中国人の春節(正月)の過ごし方。餃子・花火・麻雀の起源

 

冬休みに海外旅行に行くと、その国で新年を迎えることがある。
1月1日の新年といっても、国によって過ごし方や雰囲気がまるで違う。

同じ東アジアのなかでは日本だけ、お正月が1月1日から始まる。
日本は明治時代にヨーロッパと同じ暦にして、正月も欧米に合わせてしまったからね。

でも韓国・中国・ベトナムでは今でも、日本でいう旧正月(大体1月の終わりごろ)を正月としている。
日本も江戸時代はそうだった。

だからそんな国で1月1日を迎えても、「お正月ムード」をほんとど感じることがなかった。

 

都市部に行けば、若者が集まってカウントダウンをして祝うところもある。
ソウルでは、「普信閣(ポシンガッ)」という大きな鐘があるところで除夜の鐘をついてからカウントダウンをする。
そして1月1日になったら、花火をする。

 

中国にもそういうところがあると思う。
でもボクが韓国や中国を旅行して感じた限りでは、1月1日はほとんど普通の祝日と同じ。

旧正月を祝う国で新年を迎えても、日本での「お正月感」がまるでない。
殺風景な正月を過ごすことになる。

 

韓国人の友人はこんなことを言っていた。

「それは仕方ないですよ。クリスマスを祝って、その1カ月後に正月が来ますから。その間に大きなイベントをしたら、疲れちゃいますよ」

 

中国人のガイドも同じようなことを言っていた。

「中国の春節(チュンジエ)は大変なんですよ。実家へ帰るだけでとても疲れるんですよ。プレゼントや食事なんかでお金もたくさん使いますし。1月1日はゆっくりしていたいですね」

そういうことなら仕方がない。
外国人なら、その国伝統文化を尊重しないといけないし。

 

中国語で正月を「春節(チュンジエ)」という。

春節は正月初一を示す言葉であり、古代においては元旦と称されていた。元とは始まるの意味であり、旦とは日の出を示す象形であることから、元旦は最初に日が昇る一日、すなわち正月を示す言葉となった。

(ウィキペディア)

春節の節は節分の節と同じ。

 

この春節のとき、中国はすさまじい大移動が始まる。
その様は、まさにカオス。

Record chinaの記事(2017年1月29日)では、人類の約半分の人数がこの春節に移動するという。

春節、毎年恒例の民族大移動、旅客数は延べ29億人、海外旅行には600万人、中国人観光客の争奪戦も

2017年1月28日、28日は中国の春節(旧正月)。毎年恒例の民族大移動が始まっている。前後の40日間の旅客数は延べ29億人。総移動距離は地球から土星に匹敵する。

「総移動距離は地球から土星に匹敵する」って、よくそんなことを計測する気になったな。

 

春節には、家の入り口に赤い字で書いた「対句」を飾る。
新年にふさわしい、めでたい言葉を書くことが多い。
日本でいう松飾りのようなものだろう。

 

これは韓国の民族村にあった対句。
これは赤い文字ではないけど、春節にはこんなふうに入り口に言葉を飾っている。
対句は人がはがすのではなくて、自然に落ちるままにまかせるという。

 

日本では大晦日にそばを食べるのがお約束。
でも中国の北方では、大晦日に餃子を食べる風習がある。

年越しに餃子という習慣は明の時代ごろから始まりました。餃子がとてもおいしく、その形が金子や銀子に似ていて縁起が良いからと言われています。

中国の旧正月(春節)基礎知識と2017年最新情報

 

年越しに餃子を食べる理由は、ここに書いてあるように餃子の形が清の時代のお金の形に似ているから、という説がある。

でも別の説もある。
中国人のガイドからは、こんな話を聞いたことがある。
餃子の「餃」の字に「交」の漢字がある。「古い年と新しい年が交わる」ということから餃子を食べるようになった、ということらしい。

 

中国人に春節の過ごし方について話を聞くと、一番多いのが「麻雀(マージャン)」だった。

中国人のおっさんのガイドは「春節では、倒れるまで麻雀をやります」と力強く言っていた。
本当に寝ないで、体力がもつ限りマージャンをやり続けるらしい。

そして当然のようにお金を賭ける。
でも、中国共産党は賭け事を禁止しているはず。
そのことを聞いたら、こう言われた。

「何言ってるんですか!お金を賭けなかったら、麻雀じゃないですよ。共産党の幹部だってお金を賭けて麻雀をしてますよ」

ということらしい。

 

桂林

 

中国を旅行するとよくこんな光景を見かける。
朝はおばさんが公園で太極拳をしていて、昼はおじさんが街で麻雀をしている。
列車に乗っているときにも、麻雀をしていた人たちがいた。

麻雀をしている中国人は、中国のいろんなところで見ることができる。
この麻雀が中国で広まったのは、義和団事件のときだったという話がある。

義和団事件って覚えてる?
中学校の歴史の授業でやったはずですよ。

義和団事件

秘密結社の「義和団」と農民が蜂起した外国人排斥運動。清朝も列強に宣戦布告したが、日本を含む8カ国の連合軍が北京を攻略。その後、清が賠償金を支払い、列強の軍隊の駐留を認める条約が結ばれた

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

 

8カ国連合軍に宣戦布告をしたのが、西太后という女性。
このときの中国の最高実力者だった人。

 

でも、8カ国連合軍に勝てるわけがない。
義和団は鎮圧されて、連合軍は西太后が住む紫禁城に近づいてきた。
でもその前に、西太后は北京から脱出してしまう。

 

と同時に、このとき宮廷にいた多くの人も逃げ出していた。
その人たちが、宮廷でやっていた遊びを一般の中国人に伝えている。

それが麻雀(マージャン)だという。

一説によれば、義和団事件で西太后をはじめ王室の首脳が西安に逃げ、宮女たちが四散したとき、このゲームが民間にひろがったという。

(日本的 中国的 陳舜臣)

 

文化が宮中から世間一般に広がることは、世界の歴史でよくある。

 

ちなみに、義和団事件ではこのことも覚えておこう。
このときの日本の対応が見事だったということから、日本の国際的な地位が向上している。

日清戦争ののち、日英両国は共通の利益が極東において結びついているとの認識を得た。とくに英国は、義和団事件で日本が果たした優れた役割をつうじて、日本の実力を認識したのである。

「アメリカの鏡・日本 ヘレン・ミアーズ」

 

これが後の日英同盟につながる。
日英同盟がなかったら、日露戦争での日本の勝利もなかっただろう。

 

清国の国旗

 

2017年の春節(旧正月)は1月28日。

この日になると、旧正月を迎えた人たちがFacebookで新年のあいさつをしていた。

1月28日に「あけましておめでとうございます!」というのも日本人には変か感じがするけど、中国・韓国・ベトナムではそれが当たり前。

 

たとえば、華人のシンガポール人はこんなあいさつをしていた。

祝FB的華族朋友們
恭喜發財、雞年行大運
身體健康、萬事如意

 

香港人はこんな感じ。

恭喜發財,祝大家新年快樂,身體健康!

 

中国人はこんな感じ。

我一定要晒
你们没见过的
舟山人大鱼大肉年夜饭

この文は意味がよく分からないけど、たぶん「魚や肉の料理をたくさん食べた」ということだと思う。
ごちそうが並んでいる写真があったから。

さらに花火も打ち上げられるらしい。
日本で花火といえば夏の季語だけど、外国人に聞くと「花火といえば冬でしょ」と言う人が多い。

「正月には花火は欠かせません。あの『ど~ん!』という音を聞くと正月が来たんだな!ってうれしくなりますよ」

と中国人の友人は言っていた。

 

中国政府としては、大気汚染が深刻な問題になっているから、正月の花火はなるべく止めてほしいらしい。
年越しに行われる爆竹と花火によって、6段階ある汚染指数で最悪の「深刻な汚染」を記録し、当局は市民に自粛を呼びかけた。
しかし、本当に重大で深刻な問題は賭け麻雀もそうだけど、市民が法やルールを守らないことでは?

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。