インド人が山梨県で見たこの絵の意味を知って、「本当ですか!」とビックリした。
なぜかのか?
さて、いま京都の夏の風物詩がアブナイ。
その原因はあの”最悪の害獣”だった。
毎日新聞(2022/08/14)
京都の五山の送り火「法」の字ピンチ 獣害深刻化、有志が防護柵
お盆の翌日、山に大・妙・法などの形で火をつけて、あの世に戻っていく精霊を送る行事が「五山の送り火」。
この中の「法」の字があるところで獣害が深刻化している。
シカが付近の植物を食べまくって土壌は流出するし、そこに設置されている火床も倒壊しそう。
それで京の伝統を守るために、地元の人たちが火床の周囲に防護柵を設置した。
日本人とこの動物との付き合いはとても長く、シカはいつも身近にいた。
いま5月5日が「薬の日」になっているのは、611年の推古天皇の時代、この日に女は薬草を、男は若いシカの角(鹿茸:ろくじょう)を取りに行く「薬狩り」をしたことに由来する。
薬はいつだって必要だから薬狩りは恒例行事となって、この日は「薬日」に定められたと日本書紀にある。
ちなみに推古天皇の甥(おい)が日本を大きく変えた聖徳太子(厩戸皇子)だ。
1400年前は薬効のある角をもつシカは、日本人にとって益獣だったかもしれない。
が、21世紀のいまでは、イノシシやサルなどの動物の中でもシカによる獣害が最も深刻だ。
農林水産省の統計によると、シカによる農作物被害額は約82億円(2012年)とヒトに圧倒的な害を与えている。
シカ対策として、防護柵や網を設置しないといけないからその費用も必要になるし、それでも防ぐことができず、耕作を放棄する農家さんもいる。
ヤツラは木の皮をはぎ取るから木は枯れてしまうし、若い芽も見つけ次第食べやがるから、森林はどんどん衰退していく。
だからシカは全国紙に「害獣の王」と書かれてしまう。
産経新聞(2015/4/10)
「キングオブ害獣」シカを食べて駆除 ジビエブームに乗じて食害防止新施策 兵庫県
シカが増えた理由には肉や皮の利用が減ったり、ハンターが高齢化し減少して、単純に人が捕獲しないようになったことがある。
シカには天敵がいない。
となると右肩上がりになのは必然。
獣害をなくすために自治体も動き出して、例えば県内に多くの山があって大きな被害が出ている兵庫県では、シカを捕まえたら報償費を支給することにして、年間約3万5千頭の捕獲を目標にしている。
それとジビエだ。
猟師が山に入って捕獲した野生の獣や鳥、またはその肉をフランス語で「ジビエ(gibier)」という。
日本語の「野生鳥獣肉」より、ジビエのほうがオシャレ感がある。(たぶん)
ジビエ料理の高級食材として注目されているのがシカ。
積極的に食べることでシカ駆除につなげようと、兵庫県は約3700万円の予算を計上した(2015年)。
シカ肉は高タンパク・低脂肪で鉄分も多いから、生活習慣病の予防が期待できる。
シカによる被害は森林被害全体の約7割を占め、いま危機的状況になっているなどの獣害の詳しい情報は林野庁HP「野生鳥獣による森林被害」にある。
環境省はシカを親のカタキのように見ている。
話は変わって、「富士山を見ることが夢だった」と言うインド人がいたから、きょねん彼を富士五湖のひとつ、精進湖へ連れて行った。
するとそこにはお菓子や弁当などを売る店があって、入口のところにこんな絵が貼られていた。
これを見て、「このカワイイ生き物はシカですね。何て書いてあるんですか?」とインド人が聞く。
「ああ、この店ではシカの肉(きっとジビエ)を売っているんだよ」と話すと、「えええっ」とインド人が目を丸くする。
なるほど、これが「インド人もびっくり」か。
これは「害獣の王」で駆除しないといけないから、たくさんの人に食べてもらう必要があるという日本のシカ事情を話すと、「本当ですか!」とまた驚かれた。
話を聞いて、その理由が判明。
インドのシカ事情は日本の正反対だ。
悟りを開いたシャカが初めて教えを説いた場所は、多くの鹿のすむところで「鹿野苑」(いまのサールナート)と呼ばれた。
そんな感じに、インドでもシカは昔から人間の身近にいる動物だった。
でも、人間の狩りの対象になって激減してしまい、インド政府は法的に保護することを決めて、いまでは狩猟は違法となってヒトが罰せられる。
日本では農業や林業を守るために、最悪の害獣である鹿を駆除しないといけない。
店で観光客に鹿肉を売っているのもそのためだ。
このインド人からするとそれは、カワイイ絵で堂々と“違法行為”をしている(客に勧めている)ことになるから、絵の意味を知ったら驚くのもアタリマエ。
たぶんインド人的には、大麻よりシカ肉の販売のほうがヤバい。
日本ではネットを見ると「南インド風 鹿肉カレー」なんて料理があるけど、こんなレストランがインドにあったら警察に捕まる。
日本とインドでは、シカに対する見方が対極にある。
ということは、日本のシカをインドに大量におすそ分けしたら、ウィンウィンになるはずだ。
でもそれは現実的に無理だし、外来生物を持ち込むと、それはそれできっと別の問題が発生する。
結局、日本ではシカを必死に駆除、インドでは全力で守るしかない。
とりあえず一般人は「食べて応援」だ。
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