カンボジアを旅行中、長距離タクシーに乗っていた時のこと。
乗客のボクが日本人と分かると、「ならあれを見ろ!」とドライバーが指さす先にコレがあった。
日本の支援で2001年に開通した「キズナ橋」は、カンボジア経済を支える大動脈になっていて、そこには日本とカンボジアの友好を記念する碑が建てられている。
そんな絆をさらに深めるため、外務省がカンボジアの若い政治家を招いて日本の民主主義の現場を見てもらった。
MHKの特集記事(2023年4月27日)
日本の選挙は「ごまかさない」カンボジア政治家が驚いた!
これはカンボジアの人たちに日本を知ってもらうための交流プログラムのひとつで、中国の影響が増大するカンボジアに、日本の存在感を示そうとする意図もあるらしい。
で、カンボジアの未来をつくる政治家はこんなことに母国との違いを感じた。
・日本の選挙運動の費用には上限規制がある。
・日本には選挙公報がある。
ということは、カンボジアの選挙費用はアンリミテッドで、金のある候補者ほど有利になると。
選挙公報が配られないというのは、国民はそれだけ候補者の経歴や政策を知る機会が無くなることになる。
日本ではショッピングモールなどで人々が買い物ついでに、期日前投票所をすることができる。
投票する際には、パソコンにある情報でしっかり本人確認をして投票用紙を渡すし、投票箱はカギのかかった場所で厳重に保管される。
そんな日本の選挙を知って、カンボジアの政治家はこんな感想をもつ。
・期日前投票の場所がとても便利な場所で行われていることに驚いた。
・日本は信頼があるから、ごまかしは基本的にやらない。
日本人については、「比較的静かな国民性だと思っていたが、選挙戦は、非常にエネルギッシュ」になることが印象的だったらしい。
そして日本の政治と比べて、母国にはこんな課題があると感じる。
「政党どうしが共存できないという考えが、カンボジアの民主主義の前進を遅くしているのではないか」
価値観・考え方が違っていても、他党と手を結ぶ「野党共闘」が日本ではよくある。
まあこれはコレで、野合になってしまうと民主主義の前進を遅くするのだけど。
このニュースへのネット民の反応を見ると、カンボジアの政治家が驚いた「日本の選挙はごまかさない」に食いつく人が多い。
・いや、やってると思うよ。
・怪しい話いっぱい聞くよな
・公約は全部嘘だけどな
・結構昔だけど敗色濃厚だった某知事の地元区で謎の機械のトラブルが起きてたぞ
・とりあえず鉛筆で書かせるのからやめようか
日本人からすると、全国の選挙区で1票の価値が違う「一票の格差」が大きな問題としてあるし、日本の選挙の公平性にはツッコミどころはある。
でもカンボジア人にとっては、自国の選挙制度・民主主義と比べると、日本はビックリするほど透明性が高くて平等だ。
きょねん日本にいるカンボジア人と話をしていて、「そういや、いまの首相ってダレだっけ?」と聞くと、「フン・センですけどなにか?」と言われて驚いた。
20年ぐらい前、初めてカンボジアへ行った時と変わってないじゃん。
もちろんカンボジアは民主主義の国で、選挙で選ばれた国民の代表者が政治を行っている。
でも話を聞くと、フン・セン氏はもう30年以上も首相として君臨していて、カンボジア政界の”絶対王者”になっているらしい。
1985年に32歳で世界最年少の首相になってから、共同首相や第二首相を含めて、フン・セン氏は常に首相の座をキープし続けている。
*それでネットには、いまのカンボジアの政治状況を”一党独裁”と表現する人もいた。
選挙をするたびに勝つフン・セン氏はまさに百戦百勝。
首相の座は、もう彼のリザーブシート(予約席)のようなもの。
ただ、中国の兵法書「孫子」にはこう書いてある。
「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」
(百戦百勝は最善ではない。戦わないで相手に勝つことこそ最善)
フン・セン氏も奮戦しているというよりは、 戦う前に相手を屈服させているようだ。
5年前に選挙が行われた時、ライバルだった最大野党がフン・セン政権によって解散に追い込まれ、選挙に参加することができなかった。
約120人の党員も政治活動を禁止され、政府に批判的なメディアも廃刊に追い込まれる。
「ジャマもの」が一掃された状況で選挙をした結果、フン・セン氏の率いる与党・人民党がすべての議席を独占し、”完全勝利”を収めた。
普通の民主主義国家では考えられないようなこの事態に、欧米諸国が非難の声を上げたが、フン・セン氏にそれを気にする様子はない。
そしてことし、7月の総選挙を控えたタイミングで、3月に旧野党の指導者が国家反逆の罪で禁錮27年の有罪判決が言い渡された。
ライバルといえる存在がないから、「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」で、選挙をする前に”与党の大勝利!”という結果は見えている。
でも知人からすると、警官にワイロを渡せば、交通違反を見逃されることがよくあるカンボジアでは、不正の感覚がマヒしてしまって、選挙前に「ナゾの力」が働くことにも驚かなくなった。
選挙とは、「カンボジアは民主主義の国です」と言えるためにセレモニーでしかない。
だから彼は、生まれた時から首相がずっと同じでも何も感じなかった。
フン・セン氏が2021年に長男を後継首相に指名すると発表しても、「でしょうね」という感じ。
70年代に共産主義のクメール・ルージュが政権を奪ったころ、大量の知識人が殺害されて(カンボジア大虐殺)、近代国家としてのカンボジアはその時に一度”死んだ”。
その悪夢の時代が終わるとカンボジアは、1からではなく、ゼロから再生しないといけなかったから、いまでもワイロが横行していて裁判や政治での不正はよくあるらしい。
それを「フツウ」と思っていたから、知人のカンボジア人は日本にきてから、(基本的に)不正やごまかしのない社会に驚いたし感動もした。
カンボジアにいた時は、政治や民主主義なんてほとんど考えていなかったけど、日本に何年か住んでいるうちに母国の未来に危機感を感じて、そうしたことに敏感になってきたという。
カンボジアの政治家や一般人が日本でいろいろなことを感じて、日本とカンボジアのキズナがさらに深まればいい。
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