人類はどうやって誕生したのか?
「人はサルから進化した」という進化論は正しいのか?
それとも、「人は神によってつくられた」という創造説が正しいのか?
いっそのこと「もう、そういう面倒なのはいいから」と考えないのが正解か?
キリスト教・イスラーム教・ユダヤ教では、創造説が正しいと信じられている。
進化論はこの考え方に反しているから、アメリカでよく問題になる。
現在のアメリカ人は、進化論と創造説についてどう思っているのか?
下のグラフを見てみよう。
これは世界の国で、進化論がどのていど受け入れられているのかを表している(2014年)。
「Public acceptance of evolution」から。
青は進化論を事実と考える人の割合。
黄色は分からない人。
赤は進化論を否定する人。
この中ではトルコが最下位で、アメリカは下から2番目。
これはおもに欧米の国だから、その中でアメリカは、進化論を否定する人がもっとも多いことが分かる。
国内をみれば、進化論を支持する人が40%で、否定派の40%と拮抗している。
だからアメリカでは、「進化論 vs 創造説」の争いが起こってしまう。
英語で「The book」といえば、聖書のこと
前回、「コストコ聖書事件」について書いた。
アメリカのコストコで、聖書の値札に「フィクション」と書かれていた。
フィクションとは「つくり話」のことだから、「聖書の内容は100%事実だっ!」というキリスト教の信者がこれに激怒。
コストコはすぐ降参、公式謝罪をおこなった。
そんなことが2013年にあった。
でも移民大国アメリカには、いろいろな価値観や考え方がある。
聖書の”フィクション扱い”に怒る人がいれば、「いや、コストコは正しい。聖書はフィクションだ」という人もいる。
この「コストコ聖書事件」を、知り合いのアメリカ人に聞いてみた。
サウスカロライナ出身のアメリカ人男性はこう言う。
「それはアメリカのどこの州だ?南部なら大問題になるけど、北部なら、大騒ぎにはならないだろう」
ニューヨーク出身のアメリカ人女性は違う。
「コストコでそんなことがあったの?フィクションって、竜が空を飛んだり火をはいたりする物語よ。聖書をそれと同じ扱いにするなんて、マジあり得ない。アメリカの北部でも大問題になるわよ」
ちなみに2人とも、キリスト教にはほとんど関心がない。
見方はちがうけれど、2人とも「店員がアホ。コストコがたたかれるのはあたり前」という認識は同じ。
ちなみにイギリス人は「店員はきっと、わざとやった」と言う。
店員がキリスト教を嫌いだから、意図的に”フィクション扱い”したという。
これはアメリカ人がSNSに投稿した写真
彼女はこの分厚い聖書を気に入っている。
「Look at one of my Bibles. I LOVE THICK BOOKS. How can I go back to school when I can’t make even once to Bible study?😢」
彼女は聖書について、もっと学びたいらしい。
「one of my Bibles」ということで、彼女は聖書を何冊も持っている。
日本人よ、これがキリスト教徒だ。
先ほどアメリカ人が、コストコ聖書事件について「南部なら大問題だけど、北部だったら大ごとにはならない」と言っていた。
というのは、アメリカでは、北部と南部で宗教に対する考え方が大きく違うから。
南部には、熱心なキリスト教徒が集中的に住んでいる。
それでそこは「バイブル・ベルト」と呼ばれている。
直訳すれば、聖書地帯。
赤い部分がバイブル・ベルト
バイブル‐ベルト(Bible Belt)
キリスト教篤信地帯。特にアメリカ南部および中部の、聖書を字義どおりに信じる正統派キリスト教徒の優勢な地域をさす。
「デジタル大辞泉の解説」
*「進化論を支持が40%、反対が40%」という数字はアメリカ全体でのもの。
南北で調査を行えば、進化論を信じる割合は南部で上がって、北部で下がるはず。
ここに、「聖書を字義どおりに信じる正統派キリスト教徒」と書いてある。
こういう人は南部に多いけど、アメリカの他の地域にもいる。
先ほどのニューヨーク出身アメリカ人から、以前こんな話を聞いた。
熱心なキリスト教徒には、地球に恐竜がいたことを信じない人もいるという。
「恐竜なんて聖書に出てこないから」という理由で。
こういう人たちは、聖書の内容を100%事実だと信じている。
だから当然、進化論を否定する。
ニューヨーク出身のアメリカ人が大学時代、そういう人と話をしているとき、「私は進化論が正しいと思う」とつい言ってしまった。
すると、「進化論は”悪魔の論理”だ!」と怒られたという。
こんなことがあったから、そのアメリカ人は「進化論 vs 創造説」の議論には立ち入らないようにしている。
アメリカで宗教の話はむずかしい。
そのアメリカ人の祖父母は、アメリカの南部に住んでいた。
おじいさんもおばあさんも、聖書を心から信じていた。
まさに、「聖書を字義どおりに信じる正統派キリスト教徒」という人だったらしい。
当然、彼らは「創造説が正しい。進化論?ファック!」と考えていた(たぶん)。
そんな祖父母を前にすると、彼女は本当のことが言えない。
ニューヨークでは進化論を信じている人が多くて、彼女もそれが正しいと考えていた。
でもそんなことは、ジジババには言えない。
進化論を”悪魔の論理”と考えている人たちだから。
だから彼女は、ニューヨークでは「進化論が正しいと思う」と言うのだけど、南部に行くと「創造説が正しいと思う」と言い替えていたという。
アメリカ人にも本音と建前はある。
「サルから進化した」という進化論が正しいのか?
「神が人をつくった」という創造説が正しいのか?
やっぱり、「そういうことは考えない」が正解だったらしい。
アメリカ人がSNSに投稿していた画像
聖書を学ぶことが楽しいらしい。
I had a little fun at Lifeway this morning❤
こういう人に「進化論が正しい」なんて、なかなか言えない。
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