【遠い日韓】ソウルで“君が代解禁”を、あまり喜べないワケ

 

来週の2月23日よりも一足先に、日本大使館が主催する天皇誕生日を祝うイベントがソウルで開かれた。
それを伝える中央日報の記事を読んでビックリ。(2023.02.17)

「ソウルの天皇誕生日の祝賀レセプションで日本の国歌『君が代』初演奏…尹政府の判断」

この日韓友好の行事が戦後のいつから始まったのかは知らないけれど、長い歴史があることは想像できる。
でも、「君が代」が流されたのは今回が初めてだ。
これも、日本との関係を重視する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の判断が反映されたというから、ユン大統領でなかったらきっと今年も不可能だった。

日本大使館がこれまで国歌の演奏を「自粛」してきた理由は、韓国社会における反日感情の高さであることは言うまでもない。
でもこれは、大使館がターゲットになるからではなく、「出席者に負担をかけないよう配慮してきた」からとだいう。
実際、この日もホテルの前では反日デモが行われていた。
式典には韓国外交部(外務省)の次官が出席して祝辞を述べたから、こうした参加者が攻撃のターゲットにならないように、日本大使館が配慮した結果なんだろうが、大使館主催の行事で「国歌がNG」という空気はやっぱり異常だ。

東京で先週、こんな行事が行われたことを考えると違和感はマシマシになる。

ハンギョレ新聞の記事(2/8)

抗日運動の導火線となった「2・8独立宣言」記念式典、東京で開かれる

1919年2月8日に、韓国からの留学生らが東京で祖国独立を宣言したらしい。
政府代表が出席するその記念式典では「2・8独立宣言の歌」が歌われ、「2・8独立宣言書」が朗読されて万歳三唱が行われる。
ソウルの祝賀レセプションと同じく、これも公的なイベントだ。
「青年留学生たちが日本の首都の真ん中で堂々と大韓独立を宣言した誇らしい歴史」を改めて確認するというのは、日本では、その自由や権利を認められているからまったく問題ない。
日本に嫌韓の空気があるとしても、東京で独立宣言の歌や国歌を歌うことを自粛に追い込むほどじゃない。

 

政治的にはこんな状況でも、民間を見るとそこには別世界が広がっている。
いま韓国では日本旅行が大ブームで、1月に日本を訪れた外国人の4割近くが韓国人だ。
映画『ザ・ファースト・スラムダンク』は韓国でも大人気で、桜木花道などのキャラが出てきた鎌倉の場所を訪れる「スラムダンク聖地巡礼」をする人も多い。
背番号に合わせて、アルコール度数を「14」にした三井寿をテーマとするお酒を販売すると、たちまち品切れになった。

知り合いの韓国人に話を聞いても、ここ5年ぐらいで日本料理店がたくさんできた。
むかしは日本料理を食べに行こうと思ったら、“遠征”しないといけなかったけど、いまでは近くにいくつも日本料理店があるから、何を食べるかで悩むという。

この状況は日本も似ている。
韓国旅行をする人は多いし、紅白歌合戦では何人ものKーPOPアーティストが歌を披露したし、スーパーやドラッグストアに行けば、韓国の食品がズラリと並んでいて何を買うか迷う。
(もちろん最初から選択肢にないという人は日韓のどっちにもいる。)

 

話を日本大使館に戻そう。
天皇誕生日の祝賀レセプションで、ことし初めて「君が代」を流すことになったのは、最近の関係改善の流れが反映されたものだから、日韓関係は全体的には良い方向へ進んでいる。
でも、民間の盛り上がりに比べるとまだまだだ。
政治的にはやっと氷が解け始めたぐらい。
それもこれから一直線に進むとは思えないし、韓国社会の空気はまた「君が代自粛」へ変わるかもしれない。
今回の件も「尹政府の判断」で実現したのだから、政権が変わったりすると、その後どうなるかまったくわからない。

ということで、ソウルで日本の国歌がやっと解禁されたというニュースには、むしろ日韓関係の厳しさを感じてしまうのです。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。