府が崩壊して明治時代になると、全国の武士はその地位を失って一般人となって新しい仕事を見つけ、自分の力で人生を切り開いていかないといけなくなる。
いまの木村屋總本店の創業者・木村安兵衛もその一人で、彼はパン屋を始めることにした。
「元サムライがパン屋を開く」というのは、現代ならアニメの設定のような話なんだが、江戸から明治の動乱期にはそんなことが日本中であったのだ。
そんな木村安兵衛とその息子によって「あんパン」が考案される。

木村親子は日本のシンボルである桜に注目し、その花びらの塩漬けをあんパンに埋め込んだ「桜あんぱん」を作って、それを明治8(1875)年4月4日、お花見をする明治天皇へお茶菓子として献上した。
この名誉にちなんで「あんぱんの日」ができる。
あんぱんの日とは?

天皇に気に入られたあんパンは、宮内庁御用達というすさまじい地位を手に入れることに成功して、全国的に知られるようになる。
そして日清戦争(1884~85)のとき、全国から集められた兵士にあんパンが支給され、この換算不可能なほどの宣伝広告であんパンは全国的に大人気となる。
直接的なつながりはないんだろうけど、江川 英龍の着眼点は鋭かった。

あんパンが人気になった理由には味のほかにも、目新しいものや外国のものに飛びつく日本人の好奇心があったという。

Anpan was very popular, not only because of its taste, but also because the Japanese were interested in anything new and foreign at this time.

Anpan

 

「パンの中にアンコを入れる」というこの日本人の独自の発想から、1900年に「ジャムパン」、1904年には「クリームパン」が生み出された。
そしていまでは、たまごサラダ、やきとり、さつま揚げなどを具材としたいろいろな菓子パンがある(またはあった)。
ということで日本中の菓子パンの始まりは、元サムライの木村安兵衛が作ったあんパンにある。
さらに歴史をたどると江川 英龍という、西洋の船が現れて「日本を守らねば!」と考えたサムライにいきつく。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。