紫禁城の観光では「午門」を! 日中韓に共通の「天子南面」

 

さてさて、下の建物はどこにあるものか分かますか?

 

 

答は、中国の北京にある紫禁城。
むかし、中国の皇帝がここに住んでいた。

*ちなみに、北京はとても広い。
北京市の面積は四国より少し小さいぐらい。
中国はスケールが違う。

今はここに皇帝はいないから、「故宮」とも呼ばれている。
「古宮」じゃないですよ、「故宮」ですよ。
「故人」の故。
もういなくなってしまった人を思い慕うような感じがする。

 

明の永楽帝がこの紫禁城を建て、1420年にここに移り住んだ。
それまで明の首都は南京だった。

紫禁城の最後の主は、中国最後の皇帝「溥儀(ふぎ)」。
中国最後の皇帝が、この世で最後に食べたかったのは、チキンラーメンだったという。
意外と、庶民的な皇帝だったかも。

 

上の写真の建物は「太和殿(たいわでん)」と言われるもので、これは中国最大の木造建築物として有名だ。
太和殿は紫禁城のなかでもっとも重要な建物で、皇帝の即位式はここでおこなわれた。

中国の太和殿は、日本でいうなら京都御所の紫宸殿(ししんでん)にあたる。
日本の天皇は、ここ紫宸殿で即位式をおこなってきた。

 

 

つい最近、アメリカのトランプ大統領が中国を訪問したとき、習近平国家主席はこの紫禁城を貸し切って、トランプ大統領を案内していた。

まさに皇帝レベルの破格の待遇。

これを読んでいる人も、いつかこの紫禁城に行くかもしれない。
そのためにも、ぜひ覚えておいてもらいたいポイントがある。

それが下の午門。

 

紫禁城に入るなら、南にあるこの午門か、北側にある門から入場することになる。

ぜひ、南の午門から入ってほしい。
そのほうが絶対に紫禁城の雰囲気を味わえるから。

 

トランプ大統領が紫禁城に案内されたとき、この午門の手前で車から降ろされた。
そして、歩いて紫禁城の中に入っている。
車で午門を通って、紫禁城には入らなかった。

これが、世界のVIPを紫禁城に案内するときの”おもてなし”だから。
故宮博物院の院長は、「午門から歩いて紫禁城に入らないと、もったいない」と言う。

レコードチャイナの記事(2017年11月14)にこう書いてある。

「過去に訪れた海外の要人たちは損をしている。彼らは車で故宮に入り、下車した後も『故宮にもう着いたのか?今は故宮のどのあたりにいるのか』と聞いてきた。車で午門を通ってしまうと、午門の壮大な空間を味わうことができなくなってしまう」と冗談交じりに言い添えた。

専用車は午門前まで 故宮の知られざる「海外の要人へのおもてなし」

紫禁城に入る前に、午門の前に立って「午門の壮大な空間」を味わおう。

ボクはこのことをレコードチャイナの記事を読んで知ったけど、数年前、紫禁城に行った時にその壮大な空間を感じた。

それで動画を撮っている。

映画「ラストエンペラー」を見たせいか分からないけど、たしかに午門の前の空間は、心に訴えかけてくるものがあった。
ここを素通りするのはもったいない。
午門の前で雰囲気を味わおう。

 

この午門の「午」という漢字は、「南」や「真ん中」という意味がある。
午前と午後の「午」は、真ん中ってこと。

中国人ガイドは、「中国皇帝は世界の中心にいるから、午門という名がつけられた」と話していた。
これはいわゆる華夷思想(中華思想)のこと。

華夷思想

世界の中心である自国を華、周辺の民族を野蛮な夷狄と称し、みずからの優位性を誇った思想。
中国のみならず、朝鮮や日本の王朝の天下観にも影響を与えた。

「世界史用語集 (山川出版)」

この考え方が日本に与えた影響としては、戦国時代、来日したヨーロッパ人を「南蛮人(南の野蛮な人間)」と呼んでいたことがある。

 

それと、中国に古くから伝わる「天子南面」の考え方もある。
「天子」とは天の子、つまり皇帝のことで、南面には「昔、中国で天子は臣下に対面するとき、陽の方位である南に面して座ったことから》天子の位に就くこと。天子となって国内を治めること」(デジタル大辞泉)という意味がある。
だから国を治める皇帝は、必ず南を向いていないといけない。

「天子南面」の考え方は、日本にも朝鮮半島にも伝わった。
ソウルの景福宮や京都御所は、王や天皇が南を向くようにつくられている。

 

 

午門から入って、最後は、北側にある景山から紫禁城を眺めてみよう。

 

歴史に興味がある人は、景山公園にある”木”も忘れずに。
ここには明の最後の皇帝・崇禎帝(すうていてい:1610~1644)が首をつった木がある。
縁起としては最悪だけど。

 

 

それがこの木で、今は2代目か3代目になっている。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。