日本と韓国のもっとも大きな違いの1つに、「兵役の義務」がある。
韓国で男として生まれたからには、18歳から29歳まで間に、約2年間の兵役の義務をおこなわないといけない。
もちろん病気や障害といった特別な理由があれば、この必要はない。
友人の韓国人の場合は、大学を休学して2年間軍人として生活していた。
韓国では大学生の間に兵役をすませることがよくある。
日本の大学生ではあり得ない。
でも、韓国の兵役はこれだけではない。
韓国の情報サイト「KONEST」にはこう書いてある。
実際の軍隊服務期間を「現役」または「補充役」、除隊後の8年間を「予備役(予備軍)」、それから40歳までを「民防衛」と言い、20歳で入隊した場合約20年間の服務義務を全うするのが、韓国の徴兵制度です。
韓国人から聞いた話では、ほとんどの人は軍隊に行きたくはない。
青春の貴重な2年間を軍人として過ごさないといけないから、失うものは多い。
でも、メリットはある。
初対面の人と会っても、軍隊の話をすればすぐに打ち解けることもあるらしい。
「酒があったら、軍隊の話を3日は話すことができます」なんことを友人の韓国人が言っていた。
今は知らないけど、軍人だとロッテリアで割引が受けられたという。
日本では学割はあるけど、「軍割」なんてものは考えられない。
日本人が韓国に行くと、軍服・軍帽・軍靴の姿の韓国人を見て驚くと思う。
休暇中でも、私服で外に出ることはできないという。
なんで韓国には徴兵制があるのか?
その理由は、韓国は今も戦争中だからだ。
ちょうせん‐せんそう【朝鮮戦争】
大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国との間の戦争。第二次大戦後の米・ソの対立を背景として、1950年6月に南北朝鮮を分かつ北緯38度線付近で武力衝突し、それぞれ米軍を中心とする国連軍、中国義勇軍の支援のもとにほぼ朝鮮半島全域を戦場とした国際紛争。1953年7月、休戦協定が成立。
デジタル大辞泉の解説
今の韓国は「休戦中」という状態で、戦争が終わったわけではない。
徴兵制について、韓国の憲法にはこう書いてある。
国軍は、国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される」とされ(第五条)、さらに「すべての国民は、法律の定めるところにより、国防の義務を負う」という条項(第三九条一項)をもっている
「「市民」とは誰か (佐伯啓思)」
韓国の憲法では、日本の平和主義の根源となる「戦争放棄」・「戦力の不保持」・「交戦権の否認」の3原則が否定されている。
これは良い悪いの問題ではなくて、日本と韓国の社会がちがうというだけ。
今も休戦中の韓国には兵役が必要だけど、日本には自衛隊があれば十分だ。
ちなみに、軍人のことを英語で「サービスマン」と言う。
兵役の義務から軍人になるのではなく、自分の意思で軍人になると「ボランティア」と言われる。
北朝鮮と向き合う韓国軍の兵士
50代の韓国人ガイドは、兵役をしない人間を韓国人とは認めていなかった。
「そんな人間は絶対ダメです。韓国に住んではいけません」
こんな感じで、かなり厳しい。
それでも「軍隊には行きたくない!」と思う韓国人は多く、「兵役逃れ」が問題になっている。
レコードチャイナの記事(2014年6月29日)から。
2年の兵役が個人の成功に与える影響は極めて大きいため、芸能人や事務所はさまざまな方法を考えて兵役を逃れようとする。
俳優のペ・ヨンジュンは視力低下、歌手の徐泰志は胃病を理由に兵役を免除されている。
ユ・スンジュンは米国居住権を選んだことから兵役に行かずに世間を騒然とさせ、韓国政府は入国を禁じ、国民から「裏切り者」のレッテルを貼られた。
韓国憲法にあったように、国を守るということは国軍にとって「神聖な義務」で、兵役は国民の義務になっている。
だから、これを拒否するということは「国家への裏切り行為」に映る。
韓国社会でこうした裏切り者は許さない。
上の文にあった「ユ・スンジュン」という芸能人がまさにそんな人だ。
ユ・スンジュンはアメリカの市民権を取得して、兵役にはつかなかった。
韓国国民がこれに激怒し、政府はユ・スンジュンの入国を禁止した。
「focus-asia」の記事(2015年05月21日)から。
「兵役逃れ」をしたため、韓国政府から「韓国への入国禁止」が言い渡された。
妻の父親の葬儀に出席するため帰国を試みたこともあったが、空港でタマゴを投げつけられた。これまでの13年間、1度も韓国の地を踏んでいない。
そして、彼はもう韓国の国籍に戻すこともできない。
国籍法第9条「兵役忌避を目的に大韓民国国籍を喪失した者は国籍回復ができない」という法律に基づき、ユ・スンジュンの韓国入国が拒否されている状態だ。
ユ・スンジュンは今、韓国へ行くことも韓国人に戻ることも許されない。
韓国から見捨てられた状態になっている。
子どもから、「韓国人なのになぜ韓国に帰れないの?」と聞かれることが辛いらしいけど、どうしようもない。
韓国で兵役逃れの罪は、とてつもなく重いのだ。
北朝鮮との国境近くにいる韓国軍の兵士
こんなところも「観光地」になっていて、ツアーで行くことができる。
最近、ハンギョレ新聞にこんな記事(2017-12-22)があった。
韓国では、兵役の義務をおこなわない人間を兵務庁がホームページで公開している。
彼らは韓国社会で、「裏切り者」と見られるだろう。
これは就職や結婚にも影響するはず。
でも、宗教的な理由から兵役につくことができない人もいる。
そうした正当な理由がある人も、兵役逃れの人間と同じように扱われていた。
ハンギョレ新聞の記事で、彼らがこう批判している。
「私は軍服務ができないため、代替服務を通じて社会に貢献できるようにしてほしいとしたのだが、単に兵役を逃れようとする人と同じように扱っている」
「良心に基づいた行動は保護されなければならないが、かえって他の犯罪者と同様に取り扱うのは誤りだ」
こうした問題は日本の社会では起こりえない。
日本と韓国の違いをつくづく感じてしまう。
おまけ
ソウルで見たクリスマス・イルミネーション。
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「Why did you come to Japan(You は何しに日本へ?)」は失礼な質問?
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