脱・“反日”:慰安婦・徴用工問題でジャパンタイムズが英断

 

昨年、日本にやって来た外国人の数は、史上最高の3000万人を突破した。
来年は東京オリンピックが開かれるし、世界で日本がますます注目されるはず。

日本に関心のある外国人がよく見るメディアといえば、何といっても「ジャパンタイムズ」ですね。
ジャパンタイムズは1897年に伊藤博文の支援を受けて創刊された。
100年以上の歴史がある日本で最も古い英字新聞だ。

ただ残念なことに、この英字新聞には、かねてから「反日的」という批判があった。
というのはこの新聞の論調はかなり韓国政府寄りで、「コリアンタイムズかよ」と思ってしまうほど。
報道の内容が韓国の主張に近いということは、日本では「反日的」と理解する人も出てくる。
それで、「アンチジャパンタイムズ(反日タイムズ)」なんていうレッテルを貼られていた。

例えば、2015年にはMizuho Aokiという記者が、慰安婦問題についてこんな記事を書いている。

LDP panel explores ways to convey Japan’s views on sex slave issue

日本では慰安婦を「comfort women」と呼んでいるけど、韓国では「sex slave(性奴隷)」と呼ぶことが多い。

この記事は「性奴隷問題」と書いているけど、この前年、日本は国連で慰安婦を「性奴隷」と呼ぶことを否定していた。
産経新聞の記事(2014.7.16)

「『性奴隷』は不適切な表現だ」 日本政府代表、国連で表明

日本寄りでも韓国寄りでもなく、事実をもとに表現するなら「慰安婦」になる。
慰安婦が性奴隷だったと主張するなら、その根拠を示せばいい。
そんな証拠は何もなかったから、日本は国連の場で「性奴隷」は不適切だと表明したのだ。

 

昨年末、そんなジャパンタイムズに「革命」が起きた。
事実にもとづく正しい報道をしようと話し合った結果、「慰安婦」と「徴用工」の表現を改めることにする。

11月30日付の「editor’s note」(編集長の説明)で、徴用工を「forced laborers(強制された労働者)」ではなく「wartime laborers(戦時中の労働者)」と表現することを発表。

慰安婦についても、「women who were forced to provide sex for Japanese troops(日本軍に性行為の提供を強制された女性たち)」から、「women who worked in wartime brothels, including those who did so against their will, to provide sex to Japanese soldiers(本人の意思に反する人もふくめ、戦時中の娼館で日本兵に性行為を提供するために働いた女性たち)」という表現にすると決めた。
英断といっていい。

韓国では、日本の加害性や残酷性を強調するために「強制(された)」という表現を使っている。
でもジャパンタイムズは、もうこんな不適切な表現はやめるという。
事実にもとづく報道をしようとしたら、「韓国離れ」が進んだようだ。
ジャパンタイムズの「脱・反日」は、これまで客観的な根拠の重要性を訴えてきた人たちの勝利でもある。

勝者がいれば当然、敗者もいる。
韓国側からみたら、この改革は“背信行為”だ。
だから、黙って見ているはずがない。

Record chinaの記事(2019年1月25日)

韓国メディア、ジャパンタイムズの“慰安婦”呼称変更に懸念「歪曲の恐れ」

韓国メディア「KBS」は、「慰安婦と強制徴用が日本軍により強制的に行われたという意味が省かれることになり、意味がわい曲される恐れがある」と報道した。
根拠は示さず、「反対できない空気」をつくって、自分たちの解釈を事実にするのはやめたまえ。

 

ジャパンタイムズにとってこの変化は革命的。
だから、この動きについていけない人も多い。

それでロイター通信がこんな特集記事(2019年1月24日)を載せていた。

焦点:「慰安婦」など表記変更 ジャパンタイムズで何が起きたか

この記事の中で、水野博泰・取締役編集主幹は、「反日メディアであることのレッテルをはがしたい。経営陣として『アンチジャパン(反日)タイムズ』ではとても存続できない」と説明している。

でも表現の変更に反対する記者たちは、「ジャーナリズムの自殺行為だ」、「ファクト(事実)が問題であって、リアクション(読者らの反応)が問題なのではない」と反発する。

それほどファクトを重視するなら、エビデンス(証拠)を出せばいい。
証拠を示さず、「自殺行為だ」と感情的な反応をする。
これこそジャーナリズムとして終わってる。

 

徴用工や慰安婦の表現から「強制」という言葉を抜くまで、水野氏は記者や編集者と数カ月も話し合いを続けたという。
事実に反する報道をおこなって、「反日メディア」や「アンチジャパン(反日)タイムズ」と批判される状況を変えたいという水野氏の思いには頭が下がる。

でも、変革はまだ終わっていない。
表現変更を発表して2か月ほど過ぎたいまでも、まだこれに反対する人たちがいる。
「エビデンス?ねーよ、そんなもん」という姿勢はもうやめたほうがいい。
客観的な根拠がなくても、一方的な信念によって事実にするのもやめれ。

 

日本にいる外国人はSNSでよくジャパンタイムズの記事をシェアしている。
「日本はどこでもキレイだから大好き」「日本人は本当に礼儀正しい」と言う外国人が「sex slave」などの記事をシェアしているのを見ると本当に悲しくなる。
でも、もうジャパンタイムズは、アンチジャパンタイムズではない。
これからは在日外国人にも正しい理解が広がって、日本を見る世界の目もきっと良くなるはず。

脱・反日メディアの英断には祝福と歓迎しかない。
でも、革命いまだならず。
水野さん、がんばれ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。