【日本人の偏見】インド人・ベトナム人を困らせる短絡的発想

 

5chじゃなくて日本人とベトナム人の交流グループで最近、こんな書き込みを見てビックリした。

「ベトナム人は喧嘩と万引きどちらが上手ですか?」

当然、ベトナム人からは怒りの声、日本人からも批判の声はあったものの、悪ノリした日本人はけっこう多かった。

日本で真面目に働いていて、しっかり税金を納めている圧倒的多くのベトナム人より、犯罪行為が見つかって警察に捕まるベトナム人のほうが目立つから、こんなイメージができるんだろう。
これは偏見を超えて蔑視や差別だ。

「あの人たちは〇〇だよね~」というように、特定の集団に対する先入観や思い込み、固定的な見方をステレオタイプをという。
ステレオタイプのイメージを持つことは、それ自体は悪いことじゃない。
外国人に「日本人は花見が好き」と言われるの問題ないが、「日本人は痴漢行為が好き」と言われたら誰だって、「祈れ」と指をポキポキ鳴らすはず。たぶん。

ステレオタイプのポジティブなイメージならOK、でもネガティブなものだと相手を不快にさせたり怒らせるし、その意識からうまれる言動は差別行為になることもある。

 

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの4つの変異株を、ギリシャ語のアルファベットを使って表すことにした。
これによって英国株はアルファ、南アフリカ株はベータ、ブラジル株はガンマ、インド株はデルタとなる。
この変更の理由に言うまでもなく、これまでの名称だと、悪いイメージが付くことをそれぞれの国が嫌がったから。

ギリシャ神話の神の名前も候補に上がったけど、それを採用している企業が多いから、その案はお流れになったらしい。
たとえばギリシャ神話に出てくる勝利の女神Nike(ニケ)をコロナウイルスの名称にされたら、ナイキからしたら「ふざけんな」となるはずだ。
どの国も企業も集団だって、負のイメージは付けられたくない。

 

ニケ

 

インド株が「デルタ」になって、いま日本のカレー屋にいるインド人は歓喜してるかも。
インドで変異株が見つかり、コロナウイルス感染者が激増したというニュースは日本のメディアがよく取り上げていた。
それから短絡的なイメージが形成され、「風評被害」にあうカレー屋がいま日本で出てきている。

石川テレビニュース(5/24)

“インド型”でカレー店に風評被害…「帰ってきたコックいる?」「インド人の客来る?」電話相次ぐ

コックはインド人か?
最近、インドから帰ってきたコックはいるか?
インド人の客は多いのか?
家族にインド人はいるのか?

日本人からよくそんな電話がかかってきて、インド株とカレーを結び付けられ頭を抱えるインド人がいる。
時短営業に協力していて、苦しい中でのこのレッテルはダメージが大きい。
いま外国人が日本へ入国するのは本当にむずかしいから、日本にいるインド人とインド株は関係ないと言っていいレベル。
にもかかわらず、「インドカレー屋は危険」という印象が一部で出来上がっている。
これは石川県だけのことじゃなくて、知人のインド人から静岡県にあるカレー屋のオーナーも同じことで困っているという話を聞いたし、探せば日本各地であることだろう。
インド株が「デルタ」になれば、こんな偏見も少しはなくなるか。

ちなみにむかし家の近所にあったインドカレー屋では、オーナーが日本人でコックはネパール人とパキスタン人というユニットで、インド人はまさかのゼロ。
この店は極端としても、カレー屋でインド人以外の外国人が働いていることはよくある。
インドでの感染拡大のニュースを聞いて、市内のカレー屋が心配になるというのはあまりに短絡的で、もう少しくわしくみればこの2つに関係がないことは分かるはず。
でも誤解や偏見というのはこういうもので、途中の過程をすっ飛ばして、原因と印象(結論)を直で結び付けてうまれる。

日本人はインドに対して、特にステレオタイプのイメージがあると思う。
最近も日本の音楽グループが「インド人はカレーしか食べない」といった偏見丸出しのミュージックビデオを公開して、猛批判をくらって削除&謝罪に追い込まれる騒ぎあったばかりだ。

【ステレオタイプ】無知な日本人がインド人を激怒させた件

 

ベトナム人犯罪の間接的な被害者はまっとうな在日ベトナム人。
いま就職活動をしている知人のベトナム人留学生が、その「風評被害」を不安に思っていた。
身内の恥は身内が消す。
母国の名誉を汚す行為をなくすために、SNSで銀行口座を売っているようなベトナム人を見つけたら警察に連絡するベトナム人もいる。
でも、そんな攻撃力ボランティア活動を知ってる日本人はほとんどいない。

客が減って時間ができたから、余った食材でカレーを作って病院に届けるカレー屋もあるけど、インド株に比べればそういうポジティブなニュースは本当に知られていない。

日本では痴漢が多いといっても日本人男性が「痴漢民族」ではないように、ニュースと自分の近くにいる外国人は関係ない。
もちろん日本人の痴漢がいれば、外国人の犯罪者もいるから可能性がゼロということではない。

「コックはインド人か?」にはまだ悪意はないと思うけど、「ベトナム人は喧嘩と万引きどちらが上手ですか?」はひどすぎ。
こういう偏見はどこの国にもあるし、日本では幸い、街で見かけたアジア人にいきなり襲いかかるような、人種差別による凶悪事件は起きていない。
でもいまの日本社会では、外国や外国人についてのポジティブな情報がネガティブな情報にのみ込まれていて、差別的な書き込みを気軽にする人が増えているようで不安。

 

 

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1 個のコメント

  • > でもいまの日本社会では、外国や外国人についてのポジティブな情報がネガティブな情報にのみ込まれていて、差別的な書き込みを気軽にする人が増えているようで不安。

    おそらく、その不安は当たっているでしょう。でも今のところ、日本はまだまだ「差別的な書き込み(公開掲示板での発言など)」は、少ない方だと思いますよ。
    日本でも今後はより国際化が進んで外国人居住者も増えてくるだろうと推定しますが、その過程では、「外国人差別」が今よりもずっと大きな社会問題となってしまう段階を経ることが、避けられないでしょうね。
    そこまでの事態を経験して初めて、他の国々と同様に、「人権を損なう差別行為を効果的に防止するにはどうすればよいか」ということを、日本人も真剣に考えるようになるのだと私は思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。