はじめの一言
「この国には平和、行き渡った満足感、豊かさ、完璧な秩序、そして世界のどの国にもましてよく耕された土地が見られる。(シュリーマン 江戸時代)」
「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」
スターリン時代のソビエト連邦では、「大粛清(しゅくせい)」というものがおこなわれていた。
大粛清
1930年代後半のソ連で、スターリンの指導の下に、国家機関によって行われた共産党員、知識人および大衆に対する大規模なテロルをいう。
犠牲となった死者は800万~1000万人ともいわれる「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」
殺された人の数が800万~1000万人となると、これはナチス=ドイツのユダヤ人虐殺をも上まわる。
この大粛清では、強制収容所で多くの人が命を奪われた。
その強制収容所での、囚人たちの非人間的な生活については前に記事で書いたから、興味がある人は見て。
スターリン(ソ連)の大粛清③強制収容所での生活(食事、病気、罰)
スターリン(ウィキペディア)
ソ連がスターリン時代だったこと、強制収容所で働かされていた人たちには「ノルマ」があった。
「これだけはしなければならない」という作業量のこと。
このノルマという言葉は、じつはロシア語。
ソビエト国内にあった強制収容所でよく使われていた用語で、このロシア語が日本をふくめて世界に広がっていった。
今の日本でも、このノルマという言葉をよく使う。
「今日のおまえのノルマは、これだけだ。がんれよ」
というように言われて与えられる仕事量や作業量のことで、ボクがアルバイトをしていたときもよく言われたもんだ。
学校でも、先生が生徒に宿題という「ノルマ」を与える。
「はい、これが夏休みの宿題です。夏休み中に必ずやっておくように」
こんな感じに先生が生徒に出す宿題も、作業量が決められている1つのノルマになる。
ノルマは、達成しないといけない。
やりとげることに意味がある。
夏休みの宿題であっても、そのノルマを果たさないといけない。
ボクが中学生のころ、宿題をやっこなかった生徒は、放課後学校に残っていてやらされていた。
でも学校なら、それぐらいですむ。
会社員の場合、会社から与えられるノルマを達せしないと、いろいろな不利益をうけてしまう。
社内の評価は、当然低くなる。
その結果、給料は上がらない(下げられる)、出世できない、周囲の目が厳しくなる。
などなどつらいことが起こる。
日本は資本主義の社会だから、仕方ない。
それでも、共産主義時代のソ連よりはずっとマシ。
日本では、ウジとハエがたかる腐った馬の死体を食べなくもいい。
ノルマを達成するために、誰だってがんばる。
がんばるのは当たり前。
でも、ノルマをクリアするために自分を犠牲にするのはダメだ。
具体的には、「自爆営業」というもの。
自爆営業(じばくえいぎょう)とは、企業の営業活動において、従業員が自己負担で商品を購入し、売上高を上げる行為のこと。全てはノルマ達成のために行なわれる。営業成績のために身銭を切る行為を自爆になぞらえた比喩である。
(ウィキペディア)
百貨店で働いていた友人が、よく文句を言っていた。
「今月までにスーツを1人3着売るように。これはノルマだから」
と上から言われて、売ることができなかったら自分で買っていたという。
2着しか売ることができなかったら、残りの1着は自分で買って「1人3着」というノルマを達成していた。
友人が百貨店で働いていたときは、こんな自爆営業なんて常識だったらしい。
今では知らないけどね。
今の日本人がよく言う「自爆営業」という言葉は、もともと日本郵便の会社の中で使われていた言葉だった。
年賀はがきを売るときに使われていた用語らしい。
自爆営業
所属局によりノルマの数は異なるが、日本郵政社員一人当たりに『年賀状のはがきを何枚売る』というのが定められており、外務社員はもちろん、利用客に接客する機会の殆ど無い内務社員にも目標が定められている。
(ウィキペディア)
今でも、郵便局員には「年賀はがきを1人~枚売るように!」というノルマが課せられている。
決められた枚数のハガキを売ることができない場合は、自分で年賀ハガキを買い取らないといけない。
でも、一人で数百枚の年賀はがきなんて必要なわけがない。
だから、自分で買い取った年賀はがきを金券ショップに売りに行く。
そうしてまでノルマを達成しないといけないらしい。
こんなことが一時期、週刊誌でよく報道されていた。
報道されて問題になったから、状況は改善されたと思うけど。
でも、今でも年賀はがきが売られる時期になると、郵便局員をしている友人がフェイスブックにこんな投稿をしている。
「年賀はがきは、ボクから買ってください!お願い致します!」
ノルマを達成しないといけないのだろうけど、悲鳴のような投稿で毎年かわいそうになる。
先ほど、ノルマという言葉はロシア語だと書いた。
ではなんで、このロシア語が今の日本で誰でも使うようなふつうの日本語になったのか?
それには、シベリア抑留(よくりゅう)が関係している。
そのことを次回に書きます。
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norma の語源は確認の取れてる限りではラテン語です。大元はギリシア語だったという線が濃厚だそうですが、定かではない模様です。
ロシア語視点からいえば、нормаは(おそらくは)フランス語から流入してきた外来語という方が正確かなと。
まあ、「ノルマ」が日本語に入ってきたのはロシア経由なのかもしれませんが。
コメントありがとうございます。
「語源」という言葉の解釈しだいね。
「由来・語源辞典」によると「もとはロシア語のnorma」とあります。
「ウィキペディア」にも同じような記述があります。
だから、日本人が使うノルマの語源はロシア語のノルマでしょう。
でも、ロシア語のノルマの語源をさらにたどると、おっしゃるとおりのラテン語にいきつくのだと思います。