日本人なら無理 2000年も“自分”を忘れなかったユダヤ人

 

いまから2000年ほどまえ、日本人が森に入ってドングリを拾ったり、田んぼでお米を育てていたころ中東では歴史的な出来事があった。
迫害を受けていたユダヤ人が西暦66年に、ローマ帝国に反乱を起こして戦争が始まる。(ユダヤ戦争
そしてローマ帝国軍が70年のいまごろ(9月7日ごろ)、大勢のユダヤ人が立てこもるエルサレムを制圧し第一次ユダヤ戦争を終わらせた。
この エルサレム攻囲戦で100万人以上が死に、約10万人が奴隷にされたという。
国を失ったユダヤ人はヨーロッパやアジア、アフリカなど各地へ逃げて、そこで新しい生活を始めることとなる。
でも、彼らにとってその地はまさしくアウェー。
異民族である彼らはさまざまは迫害を受け、究極的には第二次世界大戦の時、ナチス=ドイツによって600万人のユダヤ人が殺されるホロコーストもあった。
1948年にユダヤ人の国イスラエルが独立すると、彼らはやっとエルサレムのある故郷の地へ戻ってくることができて現在にいたる。

*日本も2世紀に「倭国大乱」という内戦が起きたという記録があり、これを日本の歴史上初の大規模戦争とみる人もいる。だから争いがなかったわけではない。

 

『エルサレム神殿の破壊』

 

 

アラビア半島にある国・イエメンを旅行していて、ドアにユダヤ教のシンボルである六芒星(ダビデの星)のある家を見つけた。
イエメン人の英語ガイドが現地の人から話を聞くと、ユダヤ戦争の後、ユダヤ人のグループがやって来て住み始めたという。
そしてここで働き、結婚して子どもを産んで、イエメン人と共存しながら時間は流れていく。
20世紀になってユダヤ人の国家が誕生したと聞くと、彼らはイエメンを離れてまたイスラエルの地へ帰っていった。
上の家も以前はユダヤ人の家族が住んでいたという。
もちろんイエメンにとどまったユダヤ人も多い。

ナルホド。
…ってその話、壮大すぎないか?
火事で家が消失して、再建されたから戻ってきたということとはワケやスケールが違う。
ドングリを拾っていたころに国を滅ぼされた日本人が、中国や東南アジアなどへ逃げて定住したとしたら、そこで2000年もの間、自分は日本人であるというアイデンティティーを失わずにいられたか?
まあ無理ですよ。
現地に溶け込んで、きっと数百年もしたらその国の人間になってしまう。
自分たちは日本人だったという言い伝えが残るかどうか。
古代の朝鮮半島にあった百済が滅ぼされたとき、たくさんの難民が日本へやってきて住み始めた。
その後の歴史で日本人化していって、いまでは彼らの子孫なんてまったく分からない。
それが普通でしょ。

ユダヤ人の間には「自分たちは神に選ばれた民」という思想があって、それがアイデンティティーを保ち続けることのできた大きな理由になっている。(選民としてのユダヤ人

2000年前に海外へ出ていった人たちが、「日本国が誕生したゾ!」と聞いてまた戻ってくるか?
そんなことがあるとしたら、アニメやマンガの世界だけだ。
70年ごろ日本列島にいた人たちはまだ文字を使っていなかったし、自分たちの“民族”を特徴づける思想も生まれていなかった。

こうなると「日本人」とは一体どんな人間を指すのか、よく分からなくなる。
「事実は小説より奇なり」をリアル世界で実現したユダヤの人たちは驚異的だ。

 

*以前、弥生時代の遺跡からすずりとみられる石に、日本最古の文字が記されていると話題になった。
でもつい最近、分析の結果それはただの油性ペンのインクだったことがわかって、関係者一同ガッカリしたという残念なニュースがあった。
この時代の文明レベルでみると、日本がローマやエルサレムに勝てるはずもない。

 

 

仏教 目次

キリスト教 「目次」

イスラーム教 「目次」

ヒンドゥー教・カースト制度 「目次」

日本人の宗教観(神道・仏教)

ユダヤ教徒が「チーズバーガーと親子丼」を食べられない理由

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。