群馬に200人  日本人だから知ってほしい。ロヒンギャ問題とは?

 

「ロヒンギャ」という人たちを知ってますか?

東南アジアのミャンマーにいる人たちで、群馬県の館林たてばやし市にも200人ほどのロヒンギャが住んでいます。

今回はそんな彼らの話です。

 

 

ロヒンギャというのはミャンマーにいる少数派のイスラム教徒の人たちで、バングラデシュに近いアラカン州というところにいる。

「それはつまりどこよ?」という人もいると思うから地図をつけときます。

この地図の北海道のところがアラカン州。

 

なんでアラカン州に住んでいたロヒンギャが日本の群馬県に住んでいるのか?

彼らはミャンマーに住めなくなったから。
ミャンマー政府はロヒンギャを国民とは認めていない。
だから、ロヒンギャの人たちには国籍がないのだ。

 

ミャンマー旅行でお世話になった現地のガイドも、ロヒンギャをミャンマー国民とは認めていなかった。

「彼らはミャンマー人ではないのです。ミャンマーにいることがおかしいんですよ。早く出て行くべきなんです」

こんな激しいことを当然のように言う。
ミャンマーでは、ロヒンギャ以外にロヒンギャを支持する人はいないだろう。

 

ちなみにミャンマー人はとても宗教心の深い仏教徒で、タイ人も「ミャンマー人は仏教に熱心です」と言うほど。
とても親切でやさしい人が多けど、それとロヒンギャ問題は別のこと。

 

「ミャンマー政府はロヒンギャに対して激しい弾圧を加えている」

そんなことは前々からニュースで知っていたけど、まさかここまで深刻な事態になっているとは思わなかった。
今ロヒンギャは、ミャンマーで「存在することを許されない」という危機的な状況にあるという。

AFPの記事(2017年02月04日)から。

ミャンマー軍がロヒンギャ弾圧で「民族浄化」か、国連報告書

国連(UN)は3日、ミャンマー軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)に対する弾圧で数百人が死亡した恐れがあると明らかにした。子どもの虐殺や女性の集団性的暴行などの証言もあり「民族浄化」ともいえる状況になっている恐れがあるという。

(中略)国連は、ミャンマーで「人道に対する罪」が行われている可能性が「極めて高い」としてミャンマーを繰り返し批判しており、今回の報告書でも同様の非難がなされている。

 

ここにある「民族浄化」というおそろしい言葉を聞いたことある?

国を支配する側にいる人たちが、自分たちの気にいらない民族を殺したり追放したりして、その地域から特定の民族を消してしまうこと。

【民族浄化】

《ethnic cleansingの訳語》複数の民族が住む地域で、特定の民族集団が武力を用いて他の民族集団を虐殺・迫害・追放して排除すること。

デジタル大辞泉の解説

この民族浄化という言葉は、1990年代に起きた旧ユーゴスラビアの内戦時に生まれたといわれる。
比較的新しい言葉だ。

ロヒンギャへに対する「民族浄化」の背景には、「彼らがミャンマーにいるのはおかしいです。ミャンマーから出て行くべきなんです」という考え方があるはず。

 

ミャンマー最大の都市ヤンゴン

 

ミャンマー政府から迫害を受けて、ミャンマー国内で生活することが不可能になったロヒンギャの人たちは次々と国外へ逃げ出す。

100万人以上のロヒンギャがミャンマーを抜け出し、世界各国に散らばっている。
でもそれは無事にたどり着いた人の数で、逃亡中に命を失った人がどれだけいるのか?
まったく想像できない。

「住む国がない」というロヒンギャの状況は、イスラエルが建国される前のユダヤ人と似ている。

救いを求めて海外に逃げ出したロヒンギャのうち、日本政府は200人以上を難民として受け入れた。
そのうちの約90%が群馬県に住んでいる。
なんで群馬県なのかはわからない。

 

「民族浄化」という民族絶滅の危機にあるロヒンギャ問題は、まったく解決のめどが立っていない。

最近もミャンマー軍とロヒンギャの武装勢力とが衝突して500人もの死者を出している。

NHKニュース(2017年9月1日)から

ミャンマー軍は31日夜、30日までに武装勢力370人を殺害したほか、軍の兵士や警察官それに戦闘に巻き込まれた住民を含めると、合わせて499人が死亡したと発表しました。

ミャンマー軍と武装勢力との戦闘で500人近く死亡

 

群馬にいるロヒンギャの人たちは何を思って生活しているのか?

「日本人にも、自分たちロヒンギャの存在を知ってほしい」と考えているという。

日経新聞の記事(2016/11/28) から。

アウン・サン・スー・チー氏が政権を握った後も続く軍などによる迫害は10月以降に深刻化、アジア各地で抗議デモが相次ぐ。「日本人にもロヒンギャのことを知ってほしい」。同市のロヒンギャは国際社会の支援を訴えている。

ロヒンギャ迫害、日本人も知って ミャンマー逃れ群馬に200人

日本人が知ったからといって、ロヒンギャ問題が解決することはない。
でも、知らなかったら何も始まらない。

ロヒンギャの存在は今、ミャンマーから消えつつある。
でも、人々の記憶から消してはいけない。

今の日本にはロヒンギャという人たちがいる。
世界にはロヒンギャ問題という重大な国際問題がある。

そんなことぐらいは覚えておいてもいい。

 

 

こちらの記事もどうですか?

ミャンマー 「目次」

人種差別問題の話④日本(群馬)にいるロヒンギャを知ってる?

 

2 件のコメント

  • こんにちは。国内にお住いのロヒンギャの方々の支援活動に携わっているものです(本当に微力ながら…というかんじですが)。わかりやすく、またためになる記事をありがとうございます!
    一点だけ、指摘させていただければと思います。ロヒンギャの方に伺ったところ、群馬県にお住いの200人強のなかで、「難民認定」された方々はそう多くはなく、法的ステータスはまちまち(他には在留特別許可等)とのことでした。
    ちなみに、群馬県に集住している理由については
    ・家賃、物価が安い 
    ・ムスリムが多く、ハラール食品を扱う食料品店がある
    ・工場の仕事がある
    などなどと仰っていました。1990年代から徐々に集まってきて現在の規模になったそうです!

  • こんにちは。
    ロヒンギャの支援活動をされているのですね。
    すばらしいです。そうした人は新聞でした見たことがありませんでした。
    それと、情報をありがとうございます。
    正式に難民と認められた人が少ないのですね。認めらた/られないの違いがよく分かりませんが。
    ぜひ、これからも支援活動を進めてください。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。