ロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めてから、4月日24日で2カ月になった。
当初ロシアは数日で首都キーウ(キエフ)を制圧する予定だったというけど、その予想は大ハズレで、戦闘はいまも続いている。
ウクライナ側の驚異的な抵抗によって、ロシア軍は攻略することができない。
でもそれだけ犠牲は大きくなって、マリウポリだけで住民2万人が死亡したというから、全国では一体どれだけの人が犠牲になったのか。
もちろんこの責任はウクライナではなくて、撤退しないロシアにある。
ウクライナと同じように、第二次世界大戦後の長い間、ソ連の支配を受けていた国にリトアニアがある。
地理的にもウクライナに近く、「次にロシアに狙われるのはリトアニアだ」という不吉なウワサがあるところだ。
そんな国の人とこのまえスカイプで話をした。
日本では、「ロシアは降伏した人間の命を保証している。これ以上の犠牲者を出さないために、ウクライナはロシアに降伏するべきだ。」という声があるけど、これについてどう思うかたずねたら、「オオカミを信用するなんてバカげている」と鼻で笑われた。
リトアニアは第二次世界大戦のあと、「ソビエト連邦に加盟する共和国」という位置付けで実質的にはソ連の属国にされていた。
もちろんソ連の侵略に対する抵抗活動はある。
1944~52年にかけて、約10万人の「森の兄弟たち」とよばれるパルチザン勢力がソビエト側と戦うも、最後は壮絶に散った。
約3万人のパルチザン兵士およびその支援者は殺され、そのほかにも多くが逮捕され、シベリアのグラグへと強制追放された。第二次世界大戦中、あわせて78万人の住民がリトアニアで殺された。
このあとソ連の支配下で、リトアニア人は自由や主権を奪われたまま生活することとなる。
でも、自主・独立を求める気持ちはずっと消えず、1991年にソ連と戦って自由と尊厳を回復した。
こういう経験のある国の人たちは、日本人よりもはるかに正確にロシアを知っている。
だから、プーチン氏を信用して降伏するという発想を知ると、「オオカミを信用するなんて…」とあきれるらしい。
実際、この戦争が始まる前までを「おさらい」してみると、このリトアニア人の見方には説得力がある。
きょねん9月ごろベラルーシとの軍事演習を名目に、ロシア軍がウクライナの国境付近に兵力を集めて緊張が高まった。
これに対して11月、ロシアの報道官は「ロシアは誰も脅迫しない」と明言。
でもその後も、兵員の増強や補給物資の集積が衛星によって確認され、12月にはワシントン・ポスト紙が「ロシアが2022年早々にも最大17万5000人を動員したウクライナ侵攻を計画している」と報じる。
するとロシアは「あくまで演習にすぎない」と否定し、こうした報道は「ロシアを悪魔化し、潜在的な侵略者とみなしている」と反発した。
年が明けて、部隊の撤収を求める欧米にロシアのラブロフ外相は、「ロシアはウクライナ国民を一度も脅したことはない。攻撃する意図もない」と主張する。
東京新聞(2022年1月22日)
米ロの緊張継続 「攻撃しない」と言いつつ部隊撤収しないロシアに「言葉でなく行動を」と米国務長官
そしてその翌月、駐日ロシア大使は「ロシアには戦争をする意図も計画もない」、「ロシアから軍事行動を起こすことはない」と強調し、ウクライナ周辺での”軍事演習”を正当化した。
NHK(2022年2月15日)
駐日ロシア大使「ロシアには戦争をする意図も計画もない」
ロシア大使は、
「国民の命と暮らしを守るために必要な軍隊を持たねばならず、訓練も行わなければならない。第三国に対して軍事侵攻を行う前兆とみてはならない」
と言って、ロシアがウクライナへ軍事侵攻するという見方を一蹴する。
これから10日もたたないうちに、プーチン大統領はウクライナへの軍事作戦を行うと宣言し、ウクライナ各地でロシア軍による砲撃や空襲が始まった。
ここ数か月、ロシアがしていた説明は世界を油断させるため、侵略を成功させるための“ウソ”だった。
こういう現実をみると、日本での「降伏論」はお花畑から出た発想で、「オオカミを信用するな」という見方の方が正しいと思う。
プーチン氏の言う「安全は保証する」は死亡フラグだ。
追記
ロイターで「その手があったか!」的なニュースを発見。(2022年4月22日)
まだ気は早いけど、ウクライナの戦後復興にはばく大な費用が必要になることは間違いない。
それで欧米などがおさえているロシアの資産から、それを捻出しようとする動きがあるらしい。
ウクライナ、復興でロシア凍結資産の活用を模索
「ロシアには戦争をする意図も計画もない」と世界にウソをついたから、こんなことになるのだ。
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