日本とインドの”嘘つき客引き”に見る社会や警察官の違い。

 

最近、日テレのニュースで「東京の池袋で、違法な客取りをしていた大学生が捕まった」というニュースを見た。

「同系列の店」ウソつき客横取り 少年逮捕

飲食店の前にその客引きがいたらしい。
店に入ろうとする人を見つけると、「同じ系列の店がありますよ」とウソをついてその客を別の店に案内していた。

客を横取された店側は怒り心頭。
営業妨害で、客引きをしていた大学生は警察に逮捕された。

 

犯罪行為だけど、人を傷つけるような重罪ではない。
だから、ニュースとしてのあつかいは小さい。

この記事を読んでいて、ふとインドの客引きが頭に浮かんできた。
それを記念して、今回は日本とインドの違いについて書いていきたいと思う。

 

 

むかしテレビCMで「インディアン、ウソつかない」という言葉があった。

でもインドを旅したらすぐにわかる。
インドにはウソつきがたくさんいる。
「インディアン、ウソしかつかねーじゃねえか!」とさえ思う。

もちろん、実際にはそんなことはない。
紳士的なインド人もたくさんいる。

 

これから書くことは、ボクのインド旅にもとづく独断と偏見による。

インドでは、大きな荷物を背負ってガイドブックを見ながら歩いていると、すぐに客引きから声をかけられる。
「なんだ雑音か」と思って無視していると、腕をつかまれて強引に止められたこともある。

そんな客引きに「ヴィシュヌ・ホテルに行きたい」と言うと、彼は「ヴィシュヌ・ホテルか。知ってるよ、ついて来い」と言って歩きだす。

でもって、ボクがついて来ないと怒り出す。
「心配するな。オレはグッドマンだ。だから信じろ」と、世界で最も信頼性のない根拠をあげる。

 

そして、「ここだ」と案内されたホテルの看板には、「ヴィシュヌ・ゲストハウス」と書いてあった。
「てめー、ヴィシュヌ・ホテルと違うじゃないか!」とボクが怒ると、こんな感じでテキトーなウソをつきまくりの巻。

「ヴィシュヌ・ホテルはこのヴィシュヌ・ゲストハウスに名前を変えたんだ。ここで間違いない」
「ヴィシュヌ・ホテルは3か月前につぶれたよ。このホテルはベリーグッドだ。ノープロブレム」
「ヴィシュヌ・ホテルなんてやめよとけ。このホテルのほうがずっといいから」

とにかく、ヤツは自分が案内したホテルにボクを泊めようとする。
客を連れてきたら、そのホテルからいくらかお金をもらうことができるから。
それで、何とかボクをそこに泊まらせようと、必死になる客引きもいた。

 

旅行者にウソをついたり脅したりしても、彼らには関係ない。
とにかく旅行者をそこに泊まらせたら、客引きの勝ち。
結果はあらゆる手段を正当化させる。

インドの客引きって、そんなんばっか。

 

 

インドを旅していて、客引きの強引さには本当に辟易へきえきした。超ウンザリした。

「ウソをついて客を別のところに連れて行って、手数料をもらう。そんなズルい客引きなんて、日本にいるわけがない」なんて思っていたら、東京の池袋にいた。

でもインドとは違って、日本ではそういう悪質な客引きは少ない。

それと日本だと警察に捕まるけど、インドではそのぐらいじゃ捕まらない。
それぐらいでインド警察は動いてくれない。
旅行者の自己責任だ。

 

「日本とインドでは、警察がまったく違うんですよ!」

インドに住んでいた日本人からそんな話を聞いた。

その人の家に泥棒が入って、いろいろなものを盗られてしまった。
駆けつけた警察官に事情を説明すると、その人はこう言われた。

「で、オレにいくらくれるんだ?」

警察官が堂々とワイロを要求する。
「お金を出さないと、犯人をさがさない」とまで言われたという。

仕方なく、その日本人は警官にワイロをわたす。
警官が家を出て行った後、灰皿がなくなっていることに気づいた。
警官による二次災害だ。

 

 

大阪を訪れたインド人が上の写真をフェイスブックに投稿していた。
右上で、警察官が膝をかがめて女の子の話を聞いている。

インド人、これに大感動。

「I’d vote it. the best Police station signage in the world」とコメントしている。
警察署のサインとしてはこれが世界最高らしい。

たしかにインドの警察官は違う。
インドを旅行中、庶民が警察官から棒で殴られているのを何度も見た。

 

 

話を池袋の客取りに戻す。
客引きは、1ヶ月で20万円ほどの収入を得ていたらしい。

インドでこの金額は考えられない。

池袋で客取りをしていた大学生は、「遊び感覚だった」と話している。
インドの客取りは「遊び感覚」ではない。

生活がかかっているから必死だ。
だから感覚としては、インドの客引きより池袋の客引きのほうがムカつく。

たしかにインドの客引きは不快だ。
ひどいウソをつくし、腕をつかむし。
だけどそれは遊びのためではなくて、家族のためにしている面もある。

日本にもインドにも、客にウソをついて別のところに連れて行く客引きはいる。
でも、その動機や背景にある社会はまったく違う。

 

 

そんなインド社会も近ごろは変わってきている。

日本経済新聞のこの記事(2014/12/17)を読んだときは、「ついにこの時が来たか!」と思った。

インド政府は、旅行者が嫌がる強引な客引きを規制するため旅行者に触ると犯罪行為にする準備を進めている。同国の国内総生産(GDP)の約7%を占めるのは観光業で「清潔、安全、おもてなし」策の一環だ。

インド、強引な客引き規制へ 旅行者に触ると犯罪に

「清潔、安全、おもてなし」のインド旅か。
きっと25世紀の話だな。

 

おまけ

インドのリキシャーの客引き

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。