トルコライスを見て、トルコ人が「ありえない!」と思った理由

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長崎のご当地料理で有名なものには、皿うどんのほかに「トルコライス」がある。
トルコライスは豚カツ、ピラフ、スパゲティ、野菜、ピラフ(またはチャーハン)などが1つのお皿に集合している「全部のせ」料理だ。
アイデアしだいでさまざまなバージョンを開発できるので、「大人のお子様ランチ」なんて言われることもある。しかし、トルコライスはダイエットの天敵で、中高年にとっては糖尿病への快速チケットになることもあるので、上手に付き合わないといけない。

トルコライスの由来には次の説がある。

戦後、神戸の米軍将校クラブで働いていた日本人が焼き飯を作っていて、彼はそれをトルコのピラフに似せて「トルコ風ライス」と呼んでいた。その後、彼が長崎に移住し、その食べ物がレストランのメニューに採用されると人気が広がり、現在では長崎を代表するご当地グルメに成長した。
※トルコライスの発祥には諸説あり。

1890年9月16日、日本人がトルコ人を救助する「エルトゥールル号遭難事件」が起きたことにちなんで、長崎では9月を「トルコライス推進月間」、9月16日を「トルコライスの日」にするほどこの料理に魂をかけている。

トルコ大使が日本の小学生に感動した理由。エルトゥールル号事件

そんな長崎のソウルフードについて、トルコ人はどう思うのか?

 

以前、どこかで見たトルコの観光パンフレットに、「WEST MEETS EAST」というキャッチコピーがあった。トルコはヨーロッパとアジア、キリストとイスラム文化圏の境にあるから、よく「西洋と東洋の出会う場所」とロマンチックに紹介される。
観光コピーならそれでいいけれど、政治的には、トルコはどちらにもつかずの微妙な立場にある。エジプトやサウジアラビアなどが加盟するアラブ連盟に入っていないし、EUにも加盟していない。しかし、トルコはNATOの一員で、ドイツやイタリアなどが競い合うサッカーのUEFA欧州選手権にトルコも参加している。
だから、トルコは西洋とも東洋とも言い切れない。

歴史をみると、現在のトルコには神聖ローマ帝国(東ローマ帝国)があり、キリスト教が信仰されていた。しかし、日本では応仁の乱が起きたころ、1453年に征服王メフメト2世に攻略されると、トルコはイスラム教のオスマン帝国となった。
都のコンスタンティノープルはギリシア語でビザンティオンと呼ばれていたから、東ローマ帝国は「ビザンツ帝国」とも言われる。
東ローマ帝国の時代にはキリスト教の教会、オスマン時代にはモスクとして使われていたアヤソフィアは、「WEST MEETS EAST」のトルコの歴史や文化を象徴している。

トルコとアヤソフィアの歴史 キリスト教→イスラム教→無宗教

 

コンスタンティノープル(イスタンブール)の陥落

 

日本に住んでいる知人のトルコ人に、「トルコライス」について聞いてみたら、まず彼はそんな食べ物の存在を知らなかった。なので写真を見せながら、「トルコライスには豚カツ、ピラフ、スパゲティなどがあって~」と説明した後、彼に意見を聞くと「それはおかしい」と即座に否定し、その理由をこう話した。

「イスラム教で豚肉は『汚れている』とされているから、信者は食べることができない。トルコ国民の98%はイスラム教徒なんだぜ? トルコの料理で“豚カツ”は絶対にあり得ないよ。」

この説明からも、トルコライスはトルコとは関係なく、ジャパンで生まれたことがわかる。2013年に長崎市の関係者がトルコを親善訪問したさい、トルコライスを料理を紹介したところ、トルコ側は「豚肉は食べない」と指摘し、「トルコ」の国名が付いていることに難色を示したという。

ソース:長崎新聞の記事(2013/7/8)

「トルコライス」に難色 “母国”トルコ訪問時に指摘受ける

 

知人の話では、トルコ料理なら基本的に、複数の炭水化物が同じ皿にのることもないらしい。トルコライスは日本人が勝手に考案した日本料理で、現地の食文化や習慣をガン無視している。
海外で、ご飯の上に犬の肉をのせた料理を「ジャパンライス」と呼んでいたが、日本人としては難色を示したくなる。こんな料理があると、「日本人は犬肉を食べるのか」という誤解が広がりそうだ。
そんなことから、知人のトルコ人は「豚肉を使ったトルコ料理はあり得ない」とトルコライスをバッサリ否定する。

でも彼は、トルコライスのアイデアはとても気に入った。
チャーハン(中国)とスパゲティ(イタリア)が同じ皿にのってるトルコライスには、東洋と西洋をつなげているという発想がある。
アジアとヨーロッパの特徴をもつ「WEST MEETS EAST」はトルコの歴史や文化そのものだから、これにはトルコ人も完全に同意できるらしい。

ということで、トルコライスから豚カツを抜いたらトルコ人に異論はない。
でもそうしたら、長崎人はもはやトルコライスとは認めないだろう。
だからもうトルコにはのっからず、これは日本料理、長崎料理としてアピールした方がいい。こんはふうに、ドンドン発展させていきながら。

 

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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