【日本料理】お茶漬けの歴史・魯山人の語る“おいしい茶漬け”

 

きのう5月17日は「お茶漬けの日」。
となるとこの企業が動き出すのはもはや必然。

 

 

永谷園のルーツは江戸時代に煎(せん)茶の製法(青製煎茶製法)を考案した永谷宗七郎(宗円)にある。
この煎茶ビジネスを江戸で成功させたのが山本山の創業者・山本嘉兵衛だ。
煎茶の製法は世界的にとても珍しく、生産・消費はほぼ日本だけらしい。

この功績をたたえられ、永谷宗七郎は京都で“茶宗明神”という神として祀られている。
煎茶の創始者で“茶神”でもある永谷宗七郎の命日が5月17日だから、それにちなんでお茶漬けの日がつくられた。

 

永谷園のルーツが永谷宗七郎なら、お茶漬けのルーツは何なのか?
その答えを超簡潔に言うと、「わかりません」。
ご飯に水や汁などをかけて食べることは、日本に稲作が伝わったころにはあったと考えられるが、その記録は残っていない。
文献でいうなら、『日本書紀』に湯漬け(ゆづけ)が登場している。
*熱々のご飯にお湯をかけて食べるのが湯漬けで、冷水をかけて食べるのは水飯(すいはん)と呼ばれる。

7世紀、やりたい放題の蘇我入鹿を殺害した乙巳の変(いっしのへん)の際、蘇我の暗殺を命じられた人物が、その直前に水をかけた飯を食べたという話が日本書紀にある。
だから飛鳥時代のころには、現代のお茶漬けに通じる食べ方があったわけだ。
中大兄皇子・中臣鎌足らによる大化の改新は645年の乙巳の変の“成功”からスタートしたのだから、「暗殺者が食べた一杯のお茶漬けが本当の始まりだった」と言うことができる。かも。

平安時代になると『枕草子』や『源氏物語』などで湯漬けを食べるシーンが出てくる。
たぶん日本で最も有名なプレイボーイ・光源氏も湯漬けを食べたという。
大食いで肥満体だった貴族の藤原 朝成(ふじわら の あさひら:917年ー974年)が医者から、もっとやせろと言われ、冬は湯漬け飯、夏は水漬け飯を食べるようアドバイスを受けた。
でも、鮎の熟れ鮨(なれずし)やウリの干物で水飯を食べたところ、これが激ウマ。結果、ダイエットを始めた藤原朝成はよけい太ってしまった、というマンガみたいな話が今昔物語集にある。

藤原朝成なら、永谷園の「お茶漬けの日大賞」にはきっとこれで応募してた。

 

具のない超シンプル茶漬け

 

湯漬けや水飯はその後も日本人に愛されつづけた。
銀閣寺で有名な将軍・足利義政は昆布やシイタケで出汁(だし)を取ったお湯をご飯にかける湯漬けが好きだったというし、織田信長は戦いの前に湯漬けを食べたという話がある。

これと違って、現代のお茶漬けに直接つながる食べ物が登場したのは、お茶が国民的飲料となった江戸時代だ。

今日の茶漬けの直接の始祖は、当時商家に奉公していた使用人(奉公人)らが、その仕事の合間に食事を極めて迅速に済ませる為にとった食事法であると言われている。

茶漬け

 

「すぐおいしい、すごくおいしい」のお茶漬けは江戸時代のファストフードだったから、時間のない人たちがこれを腹にかきこんですぐ仕事に戻ったのだろう。

そこから一気に時代が飛んで、1952(昭和27)年にいまの永谷園がインスタントの「お茶づけ海苔」を発売して国民食の地位を不動のものにした。

 

さて、この人物がだれかおわかりだろうか。

 

 

この人は日本を代表する料理研究家で美食家の北大路 魯山人(きたおおじ ろさんじん:1883年 – 1959年)。
「美味しんぼ」に出てくる海原雄山のモデルになった人だ。

日本食を極めた魯山人はおいしいお茶漬けについてこう語る。

ただ飯の上に塩と茶をかけて美味い場合もあるし、たい茶漬けが美味い場合もある。体の状態によって、時々の好みが変ってくる。(中略)要は、正直に自分の体と相談して、なにを要求しているかを知るべきである。

「お茶漬けの味 (北大路魯山人)」

 

「高いのがウマイ、安いのはマズい」という単純なものではなく、その時々のコンデションで味が変わるのがお茶漬けという食べ物。
だからおいしいお茶漬けを食べたかったら、そのときの自分の体の状態をしっかり把握し、それに合ったチョイスをしないといけないという。
作り方はシンプルでも、具のバリエーションは無限といっていいほど多才だから奥が深い。

でもこれだとあいまい過ぎて、「お茶漬けの日大賞」のブロンズ賞もきっと無理。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。