「ライオンの都市」という意味を持つシンガポール。
この国は太平洋戦争のとき日本の支配下にあって、「昭和の時代に手に入れた南の島」ということで「昭南島」と呼ばれた。
そんな日本とシンガポールの共通点といえば街が超キレイなことで、特にシンガポールの場合、隣国のマレーシアから来ると、ゴミのない路上には目を洗われて感動すらおぼえる。
で、日本との違いといえば、なんつっても「多様性」だ。
人口は約550万人で、東京23区ほどの大きさの都市国家シンガポールには、中国系、インド系、アラブ系、マレー系などの民族が住んでいる。
宗教もそれぞれの民族を反映し、仏教、道教、ヒンドゥー教、イスラム教、ほかにキリスト教もある。
公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語の4つがあって、お札にも4つの言葉が書かれている。
なかでも中国系が人口の約75%を占めていて、シンガポールでは中国文化の影響がとても強いから、日本人なら食べ物に親しみを感じると思う。
そんなシンガポールをマレー語で表すなら、まさに「チャンプル」(ごちゃ混ぜ)。
「ゴーヤチャンプルー」なんかで有名な沖縄の言葉、チャンプルーも「ごちゃまぜ」を意味しているから、その語源をこのマレー語に求める説もある。
こういう多様性が日本とはまったく違う。
対照的に、国民の約98%を日本人が占めるこの国へ来たシンガポール人は、「こんなに広い国なのに、どこへ行っても同じ人しかいない!」と驚いた。
シンガポールで7月21日は、そんなチャンプルな国らしく「民族融和の日」になっている。
国内のいろいろな民族が仲良くしよう!という明るくポジティブな日なんだが、これは、融和を強調しないといけない悲しい出来事の裏返しでもある。
1963年にマレーシアと合体した翌年、シンガポールで「戦後史上最悪」と言われる人種暴動事件が発生した。
イスラム教の預言者ムハンマドの誕生を祝うために2万人のマレー系住民が集結すると、以前から政府がマレー人を優遇していることに反発していた中国系住民が、その集団に石を投げるなどしたことから、マレー系と中国系の人たちの間で血で血を洗う大規模な争いに発展。
同じ年の年9月2日にも人種暴動があり、合わせて36人が死亡し600人近い負傷者を出す。
ここまで多くの死者を出すにいたった背景には、マレー系のグループが中国系への敵意や憎悪を感情をあおるビラをバラまいたことがある。
このビラには、中国人がマレー人を殺すための計画を立てているというデマが書いてあり、中国人に対抗するためにマレー人の大きな団結を呼びかけた。
The leaflets instigated anti-Chinese and anti-PAP sentiments among the Malays as it called for a greater union of the Malays to oppose and wipe out the Chinese as they were believed to be starting a ploy to kill the Malays.
この惨事を受けて、マレー系と中国系との共存はもはや不可能と判断されて、シンガポールはマレーシアから追い出される形で独立させられた。
1964年に起きたこの人種暴動は、シンガポールの多民族・多文化主義の政策に決定的に重要な影響を与えることとなる。
特に特定の民族へのヘイトをあおる言動は絶対に許されないから、逆に「民族融和」をこれでもかっ!とアピールしている。
にもかかわらず、2013年にまた人種暴動が発生したから、シンガポールの見えない闇はまだまだ深い。
シンガポールの罰金制度が厳しい理由とは?「性悪説」をとったから。
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