東南アジアでの日本の印象:侵略者・解放者<成功者・支援者

 

中国人の視点で東南アジアを見ると、不思議なことがあるらしい。
反日感情の強い中国・韓国とちがって、東南アジアには親日的な国が多い。

中国メディア「捜狐」が日本に対する東南アジアの印象を紹介している。

サーチナの記事(2019-01-14)

なぜだ! 東南アジアには日本を侵略者ではなく「解放者」とみなす国があるぞ=中国

この中国メディアの記事によると、東南アジアには「日本は自分たちを解放してくれた国」とみる国があって、そのことが中国人には「理解できない」という。
自分たちの歴史教育をベースに考えたら、まあそうなるわな。

2017年に日本がベトナムに自衛隊を派遣したことからも分かるように、ベトナムは「旧日本軍の亡霊」にとらわれていない。
旭日旗をかかげると、全国レベルで反対運動がおこる国とはまるで違うのだ。

先ほどの中国メディアの記事では、東南アジアのなかでもミャンマーとベトナムがとくに親日的で、イギリスとフランスの植民地支配から「解放してくれた国」と日本を紹介しているという。

ミャンマーでは、日本兵のためのお墓がいまでも残されている。
中国人には、「墓もフラワーガーデンのようにきれいに整備されているのに驚くだろう」とある。

 

ミャンマーとベトナムで日本の印象がとてもいい理由は、日本が両国の経済発展を全力で支援したから。
ミャンマー国内にある道路の修理や駅の建設などをおこなったのは日本人で、いまでもミャンマー人から感謝されている。
ある駅には、「日本人はミャンマー人の友人」という言葉があるという。

このへんの事情はベトナムも同じ。
ベトナムの内戦が終わってから、日本はベトナムにかかわるようになって、積極的に経済援助をおこなった。さらに日本が「関係の悪化していたベトナムとASEANが良好な関係を築けるように架け橋となった」とある。

それにしても、こんな記事を載せるなんて中国は成熟している。
韓国メディアだったら、「日本はアジアの解放者だった」なんて内容は掲載不可能だろう。

ネットの反応を見たら、この記事の内容に納得している人が多い。

・インドネシアにいたっては300年間のオランダ植民地支配を蹴散らしたってのが未だに感謝されてたっけ
・理解できない方がおかしいって理解しろよ
・東南アジア各国は「真の歴史を素直に受け入れる」ことができるからな。
・中国では東南アジアの歴史を教えてないのか?タイ以外は列強の植民地だったんだから、
日本を侵略者だと思うわけがなかろうに。
・反日は中国と韓国だけで、他の多くの国は日本軍を解放してくれた救世主と思ってる
そっちの方が大多数だよ
東南アジアに行けば解る
・今頃分かったのか
・大戦前の地図を見れば分かるだろうに

でも、「東南アジアにとって、日本は侵略者ではなく解放者だった」ということにあまり期待しないほうがいい。
そういう意識で東南アジアの人たちと接すると、かなりのズレがある。
いまの東南アジアの人たちにとって日本の印象は、これより「成功者・支援者」というほうが強い。

 

その国の歴史認識をもっともよく表しているのは歴史教科書だ。

日本を「解放者とみなしている」というベトナムの中学校歴史教科書を見ると、「解放者」とはどこにも書いてない。
戦争中の日本は「ファシスト日本」と悪者扱いだ。

ベトナムの解放者はベトナム。
ミャンマーの解放者はミャンマー。
東南アジアの人たちに聞いたり歴史教科書を読んだりすると、「自分たちが自国を植民地支配から解放した」と考えていることが分かる。
歴史教育が「自国中心史観」になるのはあたりまえ。

ベトナムが日本に注目しているポイントは「経済成長」だ。

戦争で壊滅的に破壊された敗戦国から、日本は大きく成長し、世界2位の経済大国となった。「日いずる」国のその「奇跡的」発展から、発展途上国は自国の工業化・現代化にとって多くの教訓を引き出すことができる。

「ベトナムの歴史 (明石書店)」

 

日本を「経済的な成功者」とする見方は東南アジアの他の国にもある。

日本の経済成長を「朝鮮戦争やベトナム戦争の特需のおかげ」とする意見もあるけど、ベトナムの歴史教科書はおもに「日本自身の要因から生じており」と指摘している。
その具体的な要因として、次のことが挙げられている。

「日本人の古くからの教育・文化の伝統。世界の進歩的価値を進んで吸収するが、民族の特色を保持する。」

「周到に育成され、向上心をもち、勤勉に労働し、規律を尊重し、節約を重んじる日本人」

これは「日本や日本人を絶賛している」というわけではなくて、こういう価値観や考え方がベトナムにも役立つから、教科書で紹介しているだけのこと。

 

「奇跡的」発展をとげたあと、日本は東南アジアの成長を支援する側にまわった。
それがいまの東南アジア諸国の「日本観」をつくっている。

東南アジアにとって日本の印象は、侵略者や解放者ではなくて「成功者や支援者」だ。

 

これはカンボジアの500リエル札

このお札には、日本の支援でできた「キズナ橋」がデザインされている。

 

ミャンマー(ラオスかも)のバス

「From the people of Japan(日本の人たちから)」と書いてある。

 

おまけ

日本人のプライドをかけて、ベトナムの中学校歴史教科書にある問題を解いてみよう。

「1970年代における日本経済の奇跡的な発展を象徴する事例を挙げなさい。」

 

 

こちらの記事もいかがですか?

東南アジアで見つけた日本の支援。誇らしく感じた7つのもの。

東南アジアに反日感情はある?→「日本は、いつまで謝ってるの?」

日本はどんな国?外国人(インドネシア人)の感想、違いや特

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ①

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ②

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。