【仏像虐待】タイ人が日本の寺で「ヒドイ…」と思ったこと

 

きょう5月19日は、1293年に鎌倉大地震が起きた日だ。
マグニチュード8ほどの大きな揺れで、数千~2万3千人の死者が出たとされる。
多くの建物が倒壊し、悲しみに包まれる鎌倉で抜け目ない男がいた。
幕府の執権・北条貞時はこの混乱をチャンスと考え、強大な力を持っていて目障りだった平 頼綱(よりつな)を襲撃し、頼綱とその息子、さらに100人近い一族の人間を殺害するという鬼畜っぷりを披露。
平禅門の乱

この鎌倉大地震と同じ13世紀、高徳院に大仏が建てられた。
これがいまでは外国人にも有名な「鎌倉の大仏」で、当時は全身に金箔をほどこされてキラキラ輝いていたから、いまとまったく違った雰囲気だったはず。
この大仏はいいとして、それをおさめた建物(大仏殿)は何度も大風などで倒壊したから、鎌倉大地震のときにも破壊されたかもしれない。
高さ約11.3m、重さ約121トンの巨大仏をさらに上回る超巨大な建物だったから、強風には弱かったらしい。
倒壊するたびにに建て直されてきた大仏殿も、江戸時代が始まるころには完全になくなって、現在のような野ざらしの状態で置かれるようになる。
大仏殿を建てるには莫大な金や労力を必要としたはずから、何度も建て直しているうちに、お坊さんも地元の人も「せっかく建てても、どうせまた壊れるし」とか投げやりになっちゃって、14~15世紀のどこかで倒壊したあと、建物はもう再建されなかったと思われ。

 

 

大地の上にどっしりと座って、空を天井とする鎌倉の大仏に建物なんてなくていい。
むしろ数百年もの間、風・雨・雪などにその身をさらしながら、黙って目を閉じて同じ姿勢を取りつづけている苦行僧のような姿が尊い。

まえに台湾人、香港人、タイ人、インドネシア人と一緒に鎌倉を旅行して、この大仏に案内したら、ここはすごく印象的だとみんな言う。
でも、台湾人・香港人・インドネシア人は「すごくいいデス!」と好意的だったのに、2人のタイ人は「これは立派な像だと思いますけど、建物がないのはかわいそうですね。」と複雑そうな顔で言う。

その数年後、鎌倉の大仏を見たというミャンマー人と会ったときにその感想を聞いたら、

「仏さまに建物がないなんて驚きました。ミャンマーでは仏像はとても大切にされているから、必ず建物の中に置きます。家の無い人間がいても、家の無い仏像はありませんよ。日本は先進国でお金があるのに、なんで大仏を外に放置して雨や風にさらすのか理解できません。」

と、やや怒り気味に話す。
そんなミャンマー人に先ほどのタイ人の感想を伝えると、「『かわいそう』という気持ちはよく分かります。本当にそのとおりですよ。」と全身全霊で同意する。
鎌倉の大仏は天と地の間にあるのが雄大でいいと思うのだけど、タイ人とミャンマー人はまったく違って否定的だ。
現代の日本の技術力をもってすれば、巨大台風にも耐えられる大仏殿を建てることは可能なんだろうけど、鎌倉の大仏はやっぱりあのままでいい。

ただ、タイやミャンマーでも野外に仏像が置かれているのを見たし、鎌倉の大仏の感想はいままで3人にしか聞いたことがないから、これが一般的な意見かは分からない。

 

その後、別のタイ人と袋井市にあるお寺に行ったとき、このお堂にあった仏像を見て彼女が言葉を失う。

 

 

「なんでこの像を中に入れないのですか?雨や風に打たれて、色が剝げてボロボロじゃないですか。タイ人の感覚なら、仏像は一番大切なものですから建物の中に入れますし、こうなる前に色を塗り直すね。これだと見ていて心が痛いです」

という話を聞いたら、鎌倉の大仏を思い出すしかない。
仏像を尊いと思う気持ちは一緒でも、日本人は長年の風雪に耐えた仏像の姿にありがたみや偉大さを感じるからそのままにしておいて、タイ人やミャンマー人は偉大な存在だからこそ、仏像に衣を着せたり色を塗ったりして、常に新しくキレイな状態を保つようにしていると思う。
このへんは宗教心というより、美的感覚の違いだろう。
鎌倉の大仏もオリジナルのように、全身に金箔を貼るよりも、いまの姿の方が尊いと思う日本人が多いのでは。

 

これはミャンマーにあるシュエダゴンパゴダ
タイのお寺もこんなキラキラ・派手派手が一般的で、地味な日本のお寺とは根本的に違う。

 

 

 

日本 「目次」

仏教 目次

日本人の宗教観(神道・仏教)

日本なら神仏混交:タイ仏教に深く関わるインドの神インドラ

タイ人が驚いた日本仏教:肉食の僧とお寺の中でのすき焼き

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。