綺麗わび:世界最高のブランド力、日本の独特な文化が高評価

 

「日本の古い建物が好きなんです!」と言う殊勝なインドネシア人をお寺に連れて行ったとき、上のような書院造りの部屋を見て「うお~、きれ~い」と大きな目をさらに大きくしていた。
インドネシアにもこんな日本家屋の建物があって、入場料を払って中に入り、「いま日本にいる!」なんて写真をSNSにアップするという。

こういうシンプルな日本の美は世界から見ても評価が高い。
そのおかげで、“世界一”に輝いた。

共同通信の記事(2019-06-29)

日本の評判、世界最高=「独特な文化」に高評価―英調査

イギリスのフューチャーブランド社が発表した「フューチャーブランド・カントリー指数」によると(GDPの上位75カ国・地域が対象)、世界最高の「ブランド力」を持つ国は日本だった。
評価基準は製品・サービスの信頼性、健康的な食事、自然の美しさ、独特な文化などで、日本は文化の面で高い評価を受けた。

日本に関して、高い技術やイノベーションを背景とした製品・サービスよりも、西洋とは異なる無駄を省いたシンプルさなどを体現した独特な文化こそが「日本の最も偉大な輸出品」だと述べた。

ちなみに日本は5年前の調査でも1位。

 

2位以下はノルウェー、スイス、スウェーデン、フィンランドが続く。
これらの国では生活の質や環境へのやさしさなどが高評価を得た。
フューチャーブランド社は「国・地域の力を測定するのに、国内総生産(GDP)や人口規模、核兵器の数に意味はあるだろうか」と強調する。

このニュースにネットの反応は?

・上位が北欧ばっかりなのが面白い
・日本が凄くてもお前らは凄くない
勘違いするなよ
・それ矛盾してないか
我々日本人が作り育てているのが
日本のブランドだろ
・戦国時代の宣教師や、幕末に訪れた欧米人も、日本の文化や風土云々について、これと同じこと言ってるんだよな。
・大阪サミットは貧乏くさいんやなくてシンプルなんやで

西洋とは違う日本の「無駄を省いたシンプルさなどを体現した独特な文化」にはいろいろなものがある。
たとえば、インドネシア人が感動した部屋には「わびさび」という価値観が表れている。
これは世界的に有名な日本人の美意識だけど、今回はそれに「きれい」の要素を加えた小堀遠州の「綺麗さび」を紹介しようと思う。
これも日本独自の文化だ。

 

小堀遠州

 

小堀遠州は安土桃山~江戸時代の大名で、茶人・建築家・作庭家としても活躍した日本屈指のアーティスト。
名前に遠州とあるけど、この人はいまの静岡県西部の出身ではない。
小堀 政一(こぼり まさかず)は滋賀で生まれ育ったけど、徳川家康から遠江守を任されたことから「小堀遠州」と呼ばれるようになった。

茶の伝説的人物・千利休の弟子だった古田織部(おりべ)を師として学び、彼は「遠州ごのみ(綺麗さび」という独特の世界観をつくり上げた。
この美意識は現在の遠州流茶道に受け継がれている。

「綺麗さび」を三省堂の大辞林で見るとこんな説明がある。

さびの中に優しさ・華やかさのある,明るく静かな風情。小堀遠州の茶風を示す言葉。

 

簡素だけど、そこには華やかさがある。
華麗さとシンプルの2つの美しさを合わせ持つ。
「綺麗さび」とはそんな美意識のことだろう。

小堀遠州がつくったこの茶室にその世界観がある。

 

薄暗い茶室を明るく見せるために、小堀遠州は窓の多い茶室をつくった。
その代表例が上の擁翠亭(ようすいてい)。
これは13の窓がある「日本一窓の多い茶室」として有名だ。
シンプルだけど華やかという「綺麗さび」の価値観がよく表れている。

 

下は「ふじのくに茶の都ミュージアム」にある小堀遠州がデザインした茶室(を復元したものだと思う)。

写真では分かりづらいけど、壁の黒はただの黒ではなくて、赤色がふくまれている。
これも「綺麗さび」だ。

 

 

これは小堀遠州が手掛けた庭園を復元したもの。
世界に日本にしかない美意識「綺麗さび」を味わいたかったら、島田市にある博物館へどうぞ。

「わび」「さび」の茶を継承しながら、王朝の雅や和歌の世界と融合させ確立したもので、この美的感覚はふじのくに茶の都ミュージアムのデザインコンセプトにもなっています。

茶の都ミュージアム

 

ここから次の宿の予約ができますよ。

 

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2 件のコメント

  • ヨーロッパから遠く離れた場所で、比較的穏やかな気候の下で、大陸の覇権争いに巻き込まれることなく、独自の文化を保持できたのが世界中で日本だけだったという理由はありますけどね。なお文明・文化が維持されるには気象条件が結構重要であり、暑すぎても、寒すぎても、長続きしません。
    ただ、人間の通信手段と交通手段が著しく発達してしまった現代文明の中で、これからも日本文化を維持していけるかどうかは、ひとえに我々日本人自身の肩にかかっていると思います。

  • たしかに気象条件は大事ですね。
    ベトナムで漆器をつくろうと日本の漆を塗ったところ、乾燥する時間が早すぎて日本のような製品ができなかったという話を本で読みました。
    日本文化については日本人の知識が少ないように感じます。
    外国人が日本人に聞いても、「sorry,I dont know」という答えが多いと何度も聞きました。
    日本文化の維持という点では不安ですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。