バックパッカーの都市伝説:インドの人間だるま

 

さて前回、インドを旅した時に聞いたバックパッカーの都市伝説、「インドでは物乞いの親が子どもの手足を切断してしまう」という話を書いた。
もちろんこれは事実ではないんだが、旅行者の間にはわりと広まっていた。

その話に関係があるか分からないけど、インドを旅していて「人間だるま」という話も聞いたことがある。
これもインドにいた長期滞在者(沈没者)から聞いた話だ。
「だるま女」の話は昔の日本にあって、ウィキペディアにはこう書いてある。

だるま女(だるまおんな)は、両腕両脚が無い女(だるまを語源とする)

(ウィキペディア)

 

今からは想像できないけど、こうした人を「見せ物」にすることが戦前の日本であったようだ。

「だるま女」

戦前の見世物興行であった実話。
また、誘拐・拉致された女性が両腕両脚を切断され、「だるま女」として慰み者や見世物とされているという実態は明らかではない都市伝説。

(ウィキペディア)

 

これは実際にあったことだと思うけど、中国ではこんな話がある。

中国史上、唯一人の女帝である武則天も、亡夫高宗の寵愛を争った王氏(前皇后)・蕭氏(前淑妃)両名の四肢を切断後、「蟒」・「梟」と無理やり改名させるという恥辱を与え、処刑したとされる

(ウィキペディア)

 

蟒とは「ウワバミ」と読んで、ヘビのこと。
梟とは「フクロウ」。

 

ここには「武則天(ぶそくてん)」と書いてあるけど、日本では一般的に「則天武后(そくてんぶこう)」と呼ばれている。

中国では、この女性が皇帝であったことを注目して「武則天」と呼んでいて、日本では皇后であったことに注目して「則天武后」と呼んでいる。

 

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則天武后(ウィキペディア)

 

ボクがインドで聞いた話は、誘拐された女性が両腕・両脚を切断され、「だるま女」として見世物とされているという都市伝説だ。
インドに半年いるという長期滞在者(沈没者)から、だいたいこんな内容の話を聞いた。

ある日本人の女性が香港の服屋で服を試着していた。
そのときに壁が回転して、その人は中にいた中国人に誘拐されてインドに売られてしまった。
そして女性はインドで、見世物にされるため四肢を切断され、先ほどの「だるま女」になる。
あるとき一人の日本人旅行者がインドの田舎で見世せ物小屋に入ると、ステージには黒髪で黒い目をした両手足のない女性がいる。
「あれ?あの人、日本人っぽい…」と、その旅行者の背中が寒くなる。

旅行者の目が合うと、だるま女が日本語でこう叫んだ。

「あなたは、日本人ですか?私は日本人です!私のことをすぐに、日本大使館に連絡してください!」

驚いた旅行者は驚いて小屋を飛びだしてしまった。

というこんな話。
つっ込むのもばかばかしい。
と今は思うけど、この話を初めて聞いたときは、けっこう本気で信じてしまった。

 

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インドでは、手足のない物乞いがいたり街を象が歩いていたりして、すべてが日本の常識をこえている。
だから、「そんなことあるのか?」と思ってしまう話でも、「ここはインドだから」と言われると、信じてしまいやすい。

 

そんなこともあって、長期滞在者がインドのデタラメ話を話して広めていた。
とはいいつつ、ボクもそれを他の旅行者に話してしまったから、共犯者のようなものになる。

 

今となっては、インドに失礼なことをしたなあ、と思っている。
そんな罪悪感から、罪滅ぼしの意味で今回の記事を書いてみた。
インドでは親が子どもの手足を切るとか「だるま女」とか、そんな話はぜんぶウソだから!

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。