神道の儀式「大祓」を知って、アメリカ人が連想したことは?

 

友人の山下は、「おまえの前世は交通安全のお守りか!」とツッコみたくなるほど、慎重な運転を心がけている。
でも以前、1ヶ月に2回も車をぶつけられ、「これは何かおかしい」と彼は不安を感じて、神社に車を持っていってお祓いをしてもらったことがある。それから、交通トラブルは無くなったとのこと。
日本人の伝統的な考え方からすると、この対応はとても正しい。

むかしむかし、まだ科学が発達していなかった時代、日本人は病気になるなど不幸なことが起こると、その原因を「穢れ」にあると考えていた。
生活をしていると、知らないうちに罪や穢れが体や心に付着し、それがたまっていって厄災を招く原因となるとされている。だから、定期的に穢れを祓い、心身を浄化させる必要がある。
現代の日本では夏と冬、年に2回、ちょうどバーゲンセールが行われるころ、神社で茅の輪(トップ画像)をくぐって罪や穢れを祓う「大祓(おおはらえ)」の儀式がおこなわれる。
これはこれで、穢れを一掃するから立派なクリアランス。

きょう6月30日は、大祓の夏バージョンである「夏越の祓」がおこなわれる日。
だから、SNSにを見ると、神社へ行って、茅の輪をくぐって無病息災を願ってきましたよーという人がたくさんいる。
ちなみに、京都では「水無月」という和菓子を食べることが夏越の大祓のお約束になっている。

【ひゃっこい夏の行事】京都の大祓&水無月・石川の氷室饅頭

 

教会(たぶん)でエクソシズムをしている場面(15世紀)
体を押さえられた人の口から、黒い悪霊のようなものが出ている。

 

まえにアメリカ人と話をしていて、神道の「穢れと祓い」の考え方とそれに基づく大祓について説明し、そんな儀式がアメリカにもあるか聞いてみた。
すると彼は、「それは知らないけど、その話を聞いて、なんかエクソシズムが頭に浮かんだ」と言う。
エクソシズム!!
悪霊や悪魔に取り憑かれた人に対して、キリスト教の聖職者が十字架などのホーリーアイテムを使って、体から追い出そうとするあの儀式のことか!

カトリック教会では、悪魔祓いをするにあたって、対象となる人物の症状が精神的な病気ではないことを慎重に判断し、それができる人物(エクソシスト)を司祭に限定するなど、厳格なルールが定められている。
こうした「霊的な戦い」では、悪魔の軍団と戦って勝利した大天使ミカエルの力を借りるといい。
カトリックでは、ミカエルへの祈りが悪魔祓いで最も強力な“武器”になると考えられているという。

Saint Michael’s Prayer against Satan and the Rebellious Angels, attributed to Pope Leo XIII, is considered the strongest prayer of the Catholic Church against cases of diabolic possession.

Exorcism

こんなロザリオや聖水もエクソシズムには有効。

 

アメリカ人が大祓の話を聞いたら、悪霊(悪魔)祓いの儀式を連想するとは思わなかった。
でも、この反応は斜め上にあっても、見当違いではない。
穢れや悪霊などは不幸の原因になるから、それを取り除かないといけない。これは医学ではなく宗教の分野だから、「聖なる力」を使う必要がある。
言われてみれば、神道のお祓いとキリスト教のエクソシズムは基本的な考え方が似ている。
こんな発想はきっと人類に普遍的で、ほかの外国人に聞いたら、別のカタチの「除去の儀式」が出てきそうだ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。