「おしん」に感動したエジプト人が感じた日本の不思議

 

きのうの記事で日本のドラマ史上、少なくとも視聴率では最高の作品である「おしん」のことを書いた。
小さな体で貧困や寒さに耐える少女の姿を見て、「野蛮で残酷だった日本人」のイメージが破壊された中国人もいる。
くわしいことはこれを。

【涙で見えない】中国人の反日感情を破壊した「おしん」の力

今回はその続きのようなもので、「おしん」を見たエジプト人の様子を中心に書いていこうと思う。
感動には国境もなければ宗教もない。
けなげで懸命なおしんの姿にはイスラーム教徒も涙したのだ。

 

 

でもその前にエジプトって国について簡単に知っとこう。

面積:約100万平方キロメートル(日本の約2.7倍)
人口:9,304万人
首都:カイロ
民族:主にアラブ人(その他,少数のヌビア人,アルメニア人,ギリシャ人等)
言語:アラビア語,都市部では英語も通用
宗教:イスラム教,キリスト教(コプト派)

以上の数字は外務省ホームページ、エジプト・アラブ共和国(Arab Republic of Egypt) 基礎データから。

 

日本人で初めてスフィンクスを見たのは江戸時代のサムライだちだった。
記念撮影する侍(1864年)
彼らに興味のある人は以下をクリック!

横浜鎖港談判使節団

 

明治から昭和の激動の日本をえがいた「おしん」は中東のアラブ人の心をもぶち抜いた。

1986年に放送されたイランでは最高視聴率が90%を超えるという、大人気とか大ブームとかそんなちゃちな言葉を超越した社会現象になる。
ベトナムで「ホンダ」がそのままバイクをさすように、イランでは「Oshin(ウーシン)」が日本をあらわす言葉となった。
でもそこは厳しいイスラーム教の国。
男女がふれ合うシーンはカットされてしまう。

「オシンドローム」はエジプトでも起こった。
1993年に放送されたエジプトでも、「おしん」は人々の心をさらってしまう。
そしてこれがエジプト“らしい”といっては何だけど、首都カイロで「おしん」放映中に停電が発生する。
これで、「なんだよ。途中で終わっちゃったよ」とみんな肩を落としたという、なんてかわいい展開にはならないのがエジプトという国。
放送が途切れたことで、エジプト国民がキレた。
怒り狂った人々が電力会社やテレビ局に押しかけ、石を投げるわ火はつけるわの暴動状態となる。
それでエジプト政府が再放送を約束したという。

彼らは日本人以上に「おしん」を愛していたかもしれない。
このドラマが好きすぎて、自分の子供に「おしん」と名づける親が続出してしまった。
くわしいことは「テレビドカッチ」の記事(2018.01.23)をどうぞ。

朝ドラ『おしん』の影響でエジプトに「OSHIN」さんが続出

他にも店や会社の名前にしたエジプト人もいるという。
そんな日本人は聞いたことがない。

 

 

だれも知らないし、知りたくもないと思うけど、ボクは1996年にエジプトを旅行した。
そのとき首都カイロで泊まったホテルに、「おしん」を見て涙が止まらなかったというエジプト人スタッフがいた。
でも彼はとんでもないかん違いをしていたらしい。

「あれを見てオレは、日本はなんて貧しい国なんだ。エジプトよりずっと遅れているじゃないか。かわいそうに」と、ドラマの話を現代の日本とガチで思ってしまった。

でもその後、ホテルで働きはじめると、エジプトより貧しいはずの日本から大学生が海外旅行でやって来るではないか。
海外へ出稼ぎではなくて遊びに行くなんて、エジプトでは金持ちのすることだ。
「これはおかしい」と思って仕事仲間に聞いたら、「バカ、日本は世界第2位の経済大国なんだよ。エジプトよりずっと金持ちだ。それに日本は最先端の科学技術を持っている」と言われて驚いた。

明治~昭和初期をえがいた「おしん」の社会に近いのは、むしろエジプトだったというオチ。
1カ月半のエジプト旅行で聞いた話のなかで、もっとも印象深いのがこの話だった。

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。