前回、新婚旅行で日本に来たイギリス人のカップルから聞いた「日本とイギリスはここが違う」ということについて書いた。
彼らは「料理が違う」と言う。
懐石料理を食べた旅館で、「日本料理では、季節に応じて器を変える」という話を聞いて感動する。
「季節感を出す」ということは日本料理の大きな特徴で、農林水産省のホームページでは、和食の特徴として「自然の美しさや季節の移ろいの表現」をあげている。
今回も、イギリス人から聞いた話。
マグロの解体ショーはどうだろう?
欧米人の中には、「あれは残酷」と受け付けない人もいる。
「イギリスでは、『料理で四季をあらわす』なんて発想はない。イギリス人は大ざっぱだから。皿の洗いやすさしか考えてないよ」と言って夫が笑う。
でも、妻がこんなことを言う。
「日本人の店員はよく気がつくし、いつも笑顔で客にサービスしている。だからそれで、困ることもある」
良いことでも、やり過ぎると逆効果になる。
他人から好感を持たれることはいいけれど、その気持ちが大きすぎると、重いし疲れる。
家への帰り道で待っていられると、「おまわりさんこいつです」となる。
古代の中国人は「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言った。
過(す)ぎたるは猶(なお)及ばざるが如(ごと)し
《「論語」先進から》何事でもやりすぎることはやり足りないことと同じようによくない。
「デジタル大辞泉の解説」
イギリス人が「重い・苦しい」と感じたのは、日本の店員の礼儀正しさだった。
「信じられないよ!寿司がこんなに安いなんて!」
と、スシローの寿司に感激していた夫がこんな質問をする。
「日本では、コンビニとかいろんな店に入ると、店員から『いらっしゃいませ』って言われるだろ?あれには、何て言葉を返したらいいんだ?」
「いらっしゃいませ」と店員に言われたら、客はどんな言葉を返すべきか?
「はい。いらっしゃいました」なんて言えば、「やべーの来たぞ」と店員に思われてしまう。
そんなわけで、「客は返事をしなくてもいい。日本ではそれが当たり前だし、店員だって気にしないから」と言ってみた。
でも彼は、あいさつしてくれた礼儀正しい店員を”無視”することが「とても心苦しい」と言う。
でも、「いらっしゃいませ」に返す言葉が分からない。
結局、「店員と目を合わせてニコッとすればいい」ということでこの話題はおしまい。
イギリスでは、店員と客の立場はほぼ対等。
「客が神であるはずがない」ということで、店員はフレンドリーに接することがあれば、「チッ」と客に舌打することもあるという。
このとき寿司を食べていたイギリス人は、「イギリスの店でレジの列に並んでいるとき、レジの店員と他の客との会話に巻き込まれて、一緒に会話したこともあった」と話していた。
店に入って来る客に「おととい来やがれ」と言うことはないけれど、「いらっしゃいませ」を言うかどうかはその日の店員の気分しだい。
それでも客は気にしないから、問題はない。
すると今度は、妻のほうが「教えてほしい日本語がある」と言ってくる。
「日本語で、『レジ袋はいりません』ってなんて言うの?」
「変な日本語を知りたがるな」と思ったけど、彼女はどうしてもこれを知りたいと言う。
このイギリス人も、日本の店員の礼儀正しさやサービス精神を重苦しく感じていた。
そのことは次回に。
国民は礼儀正しく、自然は美しい。
そんな日本にも、HENTAIがいる。
これはたしか大阪のトイレ。
おまけ
日本を旅行していて、「いらっしゃいませ」と言われることに困っている彼らは幸せだ。
1878年(明治11年)に、イザベラ・バードというイギリス人女性が日本を旅行していた。
彼らの大先輩である彼女は、こんなことを言われている。
日本の大衆は一般に礼儀正しいのだが、例外の子どもが一人いて、私に向かって、中国語の「蕃鬼」(鬼のような外国人)という外国人を侮辱する言葉に似た日本語の悪口を言った。
「日本奥地紀行 (平凡社)」
バードのこの日の日記には、「今日、とてもファッキンなジャップに会って、私はすっかり失望させられた」と書いてある。
・・・ということは、幸いにしてなかった。
この後、この子どもはメチャクチャ叱られて、警察官がバードに謝罪しているから。
去年1年間で、日本は2869万人の外国人旅行者を受け入れた。
でも、そのスタートはこんな感じだったらしい。
おまけのおまけ
「あいさつ(挨拶)」とは、もともと仏教の禅宗で使っていた言葉だった。
門下の僧の悟りの深浅を試すための問答をいう。更に五山の禅林では「受け答え」の意味に使うようになった。
「新明解語源事典 (三省堂)」
ここから、今の日本で使う「挨拶」になった。
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