いま日本中のサッカーファンが沸いている。
きのうアジアカップの準決勝で、日本代表がイランを「3-0」で撃破したから。
イランはアジアの異端(いたん)だった。
アジア公式戦は39戦無敗で、過去4年間で負けたのは強豪スペインだけというすごい国。
今回のアジアカップでも、これまで5試合12得点無失点という完ぺきな勝ち上がり方をしてきた。
日本はそのイランに、圧倒的な力の差を見せつけて勝利したのだから、ネットでは歓喜の声が鳴り止まない。
・大迫マジで半端ねえわ
・アジアの盟主とはこういうことだよ
・負ける気配まったくなかったな
・この負け方はトラウマなるだろw
・あー楽しかった
最高の試合だったわ
・イランは今まで日本と当たらないから無敗だったのか
・日本寝たふり戦術
最高の勝利!
最高のチーム!
みんなで掴んだ勝利!
いやーみんな戦ってたな。
試合に出てない選手もみんな声出して支えてくれた。
最高のメンバーと共に絶対優勝する!
We are Japan 💪💪🇯🇵
Great victory 👍 pic.twitter.com/W5aD0as9gW— Yuto Nagatomo | 長友佑都 (@YutoNagatomo5) 2019年1月28日
「We are Japan」の「We」には、テレビで応援していた日本人もふくまれるはず。
ただ一方で、こんな残念な声があるのも事実だ。
・イランのイメージダウン半端ない
・次からはイランは今まで通り韓国側に押し付けよう
・イランだけにイライラン
・最後のレッド出せよ
試合終了直前、イランの選手が日本の選手に暴力行為をしたことで、ちょっとした乱闘になってしまった。
ネットを見ると、イランの選手がビンタをしたとか首を絞めたとか書いてある。
それで、「イランのイメージダウン半端ない」となる。
韓国とイランはサッカーでよくもめるから、「やっと韓国の気持ちが分かった」という人も多い。
だが待ってほしい。
それは熱くなった選手がしたことで、イラン国民は関係ない。
日本に押されまくりのイラン代表は、自分たちの良さをまったく発揮できなかった。
結果として不本意なまま試合に負けたし、40戦無敗の記録が「0-3」という屈辱的な結果でつぶれてしまった。
こういう悔しい気持ちがあって、イランがイライランになってしまった。
だから選手のことは嫌いでも、イランのことは嫌いにならないでください。
ということでせっかくの機会だから、これからイランについて知っていきましょう。
イラン人は日本が好きで、イランはとても親日的な国なのだ。
イランの観光地・ペルセポリス
「ポリス」はギリシャ語で「都市」の意味。
ペルセポリスとは「ペルシア人の都」のこと。
日本各地にテクノポリスはあるし、英語の「police(警察)」はこのギリシャ語に由来する。
まず、イランを簡単にご紹介。
日本では一般的に、イラン/イラクの違いはマナ/カナ並みにむずかしいと言われている。
東がイランで西がイラクだ。
日本人はよくイランとイラクをごちゃ混ぜにするから、「イランではなくてペルシャで覚えてほしい」と言うイラン人もいる。
そのことはこの記事をどうぞ。
支那・蒙古・イランと呼ばないで!「ペルシャ」でお願いします。
さて、これがイランの基本情報ですよ。
面積:1,648,195平方キロメートル(日本の約4.4倍)
人口:8,000万人(日本の約6割)
首都:テヘラン
民族:ペルシャ人(他にアゼリ系トルコ人,クルド人,アラブ人等)
言語:ペルシャ語,トルコ語,クルド語等
宗教:イスラム教(主にシーア派),他にキリスト教,ユダヤ教,ゾロアスター教等
以上は、外務省ホームページのイラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran) 基礎データから。
イラン人の約98%がイスラーム教徒だから、イランの社会でイスラーム教の影響力は圧倒的。
ちなみに、「ゾロアスター教ってなに?」という人もいると思う。
探してみると、意外なところでつながりがあったりする。
さて、話は1990年のあたりにさかのぼる。
この時代、イラン人にはビザが必要なかったから、たくさんのイラン人が仕事を求めて日本にやって来た。
それで、上野公園と代々木公園(原宿)によく在日イラン人が集まっていた。「交流のメッカだった」とか書くと怒られるのだろうか?
しかしトラブルも多かった。
周辺住民の不満と、公園における違法テレホンカード販売などに対するメディアの否定的報道は公園での警察の介入を招くことになった。
このときは、「違法テレホンカード」と聞くとイラン人を連想してしまう日本人も多かったはず。
これとは関係ないけど、ダルビッシュ有選手は1986年に生まれたから、父親はこの時代に来日したイラン人ではないか?
歌手のMay Jさんも1988年生まれだから、イラン人の母親はこのビザ免除の時代にやってきた人かもしれない。
ちなみに「J」とは、ペルシア語の「ジャミーレ (美しい)」のこと。
日本に住んでいたイラン人には、日本に良い印象を持っている人が多い。
イランが親日国である理由のひとつにこれがある。
ほかにも、ドラマの「おしん」がイランで爆発的人気を呼んだ。
最高視聴率が90%を超えるとか、日本ではあり得ないような数字をたたき出したこともある。
20年ぐらい前、イランを旅行した日本人から「イラン人が良い人すぎて驚いた」という話をよく聞いた。
街で声をかけられて、日本人と分かると飲み物やお菓子をおごってくれたり、家に招待してくれたりする。
朝昼晩の3食付きで2泊無料で泊まったという日本人に会ったこともある。
日本人にとってイランは竜宮城だった。
イラン人は日本人を見つけると、日本での生活をなつかしく思って話しかけたくなるらしい。
海外で見知らぬ外国人について行くことは、自殺行為以外のなにものでもないけど、イランについてはみんな口をそろえて「あそこは大丈夫。イランは本当に親日的な国だから」と言っていた。
もともとイスラーム教には「旅人を大切にする」という考え方があるから、その影響もあるのだろう。
世界一周中の日本人旅行者で、「貴乃花と宮沢りえが婚約を破棄した」という情報を現地のイラン人から聞いたという人もいた。
「違法テレホンカード販売」というのは過去の話でいまは関係ないし、イラン人が日本に来たからこそ、ダルビッシュ選手やMay Jさんのような才能も生まれた。
イラン戦での乱闘騒ぎについては、長友選手がこんな後日談をしている。
イランは親日的な国で、日本好きの人が多いことは事実。
だから一度の乱闘騒ぎで、「イランのイメージダウン半端ない」と思わないでほしい。
改めて言おう。
選手のことは嫌いでも、イランのことは嫌いにならないでください!
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