日中韓のなかで、中国と韓国にはあって日本にはないものは?
いろいろあるけど、前回は「易姓革命」を挙げた。
中国は隋→唐→宋と王朝が替わったけど、日本の歴史に王朝交替はない。
韓国にも易姓革命はある。
13世紀に高麗が滅亡して、李成桂による新しい王朝(朝鮮)がはじまった。
新しい王や皇帝が政治をはじめるとき、前王朝の人や制度を“悪”や“誤り”として否定することがよくある。
前王朝の一族であれば、存在そのものが否定される。
つまり殺されてしまうのだ。
韓国史では、朝鮮国王となった李成桂が前王朝・高麗の王族を根絶やしにした。
このとき李成桂により王氏(高麗王家)一族の皆殺しも行なわれた。即位の後3年間王氏一族を巨済島などの島々に集めて監視し、1394年4月に一斉に海に投げたり斬殺したりして王氏を虐殺した。
李成桂はここまでするつもりはなかったけれど、臣下に言われて一族を処刑せざるを得なかったという。
いまの韓国で「王」を姓に持つ人がほとんどいない。
その理由にはこのときの迫害がある。
王氏の子孫はその姓氏による迫害を恐れて、全氏、田氏、玉氏などに改姓している。改姓された字のなかには、必ず「王」の字が挿入されていて、王姓にたいする未練がうかがわれる。
「朝鮮儒教の二千年 (姜在彦)」
残酷なことだけど、歴史ではこんなことがよくある。
「前王朝の全否定」というのは過去の歴史にあったのだけど、韓国の文政権はいまそれに夢中だ。
文大統領を中心に、政権に関係する人たちが全力で「積弊清算」をおこなっている。
積弊(せきへい)とは、長い間に積み重なった弊害や害悪のこと。
英語辞書を見ると、「積弊を一掃する」を「to sweep away old evils」と書いてある。
積弊とは悪(evils)なのだ。
文大統領は「積弊の清算」という言葉が大好きで、大統領選ではこれをキャッチフレーズにして国民に訴えていた。
積弊という悪を一掃する自分は正義の人だ、ということだろう。
でも、「過去志向」の文政権にはついていけない人も多い。
東亜日報の記事(2017/10/28)から。
政治元老や各分野の専門家たちは、誤った過去を改革するという積弊清算の趣旨に共感しながらも、未来志向的な改革に焦点を合わせなければならないと助言する。
文政権の積弊清算、「未来のビジョン」が見えない
徴用工問題や慰安婦問題でも、過去を否定するだけで日本との約束を守ろうとしない。
文大統領の言う「未来志向の韓日関係」も具体的なビジョンが見えないから、信じる日本人はほとんどいない。
もう過去はいいから、未来に焦点を合わせなければならない、という思いは日本政府も同じはず。
文政権が全否定しているのは、朴槿恵(パク・クネ)前政権だ。
この時代にたまりにたまった“悪”を見つけては裁いている。
でも、文政権は相変わらず行き過ぎ。
朝鮮日報は社説(2018/12/08)でこう批判していた。
前政権の関係者に対する積弊捜査はすでに2年近く続いている。家宅捜索は数百回に達し、100人以上が逮捕され、今も裁判が進行中だ。裁判の結果、彼らに宣告された懲役刑を合計すると100年を上回っている。
韓国軍元司令官の自殺、今後どれほど恨みが積もるだろうか
李成桂がおこなった「前王朝の一掃」を思い出す。
前政権の人間は魔女狩りの魔女のようなものだ。
こんな文大統領の正義によって、いろいろな”犠牲者”が出ている。
韓国軍元司令官の李載寿(イ・ジェス)氏もそのひとり。
検察によって「犯罪者」とされてしまった李氏はそれを苦にして自殺した。
検察が「李氏を標的として犯罪者に仕立て上げる今回のような行為」をしたと朝鮮日報は書いている。
このくわしい内容はコラムを読んでほしい。
現政権の積弊清算で、何人もの人が自殺に追い込まれている。
検察に疑いをかけられた検事は飛び降り自殺をしたし、弁護士や企業役員も命を絶った。「しかしその企業に対する捜査で不正は何も発見されなかった」という。
「過去の悪を裁くオレ」はいいけど、文政権によるものは基準があいまいで、多くの犠牲者や批判が出ている。
いまのままだと現政権への恨みが積もり重なって、次の政権になったらまた「前政権の悪を一掃する」と積弊清算をくり返すのでは?
文大統領は「正義」という言葉をよく口にしている。
でも自分が正義の人になるために、悪をつくり出してはいけない。
いまの韓国は経済でも韓日関係でも未来が見えない。
明るい話題は一番下だけかも。
やっぱり、かわいいは正義だった。
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