ミャンマー旅②首長族に聞く!首輪を外したら?お風呂は?

 

はじめの一言

*日本人は、お金持ちも質素な生活をしていた。
「上流家庭の食事とても、至って簡素であるから、貧乏人だとて富貴の人々とさほど違った食事をしている訳ではない。(カッテンディーケ 江戸時代)」

「逝きし日の面影 平凡社」

 

 

今回の内容

・首輪を外したら?お風呂は?
・首輪をつけていて、得することは?

 

 

ミャンマーの「インレー湖」という湖の近くに「パダウン」と呼ばれる首長族の人たちが住んでいる。

日本にいたとき、彼女たちの写真を見たときに思った。

「これはぜひ会って話を聞いてみたい!」

ということで、お土産店で働いている彼女たちにいろいろ話を聞いた。
もちろん、ミャンマー人(シャン族)のガイドをとおして。

その続き。

 

 

・首輪を外したら?お風呂は?

写真で首長族の人を見て感じた疑問は、「この人たちはいつ首輪を外すのか?そもそも、外すことができるのか?」というもの。
さっそくこのことを聞いてみた。

「いえ、外しません。ずっとこのままです」

「えっ?お風呂に入るときや寝るときにも、首輪を外さないのですか?」

ボクが聞くと首長族の人が笑い出す。
ガイドがこう説明する。

「彼女たちは、首輪を外すことができないのです。子どものころからずっとつけていたから、首の筋肉がほとんどなくなってしまいました。だから鉄の首輪で頭を支えている状態で、首輪を取ったら首の骨が折れて死んでしまうそうです」

え?
「首輪を取ったら死んでしまう」って、「地雷を踏んだらさようなら」みたいな?
これには絶句ですわ。

「じゃあ、もうずっと外すことはできないということですか?」ときくボクに、「そうです。もう外せません」という首長族の女性。

彼女たちは体を洗う時も寝る時も、重い首輪を外すことができない。
でも、彼女たちの家にはお風呂なんてものはなく、川に入って体を洗うらしい。
それでも、この状態で自分の体はどのぐらい見えるのか。
この首輪のせいで、人生のどれだけのことが制限されるのか?
「死んだらこの首輪を外すことができます」というガイドの言葉が重すぎるて返事に困る。

*「首輪を取ったら死んでしまう」とこの首長族の女性が考えていたことは事実だけど、実際にどうなるかはわからない。

 

アフリカには唇にお皿を入れる文化をもつ民族がいる。

 

お土産店に、彼女たちがしているような首輪が置いてあった。
それを持ってみると、予想よりはるかに重くてびっくりした。
5kgぐらいはあったかな?
こんなものを常に首につけて生活するなんて、想像ができない。

彼女たちはそれをどう感じているのだろう?

「彼女たちは、この姿を誇らしく思っていると言っています。パダウン族は、長い首は美しいことだと考えていますから」

首が長いことが美しい。
世の中にはいろいろな美の感覚があるけど、この感覚は日本人には分からないだろうなあ。

 

 

・首輪をつけていることで得することは?

この首輪をつけていて、他に良いことがあるんだろうか?

「首が長いほど結婚相手も見つかりやすい、と言ってますよ。首が長い女性は美人ですから、お金持ちと結婚できるそうです」

そうか。
ここでは、首の長さが結婚の条件になるんだ。
金持ちと結婚したい気持ちは分かる。

玉のこしに乗りたい思いは世界共通だ。
そうすれば、お金に苦しむことのない生活を送ることができる。

 

玉のこしをねらうのなら、日本の女性の場合は外見や内面の「自分磨き」をがんばるだろう。
でもパダワン族の場合は、そのための手段がまったく違う。
できるだけ首輪をつけて、首を長く見せるのだ。

 

ところで彼女たちは、自分の子どもにもこの首輪をつけさせたいと思うのだろうか?

「もちろんつけさせたい、と言っています。体の筋肉が柔らかいうちに首輪をつけると、首が長くなるそうです。だからできるだけ早めにつけさせたいと思っているようです」

そうなんだあ。
話をしている間、彼女たちはずっとニコニコ楽しそうにしている。
悲しそうな様子がまったくない。
もし、少しでも悲しげな表情を見せていたら、たぶん写真を撮ることはできなかった。

この笑顔は演技ではないと思う。
この首輪をつけた自分の姿を、心の底から誇らしく美しく感じているのだろう。

 

 

じつは最初、彼女たちの写真を撮るのをためらっていた。
実際に身近で見たら、首輪が痛々しくてかわいそうな気持ちになってしまって。

そんなボクにガイドが言う。

「彼女たちは、なんで写真を撮らないんですか?と言っていますよ」

せっかくここまで来て、写真を撮らないのももったいない。
ボクの価値観から「かわいそう」と思っても、ここではここの常識や感覚がある。 ということで写真を撮らせてもらった。

 

でも今、写真を見ても複雑な思いはある。
正直言って、重い首輪をつけた首を見ると痛々しくなる。
でも、彼女たちにはまさにこの姿を美しいと思っていて、誇りにも感じている。
相手が誇りに思っていることを「かわいそうだ」と思うのは、失礼なことなんだろう。

見方や価値観が違うだけで、どちらが「上」ということもない。
日本人には日本人の美意識があって、パダワン族にはパダワン族の美意識がある。
それだけのこと。

 

他に疑問に思ったのは、そもそもなんでこのパダワン族の女性は首を長くしようとしているのか?

それを次回書きます。

 

おまけ

ミャンマーの市場

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。