韓国、WTOで世界の支持を得られず→不可解な日本の報道

 

明治の日本がむかえた最大の試練は日露戦争だろう。
これに負けたら、きっと日本はロシアの植民地になっていた。

1905年5月27日、この戦争を決定づける重要な戦い「日本海海戦」がおこなわれた。
ロシアのバルチック艦隊を発見した連合艦隊司令長官の東郷平八郎は、乗っていた戦艦「三笠」にZ旗をかかげる。
この旗にはこんな意味があった。

「皇国の興廃この一戦にあり 各員一層奮励努力せよ」

これに負けたら日本は地球上から消えて、日本人はロシアの奴隷になる。
このとき多くの日本人がそう思っただろう。

ちなみに「Z旗」には「Z=これで最後、もう後がない」という意味があるらしい。

 

左上のカラフルな旗がZ旗

 

いまの韓国にとって国家の一大事は、日本による「輸出管理」。
これをやられると、半導体製造に必要な素材が入って来なくなるということで、韓国側はパニックにおちいっている。
これだけではなく、日本はこれから韓国を「ホワイト国(輸出上の手続きを簡略化する友好国)」から外す方針だ。
そうなったら韓国経済は大打撃を受けてしまう。
それでこんな日本の攻めの対応を、「経済侵略」なんて呼ぶ韓国メディアもある。

韓国政府は日本にこの措置の撤回を求めたけど、日本政府は1ミリも動かない。
アメリカに何とかしてもらおうとしたけど、韓日の仲裁には入らないと断られた。「DIY(自分でやれ)」といったところか。
だから韓国としては日本の不当性を国際社会に訴えかけて、世界を味方につけて日本を圧迫するしかない。

韓国をホワイト国から外すかどうかの閣議決定は、今月中に行われる見通しだ。
もう時間がない。

朝鮮日報の記事(2019/07/24)からは、韓国のあせりや必死さが伝わってくる。

「ホワイト国除外」目前 韓国政府は阻止へ奔走=日本に意見書も

 

韓国が世界に呼びかける最後のチャンスは、7月23・24日にジュネーブで開かれる世界貿易機関(WTO)の一般理事会しかない。
日本もそれを知っているから、韓国の主張には正面から反論する予定。

この絶対に負けられない韓日戦に、韓国は切り札のキム・スンホ氏率いる最強軍団をジュネーブに送りこむ。
韓国経済新聞(中央日報)の記事(2019年07月24日)

韓国政府は4月にWTO上級委員会で福島産水産物の輸入制限関連紛争で最終勝訴を引き出した金勝鎬新通商秩序戦略室長を首席代表として代表団を構成した。

金勝鎬WTO韓国代表「日本、ホワイト国除外時はさらに大きな違反」

 

ここで世界の共感や支持を得られたら、日本に圧力をかけることができる。
でも、もし失敗したら、韓国にはもうあとがない。

だからキム・スンホ氏としては、「皇国の興廃この一戦にあり 各員一層奮励努力せよ」という思いだったはず。
韓国人としては、日露戦争を持ち出されるのは嫌だろうけど。

 

運命の決戦、結果はどうなったか?

ロイター通信の記事(2019/07/24)によると、韓国にとって世界は残酷だった。

South Korea is protesting against Japan’s plan to remove it from a list of countries that face minimum trade restrictions, and brought the issue to the WTO’s General Council. After Japan’s ambassador rejected Seoul’s complaint, no other countries weighed in, the official said.

South Korea fails to drum up support at WTO in row with Japan

 

WTOの一般理事会でキム氏が韓国の立場をアピールしたけど、日本側に否定されて、そのあと意見を表明した国はなかった。
つまり国際社会からの反応はゼロ。
日本の対応について、世界のどこからも反対がなかったというのは日本にとっては望ましい。
それでロイター通信は、「韓国はWTOで支持を取り付けることに失敗した」という見出しをつけたわけだ。

もう「Z」のあとはないのに、韓国はこれからどうするつもりなんだろう?
あとは白い旗しか…。

 

でも不可解なことがある。
まったく同じことを扱った報道だけど、日本のTBSニュース(7/25)の見出しを見ると、まるで別の印象を受けてしまう。

WTO終了、国際社会は意見割れる

ここでも韓国が国際社会の理解を得ることが大事としたうえで、日韓以外の第三国の反応を紹介している。
ブルガリア関係者は「韓国は熱が入っていた。これは日本が始めた問題だと思う」と言い、モンテネグロ関係者は「2国間で協議して解決すべきだ」と話す。
どちらも韓国寄りの意見だ。

さらに本文にはこうある。

いくつかの国に聞いたところ、かなり意見は割れています。中には、日本がトランプ政権がとるような政策を行い、とても残念だ。否定はしているが、これは徴用工問題の報復措置だと厳しい声を聞くこともありました。

でも、どの国がそう言ったのかは明らかにしていない。

 

それにTBSは韓国のキム氏に取材して、「日本側に直接協議を呼びかけたが、何の反応もなかった、断られたと何度も繰り返していて、痛烈に日本を批判しています」と伝えているけど、日本の担当者へのインタビューが載っていない。

それとこれはボクの主観だけど、キム氏に「勝者の余裕」はまったくなくてかなり怒っている。
国運をかけてWTOで世界に呼びかけたけど、韓国への支持がまったくといっていいほど集まらなかったからだろう。
それで日本に協議を持ちかけたけど、無視されてイラ立った。

ちなみに協議を拒絶されたキム・スンホ氏は日本をこう批判している。
朝鮮日報の記事「韓国政府「日本の輸出規制は徴用判決の報復」 WTO理事会で不当性訴え」(2019/07/25)

「日本のこういう(対話を拒否する)態度は自らがした行為に向き合う勇気も、確信もないことを示すもの。日本は(輸出規制措置に対し)目を閉じ、(徴用)被害者の叫びに耳を閉じている」
「マイクを持つ勇気もない。対話の提案についても返答しない」

感情的になって日本のせいにするのは劣勢に立たされた証拠。
これはもう勝負をあきらめきれない敗者の弁だ。
そもそも日本はこの提案に応じる義務も必要もない。

 

TBSの報道を全体的にみれば、ロイター通信の「After Japan’s ambassador rejected Seoul’s complaint, no other countries weighed in」、日本側がソウル(韓国)の訴えを退けたあと、意見表明した国は何もなかったという書き方の方が具体的で説得力がある。
「国際社会は意見割れる」ではなくて、「韓国はWTOで支持を取り付けることに失敗した」が正解だ。

読売新聞もこう書いている。(2019年7月25日)

韓国政府は厳格化の撤回を求め、国際世論への浸透を図ったが、第三国からの発言はなかった。

「禁輸ではない」…日本、WTOで韓国に反論

 

おまけに書くと、韓国紙・中央日報も第3国だけではなく、アメリカまで“黙認”したことに衝撃を受けている。

仲裁に出る可能性がささやかれていた米国も何の立場を明らかにしなかった。

日本、韓国代表団「1対1協議」も拒絶…仲裁期待した米国は沈黙

でもヤフーではTBSのニュースがトップにでている。

 

これだと多くの人が、「日本と韓国は引き分けた」と思ってしまいそう。

 

おまけ

WTOの一般理事会で、国際社会は意見は割れたのか?それとも韓国は国際社会の支持を得られなかったのか?
上の記事を書いた3日後、韓国紙・聯合ニュースで見つけた記事(2019.07.26)によると、韓国側のキム・スンホ氏がこう話している。

公の場で支持は得られなかったが、心情的に同意するとの連絡は多くあったと伝えた。

WTO理事会の韓国代表が帰国 日本の主張と協議に応じない姿勢を批判

韓国は完敗したといっていい。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

2 件のコメント

  • 7/25 12:00現在、Yahoo!ニュースはそのTBS報道を引っ込めて、ロイター報道に差し替えましたね。
    誰が担当したのか知りませんが、TBSの記者も、Yahoo!ニュース選出担当者も、日本の世論を見誤ったのではないですか?世論をミスリードしようという、メディアの典型的な失敗事例ですね。
    なお、TBSがそのような偏向報道をしていたということは、私はこの先忘れることがないでしょう。
    (そういえば、昨日のTVでも、奇妙な偏向番組を流していやがったな。)

  • そうなんですね!
    面白い情報をありがとうございます。
    いまいろんな報道がありますが、「国際社会の意見が割れた」というのはゼロです。
    日韓の意見が対立したというのなら分かりますが。
    一応あの記事で出してみたけど、空気を読み違えたのでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。