【香港人の話】日本のサービスや変な料理、香港の民主化とか

 

日本が好きになって日本語を学ぶために来日し、3年間ほど日本に住んだ後、香港に戻った知人がいる。
香港は16年前の7月1日にイギリスから中国に返還され、いま40代の彼女はその前後の香港の雰囲気をよく知っている。
そんな知人がきょねん旅行で日本へやって来たことを、「私はいま日本にいます。明日か明後日に会えませんか?」というメールをもらって初めて知った。
来日する前には何の連絡もしないで、「あした空いてる?」と突然聞いてくる急な展開は香港人らしい。
そんなマイペースな知人と会っていろいろ話をしたから、これからその内容を紹介しよう。

 

ーー久しぶりの日本で印象的なことってありますか?

サービスの良さは相変わらず素晴らしいです。日本語でいう”神”ですよ。
コンビニやレストランで、笑顔の店員から「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言われると、気持ちが良いです。
香港人のサービスですか?
ありませんよ、そんなものwww
食堂に入って店員と目が合っても、「いらっしゃいませ」なんて言ってくれません。
忙しそうに「何人?」と聞いて「あそこに座って」と指示して、その後に「注文は?」と聞かれます。
そして、食べ物を「ドンッ」とテーブルに置くと、黙って去っていきます。
日本の普通のサービスを受けられるのは、香港では高級店ぐらいですよ。

 

ーー最近、ドイツ人が日本人の信仰について「仏教と神道はまったく違う宗教なのに、両方を同時に信じる日本人の考え方はオカシイ気がする」と言ってました。
香港人の信仰はどんな感じです?

香港はイギリスの植民地でしたから、主に仏教、道教、キリスト教の3つの宗教が信仰されています。
イスラム教徒もいるからモスクもありますよ。
香港人の信仰も日本人と似ています。
日本人がお寺や神社へ行ってお参りをするように、香港人もよく仏や道教の神に頭を下げて手を合わせます。

 

ーーこのまえ会った台湾人が、台湾にはない「台湾ラーメン」を名古屋で見て驚いたと話していました。
自由で勝手な日本人は天津にはない「天津飯」や、中国にはない「冷やし中華」を作ります。
ナポリにはないナポリタン、トルコにはないトルコライスもあります。
知り合いの台湾人は気にしないと言いましたが、このことについてあなたはどう思いますか?

そんな小さなことはどうでもいいでしょう。
香港にも「厦門炒米」って食べ物があるんです。
厦門(アモイ)は中国にある都市ですが、厦門に「厦門炒米」なんて食べ物はありません。
これは、香港人が勝手に作り始めた料理です。
台湾ラーメンでも天津飯でも、冷やし中華でもナポリタンでもおいしければそれでいいんですよ。
外国人は日本人みたいに、細かいことにこだわらないと思います。

*この場合の「米」は米粉(ビーフン)のことで、「炒米」でもチャーハンではない。

 

ーー人類がまだウイルスの存在を知らなかった時代、日本人は病気になる原因を”怪異”に求めました。
悪鬼や疫病神が人間に病気をもたらすと信じていたのです。

昔の香港人は病気の原因を何だと考えていましたか?

病気の原因は邪気という考え方がありました。
邪気は風にのってやってくるから、昔の中国語で「風邪」と言ったのです。
いまの香港では「感冒」と言います。
病気をもたらす邪気が家に入ってこないように、門に武神(門神)の絵を貼る風習があります。

 

門神

 

ーー数年前、香港で民主化を求める大規模な運動がありました。(2019年-2020年香港民主化デモ
その当時、日本のメディアは周 庭(しゅう てい、アグネス・チョウ)さんを「民主の女神」と呼んで、民主化デモを支持していました。
そんな動きは今はもうほとんどありませんが、いまの香港はどんな状況ですか?

あのデモのころ、若い世代の間では「民主化」に賛成する人が多くて、40代以上の世代では反対する人が多く、香港社会は大きく2つに分かれました。
「民主派」の人たちは最初、香港政府に逃亡犯条例改正案の撤回を求め、政府はそれに応じました。
彼らはそれに満足すべきだったのに、次々と要求を増やしてデモ活動を行いました。
でも、彼らの「五大要求」なんて実現不可能なんですよ。
それに反対する私たちは「中国の狗(いぬ)」「親中派」と非難されましたけど、実際には現実派なんです。
香港はもう永遠に中国の一部なんですから、共産党政府とうまく付き合っていく方法を考えるべきです。
イギリス時代を知っている私からすると、「民主派」の言う自由や権利はただのワガママです。
香港社会はまだ、この分断を乗り越えることができていません。
日本では、周庭が「民主の女神」と呼ばれていると知ってビックリしました。
今になってみれば、彼女の存在は「メイク・ノイズ」だったじゃないですか。

*これは知人の意見で、日本のメディアの見方とは違う。

 

周 庭

 

ーーところで、「ステレス値上げ」というわりと新しい日本語を知っていますか?

知りません。
何ですかそれは?

ーー商品の価格を変えずに、その大きさや内容量を小さくすることで、実質的な値上げをすることです。
消費者にバレないようにするから、「ステルス(隠密)」と言われます。
買った後でそれに気づいて怒る人が多いから、日本ではよくSNSで炎上しますが、香港でもそんな値上げはあります?

「ステレス値上げ」という言葉は、日本人らしい発想で面白いです。
香港でそんな値上げは聞いたことがないですね。
中身はそのままで、価格を上げるやり方が普通です。
消費者が分からないようにコッソリと減らして、見た目でだますようなやり方は香港人の価値観には合いません。みんな怒ります。
「ステレス値上げ」には、日本の”本音と建前”という文化を感じますね。

 

 

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多文化共生社会 目次

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【中国と違う日本の漢字】香港人が「風邪」で驚いたワケ

【生まれか育ちか?】香港人から見た中国人と日本人の“民度”

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。