はじめにクエスチョン。
日本の地理や社会について書いてある、世界最古の書物はなに?

答えは、魏志倭人伝。
3世紀の中国で書かれた書で、「日本の地理・風俗・社会・外交などをかなり詳細に記述している、最古のまとまった文献(デジタル大辞泉の解説)」というもの。
中学校の授業で習ったはず。
「倭人」とは日本人のこと。
「日本」という国名は7世紀後半にできたもので、この当時は「倭」と呼ばれていた。
その魏志倭人伝には、邪馬台国の日本人の生活についてこう書いてある。
「又、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸有り。山海に浜して居す。草木茂盛し、行くに前人を見ず。魚鰒を捕るを好み、水、深浅無く、皆、沈没してこれを取る。」
また、一海を渡る。千余里。末盧国に至る。四千余戸があり、山と海すれすれに沿って住んでいる。草木が盛んに茂り、行く時、前の人が(草木に隠されて)見えない。魚やアワビを捕ることが好きで、水の深浅にかかわらず、みな、水に潜ってこれを取っている。
「水に潜ってこれを取っている」というのは、今でいう海女さんですね。
この時代の日本人は、海の恵みによって生きていた。
それはずっと変わらない。
明治時代に日本を訪れたエミール・ギメはこう言う。
網の中においしい魚を投げ入れる超自然の力に、彼らは大いに感謝していることを示した。そこで日本人は黙想し、手を合わせ、頭を下げて礼拝したのだ。誰を、何をだって?・・・すべてをだ!
「逝し日の面影 (平凡社)」
日本の食文化に、海の恵みと海への感謝は欠かせない。

今月7月は「海の月間」で、今日7月16日は「海の日」だ。
海の恵みに感謝し、海洋国日本の繁栄を願う。
世界に島国はたくさんあるけれど、「海の日」という国民の祝日があるのは日本だけ。
その意味で、本当に日本らしい日だ。
だが待ってほしい。
最近、日本人が海に生かされなくなっている。
日本人の「魚離れ」が目立ってきた。

首相官邸ホームページから。
魚介類の1人1日当たり摂取量は平成18年に初めて肉類を下回り、その差は拡大しています。
世界遺産にもなった日本料理、とくに寿司はいま世界中に広がっている。
海外でも当たり前のように寿司屋があるし、空港内を歩くと、白人・黒人・アジア人などいろいろな人たちが箸で寿司を口に運んでいる。
これは日本人として、なかなか誇らしい。
でもいま、寿司と刺身の本家・日本で、魚の消費が落ちている。
日本人が魚を食べなくなくなると、魏志倭人伝の時代から続く、日本の食文化が衰退してしまう。
海の日をきっかけに、海の恵みをもっといただくようにしよう。

そんな魚について、最近アメリカ人から、気になることを聞いた。
そのアメリカ人が見たニュースで、「妊婦は寿司や刺身を食べないように」と呼びかけていたという。
なんでか分かりますか?
いま世界的に、海にただようマイクロプラスチックが問題になっている。
微細なマイクロプラスチックは自然と、魚の体内に入ってしまう。
それでそのアメリカメディアは、生魚を食べるのはひかえるよう妊婦に注意していた。
海に国境はない。
世界の海は日本の海につながっている。
読売新聞によると、日本周辺の海域では、世界の海の27倍もの密度でマイクロプラスチックが見つかっている。
さらに東京湾で採ったカタクチイワシの8割から、マイクロプラスチックが検出されたという。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
海の汚れは魚の汚染につながり、人体への悪影響が心配される。
「海の日」を持つ日本だけど、プラスチックごみ対策については、ヨーロッパと差がある。
毎日新聞の記事(2018年6月20日)から。
リサイクルなどの数値目標を含んだ「海洋プラスチック憲章」が示された。しかし日本は憲章について「産業界などとの調整不足」として米国と共に署名せず、対策が進む欧州との差が浮き彫りになった。
「プラごみ減へ戦略 来年G20までに 産業界に賛否」
数値目標を決めてプラスチック製品の使用を制限することについては、日本では、プラスチック業界が反対しているらしい。
でも、そんなことをしている間にも、海洋汚染が進んでしまう。
世界中で、「寿司や刺身離れ」が起きてしまうかもしれない。
「海の恵みに感謝し、海洋国日本の繁栄を願う」というのなら、政府は産業界と早く調整してほしい。
ただでさえ日本人の魚離れが進んでいるのに、世界で「魚はマイクロプラスチックを含んでいる」というイメージが広がったら、日本の伝統的な食文化はヤバいことになる。

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