15年前にタイを旅行して、首都バンコクをぶらぶら歩いていると、突然なじみのあるアニソンが聞こえてきた。
その音源を見てみると、ステージの上でタイの若者がノリノリで日本の歌を歌って、観客も同じように歌ったり踊ったりして、超盛り上がっている。
海外でこういう風景を見ることは、日本人としてはそう悪くない(=かなり嬉しい)。
そんなバンコクでは買いたいモノがあると、よく「ターミナル21」を利用していた。
ここは空港のターミナルをテーマにしたショッピングセンターで、タイ人に人気のある都市を世界中から選んで、各フロアごとにそれをイメージした造りになっている。
中に入ると、ローマ、パリ、ロンドン、イスタンブール、サンフランシスコと並んで、東京フロアが3階にある。
タイ人の頭の中にある「日本っぽいもの」を凝縮させた異空間がこちら。
それからトキは過ぎて、2022年の年末、日本にいるタイ人女性と話をする機会があったから、いまでもタイで日本文化は人気があるのか聞いてみた。
すると、
「あるよー。アニメのコスプレをする若者はよくいるし、寿司やラーメンの店もドンドン増えてる。最近では、寿司店のシェフに作ってもらう『OMAKASE(おまかせ)』が人気で、店の予約が取れないんだって」
といったことを言う。
なんだ。相変わらず圧倒的じゃないか、我が軍は。
で、今年になってから、バンコクにいるタイ人がメールで新年のあいさつをくれたから、「ありがとー」という返事と一緒に日本文化の様子を聞いてみた。
タイでの日本人気は相変わらずで、最近、日本をイメージした「もみじカフェ」ができたから、彼も早速行ってきたと言う。
その写真を見せてもらったら、そこは想像以上のガチでビックリした。
そこに明治牛乳をチョイスした理由は?
なんてリアルな昭和感!
名前は「カフェ」だけど、中はちょっとしたテーマパークのようになって、まるで日本を歩いているような気分を味わうことができる。
知人の話によると、タイではコロナ禍の前まで日本旅行が大人気で、日本を恋しく思う人や、SNSで日本旅行の様子を見て興味を持った人がたくさんいるから、プチ日本観光をする感じでみんなここへ来るらしい。
もちろん、「映える」という要素もタイでは致命的に重要だ。
個人的には「たこわなか」という謎の日本語や、「もみじ」と「シーフード」の組み合わせのデタラメさがタイっぽくて好印象。
テキトーなのは日本も同じ。
あるタイ人は日本のレストランで「ガパオライス」を頼んだら、ガパオ(ホーリーバジルの葉)が入っていなかったと笑っていた。
ガパオの無いガパオライスは日本じゃそうめずらしくない。
そもそもタイの食堂で「ガパオライス」と言っても通じないし、きっとおばちゃんに「はっ?」という顔をされる。
日本人に慣れた店なら、「あいよ」となるかもしれない。
ここで、日本人には残念なお知らせがある。
どのタイ人に聞いても、いまタイで人気を集めているのは韓流だ。
韓国のドラマにハマるタイの若者は続出中で、「K-POP」に合わせて踊る様子をSNSにあげる人はキリがない。街中でも、よく韓流スターのどデカい写真を見るらしい。
日本を好きな知人もネットフリックスでは、よく韓流ドラマを見て泣いたり笑ったりしている。
タイではやっぱり「BLACKPINK」のタイ人メンバー、LISAさんの影響が大きいようだ。
2022年に発表したソロデビュー曲は5億5000万回以上も再生されているし、LISAさんはもはや国民的アイドルと言ってよし。
もともと韓国では市場が小さくて、エンタメでは海外に目を向けるしかなかったという事情があるにしても、韓流文化は世界に広がって確実に成功している。
知人のタイ人からすると、最近のタイにおける韓国ブームはひと昔前の日本ブームを見ているみたいで、アニメ以外なら、日本のエンタメはタイ社会から姿を消しつつある。
存在感なら、いまでも全体的には日本文化のほうが上だけど、勢いでいえば圧倒的に韓国らしい。
バンコクを歩ていると、若者が歌う「K-POP」が聞こえてくるという状況はすでにある。
そのうち新しいショッピングセンターに「ソウルフロア」が登場したり、タイにいながら韓国を体験できる「ムグンファ(むくげ)カフェ」ができるかも。
日本のポップカルチャーにもガンバッテほしいところなんだが、日本の業界にはタイで売り込む雰囲気は無さそうだし、この分野は韓国の独壇場になる予感しかない。
でも、旅行の魅力としては日本のほうが上(と思う)から、全身全霊でタイ人観光客を誘致して、日本の自然やテーマパーク、伝統文化やおもてなしの精神で、タイ人のハートをぶち抜いて、リピート率を上げていくのがいいのではないかと愚考します。
仏教の教え(輪廻)とタイ人の生活「タンブン(善い行いをする)」
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