タイ語のサワディーの意味と由来とは? ヒンドゥー教の卍から

前回、「卍」についての記事を書いた。
大辞泉を見てみると、卍とは「仏の胸など体に現れた吉祥の印」とある。現代の日本人にとっては、吉祥(きちじょう)の意味はたぶん英語のほうが分かりやすい。辞書を引くと、「good」「happy」「lucky」といった言葉が出てくる。
つまり、日本や中国、韓国で仏教のシンボルになっている 卍には、「ラッキー&ハッピー」というとても良い意味があるのだ。

卍の起源をたどると、もともとはヒンドゥー教の最高神「ヴィシュヌ神」の胸毛を表すものだったとされる。
ヒンドゥー教でシャカはヴィシュヌ神の生まれ変わりとされている。仏教の 卍の始まりは、「ヴィシュヌ神の胸毛」と考えてよさそうだ。

 

 

タイを旅行中、宿のタイ人と話をしていて、街なかで「卍」を見たという話をしたら、「何それ? 知らない」と言われた。
タイ人の日本語ガイドは知っていて、

「ふつうのタイ人なら、知らない人がいるかも知れません。私も日本の仏教について勉強していて知りましたから」

と話した。
ちなみに、タイの地図では、仏教のお寺は 卍ではなくて仏塔の形で表されているという。

バンコクにあるヒンドゥー寺院に行ったとき、お坊さんに聞いたら彼はもちろん 卍を知っていて、「それはソワスティカーでグッドラックの意味だ」と当然のように言う。

 

インドで「卍」は交通安全のお守りとして使われることがある。

 

タイ人の日本語ガイドと話をしていたら、意外なことを知った。「こんにちは」を意味するタイ語が「サワディー」であることは知っていたが、言葉はこの 卍に由来するという。
タイの情報サイト『おしえてタイランド』によると、1930年代にある人物がサンスクリット語の「ソワスティカー(Svastikaa)」を参考にして、「サワディー」という言葉をつくったという。

ソース:今週のギモン「タイ語の挨拶“サワディー”の意味や語源ってなに?」

すると、チュラロンコーン大学(タイの東大と言われる名門大学)の学生の間でこの言葉が流行し、徐々に多くの人が使うようになる。そして、1943年に当時の首相が「サワディーを使うようにしましょう」と国民に呼びかけたことで、あいさつの言葉として浸透していった。
昔、タイ社会ではあいさつの言葉がなかった。戦後になってから、タイ学士院の中で「もし適切な語があるとすれば『サワッディー』以外考えられない」といった意見が出てきて、今ではあいさつ語として定着したという。(サワッディー

ちなみに日本語の「こんにちは」は、「今日は暑いですね」「今日は良いお天気ですね」といった言葉が省略されてできたと考えられている。江戸時代には、「こんにちは」があいさつ語として使われていた。

 

サワディー(こんにちは)

 

ナチスのかぎ十字

 

前回、欧米人にはお寺の『卍』がナチスの『かぎ十字』に見えてしまう、といった話を書いた。そんな外国人に配慮して、2020年の東京オリンピックでは、外国人向けの地図に 卍を使わないことが決められた。
読売新聞の記事(2016年01月13日)にそんなことが書いてある。

「卍」ナチス連想で三重の塔に…外国人向け記号

卍は「ラッキー&ハッピー」というとても良い意味なのだけど、違う文化圏の人には「悪魔の印」に見えることもある。

 

おまけ

ひょっとしたら、小林製薬の「サワデー」の由来はタイ語のサワディーでは?
そう思って調べてみたら、まったく違った。「サワやかな」日(デー)という意味で「サワデー」と名付けられただけだった。(サワデーの名前の由来について

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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