日本で一番有名なインドの建物は上のタージマハルだ。
客観的な根拠はないけど、感覚でそう断言してしまう。
タージマハルの写真は小中学校の教科書によく出てくるし、インド旅行では「首都デリー・アグラ(タージマハル)・聖地ヴァラナシ」の3つは定番中の定番だ。
ちなみに、ヴァラナシの代わりにジャイプルが入る「ゴールデントライアングル」も有名。
くわしいことはイギリス誌インディペンデンスの記事をどうぞ。
The Complete Guide To: India’s Golden Triangle
ヴァラナシは山梨県のあたりにある。
ヴァラナシはヒンドゥー教徒にとっての聖地で、「インド人の聖地」というわけではない。
「the unparalleled beauty of the Taj Mahal」と、先ほどのイギリス誌がタージマハルの美しさを「並ぶものがない」と表現している。
タージとはヒンディー語で「王冠」、マハルは「宮殿」という意味。
宮殿のように見えるタージマハルは実はお墓。
世界でもっとも美しい墓ともいわれる。
17世紀、ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンには「ムムターズマハル」という最愛の妻がいた。
でもその妻は病気で先立ってしまう。
この世にはシャージャハーンと悲しみが残された。
彼はあまりに熱愛していたため、彼女の生きている限りは他の女性を見ることもなく、その死後は自らも死のうとしたほどです。
「ムガル帝国誌 ベルニエ (岩波文庫)」
でもこれは、ムムターズマハルが亡くなった直後の話。
晩年のシャージャハーンは複数の妻と歌姫や舞姫などと住んでいて、女性については「何一つ不自由しなかった」という。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
タージマハルの説明④ 装飾・その後も元気なシャー・ジャハーン!
愛する妻のためにつくった巨大な墓がいま、インドを代表する観光スポットになっている。
ちなみに、インドで初めて世界遺産に登録された建造物がタージマハル。
そんなタージマハルをインド人はどう思っているのか?
インド人に話を聞くと意外にそっけない。
「あれはインドの宝だ!」と誇りに思っている人もいたけど、関心がない人や嫌いな人も多くて驚いた。
あるヒンドゥー教徒のインド人は、「オレはタージマハルが好きじゃない。イスラーム教の建物だからね。あの墓をつくるために、たくさんのヒンドゥー教徒が働かされて死んだんだ」なんて言う。
インドには宗教対立という「病気」がある。
とくにヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の間で争いがよく起きる。
インド独立の父・ガンディーを「好きではないし尊敬もしていない」と話すインド人にその理由を聞いたら、「彼はヒンドゥー教徒だから」という言葉が返ってきた。
日本人なら、「彼は異教徒だから」という理由で歴史上の人物を嫌いになることないだろう。
2年前にはインドで、「タージマハルがガイドブックから消された」とちょっとした騒ぎが起きた。
タージマハルがあるウッタルプラデシュ州がつくったガイドブックの「歴史的建造物の一覧」に、インドを代表するこの建造物が入っていなかった。
これはイスラーム系王朝のムガル帝国が建てたものだから、イスラーム教を嫌うヒンドゥー至上主義の人たちの影響があったとみられる。
産経新聞の記事(2017.10.19)でインド人民党の議員がこう話している。
「シャー・ジャハーンはヒンズー教徒を抹殺したいと思っていた」と持論を展開して削除を擁護。「(タージマハルは)インド文化の汚点だ」とまで言い切った。
タージマハルが観光ガイドから消えた! イスラム系王朝の建造物なのでヒンズー至上主義勢力が反発か
タージマハルを「インド文化の汚点」とする意見に賛成する人もいる。
インドでは宗教が変われば立場や主張も変わる。
先週の土曜日、北部出身のインド人2人と南部出身のインド人2人とご飯を食べに行った。
彼らにタージマハルを見たことがあるか聞いたら、このうち2人が「ある」と言う。
その2人は北インドの人で、南インドの2人はタージマハルのあるアグラに行ったことがなかった。
なんでタージマハルを見に行かないのか聞いたら、「遠いから」と2人ともそっけない。
機会があれば行ってみたいけど、わざわざその機会をつくろうとは思わないらしい。
インド人から話を聞いていると、タージマハルへのラブや関心は、日本人のほうが上なんじゃないかとときどき思う。
よかったらこちらもどうぞ。
コメントを残す