最近、知人のインド人が「あの電車に乗った!」とうれしそうにSNSに投稿したのがこの写真。
この電車は、インド鉄道が最新のテクノロジーを駆使して製作した「ヴァンデ・バーラト・エクスプレス」という。
車体に「インド製」を誇示するこの電車は、以前からインド人の間で大きな話題となっていて、ついに彼も乗車し、レビューを書くことができた。
さて、ほのぼのとした話題はここまでだ。
ロイター通信の記事(2023年9月6日)
インド、国名を「バーラト」と表記 G20晩餐会招待状が物議
今週末、インドで20カ国・地域(G20)首脳会議が開催される。
その晩餐会の招待状で、インドのムルム大統領が自分を「インド大統領」ではなく、「バーラト大統領」と呼んび、その真意をめぐって世界の注目を集めている。
実はインドの正式な国名は「インド」ではない。
公式には、古代インドにいたバラタ族に由来するという「バーラト」だから、憲法にもバーラトと書かれている。
もっと細かく言うと、バラタ王という伝説的な王がいて、その子孫をバラタ族というらしい。
一方、「インド」は外国人の呼び方だ。
インドは、インダス川のサンスクリット語名sindhu「水、大河」に由来する。ペルシア語のHinduを経て、アレクサンドロス大王の遠征でギリシア語Indosとなった。
「地名の世界地図 文藝春秋」
ギリシャから遠征し、インドにたどり着いたアレクサンドロス大王はこう言ったとか。
私としては以下、インドス川から東の地域をインドと呼び、そこに住む人びとをインド人と呼ぶことにしよう。
「アレクサンドロス大王東征記 下 (岩波文庫)」
インド人の爆誕、である。
ただ、東京都立図書館のHPには、「16世紀初頭にペルシャに来航したポルトガル人が、ヒンズーをポルトガル語化して「インド」とした」という説明がある。(インド)
でも、「インド」はギリシャ語由来とみていいだろう。
ちなみに、インドを意味する現地の言葉には、ほかにも「ヒンドゥスタン」がある。
知人のインド人の話では、ふだんの会話では、インド人同士も英語の「INDIA(インディア)」を使っていて、バーラトを使うのは公式行事など限られた機会だけ。
特に国を強調したい時に、バーラトを使うことがあるらしい。
ってことは、「ヴァンデ・バーラト・エクスプレス」の命名は、日本でいうなら、最新の新幹線に「やまと」と名づけるようなものか。
現在のインド人民党(BJP)政権はこの状況を嫌って、「奴隷制の精神から脱却するとして植民地時代のインドという呼称を変更しようとしている」という。
イギリス植民地時代に、イギリスが「インド」と呼び始めて、現在のように定着したらしい。
与党に近いヒンドゥー教の団体も、「G20首脳会議が植民地時代の荷物を捨てる絶好の機会」とこの動きを支持する。
政権側は国名をインドから、バーラトに変更する計画を立てている、という噂も流れている。
一方、野党の議員は、「インド」という国名が持つブランド価値を捨ててしまうような愚行だと批判的だ。
このニュースに日本のネット民の感想は?
・カッコいいじゃん、ファンタジー小説にありそうな国名w
・バーラトカレーの商標取っとこうかな
・バーラトカレーを作るのがパキスタン人なのは変わらない
・インドア派がバーラトア派になるのか
・奴隷制の精神から脱却する前にカースト制度の身分制から脱却すべきだろ
実際のところ、日本人はインドになじみ過ぎている。
だから今さら、「バーラトカレー」、「バーラト象」、「バーラト人もびっくり」、「バーラト人ウソつかない」、「バーラト人を右に」に変更することは不可能だ。
植民地時代に由来する地名を使うことは、「奴隷精神の表れ」とまではいかなくても、屈辱的で適切ではないとして、現地の言葉に変更されたインドの都市はよくある。
たとえば、マドラスはチェンナイに、カルカッタはコルカタに、ボンベイはムンバイに、バンガロールはベンガルールに改名された。
今回の出来事も背景は同じだ。
まぁ、ツイッターも「X」に変わったし、いまは世界的に改名ブームかも。
ただ、モディ政権が正式に国名をバーラトに変更した場合、それはそれで、トンデモない事態を招く恐れがある。
『THE WEEK』の記事(September 05, 2023)
‘Pakistan may lay claim on name ‘India’ if Modi govt derecognises it officially at UN’
もし、国連レベルで国名の変更が認められた場合、今度はパキスタンが「インド」を名乗る可能性があるという。
もう、ツイッターのアカウント乗っ取りみたい。
日本の夏の”異常な”暑さに、外国人観光客の反応は?アジア人編
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