そうか、あの事件からもうそんなに経ったのか。
神戸新聞NEXT(2020/7/6)
校門圧死事件から30年 神戸高塚高、校門前で20人が黙とう
このとき高校教師が朝の遅刻指導をしていて、時間になったということで校門を閉めると、遅刻ギリギリだった女子生徒が猛ダッシュですべり込んで、校門にかばんを挟まれた。
そんなアニメの始まりのような展開ならよかった。
でも現実には1990年7月6日、兵庫県神戸市にある高校で、遅刻指導中の教師が閉めた校門に15歳の女子高生が頭を挟まれ死亡した。
それで先日、その高校の正門で追悼集会が開かれたと。
このニュースにネット民の感想は?
・この事件で校門は閉めたらあかんということになって
池田小の事件で閉めなあかんということになった
・日本のニュース番組MCの久米がこの件で学校を激しく批判した
と世界主要メディアがトップ扱いで伝えたらしい
・あの頃は校門で入る時に
髪の毛の長さや色
スカート の丈とか
中にはカバンの中まで調べる奴いたな
これは人類のどの常識から見てもあり得ない出来事だったから、世界中のメディアが衝撃的ニュースとして報道した。
例えばアメリカAP通信は、15歳の少女の頭蓋骨をつぶした(crushed the 15-year-old’s skull)この事件で、日本の厳しい管理教育や校則が議論を呼んでいると報じた。(August 7, 1990)
Girl’s Death in Gate Causes Debate of School Practices
重さ200㎏以上の鉄製の門に、生徒が頭を挟まれて死亡した事件は昭和の日本でも考えられないことで、これで学校教育を徹底的に見直す動きが進んだ。
この事件をアメリカ人、ドイツ人、ベトナム人、インド人、トルコ人などに話をすると、みんなしばし絶句したあと、「それは本当のコトですか?」と疑う。
「許せませんね。ウチの国でそんなことがあったら、民衆が学校に押し寄せてその教師をリンチしますよ」と言ったのはインド人。
日本の小中学校で英語を教えていたアメリカ人と話をしていて、当時、この事件があった高校では、遅刻した生徒には罰として校庭を走らせていたと伝えると、
「マジかよ。校舎の中で全校生徒が見てるんだろ?それじゃ見せしめじゃないか。人権侵害だよ。遅刻指導は別の方法でやるべきだ」
と言って怒る。
もういまの学校で、こんな遅刻指導はないと思うけれど。
知人の外国人で、日本の学校で英語を教えた経験のある人はたくさんいるから、いままでにアメリカ人、イギリス人、フィリピン人、トリニダード・トバゴ人などに「校門圧死事件」について意見を聞いたことがある。
もちろん全員、この事件は理解不能だし怒りしかない。
ただ、いまの日本の学校を見ていると、こうした悲劇が起こる土壌はあるとほとんどの人が指摘する。
外国人の自分には目的や効果がよく分からない校則がたくさんあって、教師はそれを児童・生徒にとても厳しく守らせていて、そんな管理教育を見ると息が詰まりそう。
具体的にはこんな感じだ。
中学校で女子生徒は、肩より長い髪は必ず結ばないといけなかった。
それも後ろに1つと決まっていて2つに結ぶこと(お下げ)はダメで、リボンの色も学校が指定したものだけ。三つ編みもしてはいけない。
男子生徒も髪の長さが決められていて、2ブロックは許されない。
休み時間に他学年の教室に行ってはいけないし、隣の教室に入ることも禁止した学校もある。
校内でこのていどの移動やコミュニケーションの自由が認められないというのは、彼ら外国人には理解できない。
「刑務所じゃないんだから」とため息をつくアメリカ人には、国籍や宗教に関係なく、いろんな外国人が同意するはずだ。
あるイギリス人は街中で偶然、勤務している学校に通うブラジル人の生徒と出会った。
そのブラジル人の女の子はいつも髪をしばっていて、自由に髪を伸ばしているのを見るのは初めてだったから、「とてもステキ!なんで学校でもその髪型にしないの?」とイギリス人が聞くと、自分の地毛は天然パーマで、学校でパーマは禁止されているからと言う。
学校が生徒にストレートヘアをパーマにするのを禁止することは分かるとしても、そのイギリス人には、地毛のパーマも”校則違反”になるというの想像を超えていた。
このイギリス人の感覚だと、その校則こそ人権侵害で法に反している。
そんなことでブラジル人の生徒は学校にいる間、常に髪をまとめていないといけなかった。
その天然パーマの髪はすごくキレイでもったいないとイギリス人が思っても、それがその学校の規則だからシカタナイ。
学校によっては「地毛証明書」を提出して許可を受ければ、パーマが認められるということもあるが、外国人が聞けば「それって差別では?」と思うだろう。
そんな批判は国内にもあるから、地毛証明書の提出を強制ではなく任意にする学校もあるし、そんな証明を求めらない学校もある。
「高校生(中学生)らしい髪型」という便利でアイマイな表現を使う校則もあるし、髪型ひとつだけでも対応は本当にいろいろ違う。
ただ日本の学校は髪型や服装には厳しくても、礼拝などの宗教行為には寛容で驚く外国人もいる。
学校内で礼拝もOK! 欧米・インド人も驚く、宗教に寛容な日本
もちろん海外の学校にも校則はある。
アメリカ人とご飯を食べているときにそれを調べてもらったら、学校によって事情はかなり違うという前提で、こんな校則があるという。
私服は問題ないけど、ミニスカートはダメで長さは決められている。
肩を大きく出したり、へその見えるような肌を露出する服はNG。
メガネはいいけどサングラスはだめ。
ピアスをするのは耳だけでそれ以外の部分、鼻や舌、まゆげのところにしてはいけない。
髪の毛を染めるのは黒や茶ならいいが、赤や青、黄色などはダメで、髪型もドレッドヘアやモヒカンは禁止。
ただ黒人にドレッドヘアを禁止することには、人種差別という批判もある。
日本でも都道府県や同じ県内でも、学校によって校則が違うように、アメリカでもルールは学校によってそれぞれだ。
そう言えばニューヨーク出身のアメリカ人が、日本の中学校では、彫刻刀を持って来ることがOKということにビックリした。
そのアメリカ人の感覚だと、学校に刃物を持ってきたら、生徒や教師が刺されるかもしれないから、アメリカの学校なら彫刻刀を持ち込むことはきっと許されない。
最近ポーランド人と話す機会があったんで、校則についてたずねてみると、あちらの学校は自由度がかなり高いようだ。
そのポーランド人には髪型について校則があった記憶はなく、中高の女子生徒は化粧してもいいから、校内や登校中の電車やバスの中でする人もいる。
世界中の人に聞いたことはないが、全体的にはこんなアメリカやポーランドのように、ヌルイのではなくユルイ学校が多いと思う。
日本の学校で働く外国人から話を聞くと、一般的な学校で日本以上に厳しい校則があって、管理教育をしている国は想像できない。
といっても、日本には日本の価値観や伝統があるから、海外の学校に基準を合わせる必要はない。
その学校の教員・生徒・保護者で話し合って、意味不明な校則は廃止・変更していけばいい。
最近では、そんな校則は「ブラック校則」として社会的に批判されていて、全国各地の学校で、ムダなものは無くしたり変えたりする動きは進んでいる。
いまの日本では昭和のようなガッチガチの管理教育や、原理主義的な校則順守もかなり減っているから、もう「校門圧死事件」なんて悲劇は起こらない。
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