日韓関係がいつまでもダメな理由:日本を内側から動かす勢力

 

日本人が韓国を非難するとき、「韓国はすぐゴールポストを動かす(ムービング・ゴールポスト)」と言うことがある。
この場合のゴールポストとは、言ってみれば、もめごとを解決する合意条件のこと。
「わかりました。これでこの問題は終わりです」と両者が確認したあとから、一方が「いや、あれで終わりにはならない」「あと、これもやってくれ」とか言い出す。
これがゴールポストを動かすということ。

日韓両政府は話し合いを重ねて、2015年に慰安婦問題の最終的な解決を確認した。
でもその数年後、文大統領が「日本はあれで終わったと言ってはいけない」と言い出したことは典型的な「ムービング・ゴールポスト」だ。

日本では韓国が約束・宣言・合意・条約を、勝手に変更または無視して決定事項を履行せず、日本に追加要求をする状況を意味する時に使われる。

ムービング・ゴールポスト

 

元徴用工問題でもこういうことをするから、日本で「ゴールポストを動かす」と言えば、ほぼ韓国だけをさす言葉になってしまった。
一度解決を約束しても、「まだ解決していない。もう一度合意を結びなおせ」なんて言い出していたら、いつまでたっても問題は解決しないし関係も前に進まない。
だからこれをやられると、「またか」とウンザリしてしまう。

でも、待ってほしい。
これを韓国だけが悪いとするのは一方的すぎる。
ゴールポストを動かすのを認める日本だって悪いんですよ。

 

韓国側が怒ってゴールポストを動かそうとすると、それに共感して、一緒にポストを運ぶ勢力が日本にもある。
日本と韓国ではこれまでに何度もそういうことがあった。
ゆずってはいけないことをゆずってきた日本にも責任はあるのだ。

日本は韓国を「ホワイト国」から除外したことで、韓国側は空前絶後に怒り、官民をあげて日本に措置の撤回を求めている。
韓国が日本を動かしたいとき、激しい反日活動を行って”脅す”ことがある。
今回の場合、目立つのは日本製品の不買運動「ジャパンボイコット」だ。

市民団体が日本企業のロゴが描かれた段ボールをいっせいに踏みつぶす、レクサスを街中で破壊する、コンビニ・スーパーの棚から日本のビールやタバコなどの商品を撤去する。
こういう激しい反日活動をして見せて、日本に譲歩をせまる。

文大統領の考えに近い左派のハンギョレ新聞は社説でこう書いている。(2019-07-20)

安倍政府の不当な経済報復に対する市民の怒りが、それだけ大きいためだろう。(中略)韓国人の“真の民心”を重く受け止めなければならない。

安倍政府は「日本製品不買運動」の拡散の意味を直視せよ

 

日本製品を買いたくなければ買わなければいい。
それで一番困るのは韓国人従業員だ。
だから日本は静観していればいい。

 

でも困ったことに、これに呼応して日本政府を内から動かそうとする勢力がある。
韓国の国民感情に配慮して、日本にゆずらせようとする。

たとえばこれは毎日新聞の社説(2019年8月3日)

既に日本製品の不買運動などが広がっており、反日感情をさらに刺激する恐れがある。 (中略)必要なのは、日韓両政府が大局的観点から歩み寄ることである。

韓国を「輸出優遇」除外 負のスパイラルを案じる

朝日新聞や東京新聞も韓国の国民感情を優先して、日本政府に韓国への譲歩を求める。

 

その一方で読売新聞や産経新聞は、非は韓国文政権にあるとして日本政府の決定を支持する。
読売新聞の社説(2019年8月3日)

韓国の感情的な振る舞いは目に余る。日本は事実関係に基づいて粛々と対応すべきだ。(中略)信頼関係も崩れている。韓国への特別扱いをやめるのは仕方あるまい。(中略)韓国が優遇国への再指定を望むのであれば、自国の輸出管理の適正化が先決である。

輸出優遇国除外 韓国はなぜ現実に向き合わぬ

 

話し合いで解決することは大事だけど、それは韓国が信頼を回復してからの話。
あとからゴールポストを動かしたり、ポストそのものをなくしてしまう相手と話して合意しても意味はない。
どんなに激しく「ジャパン・ボイコット」をしても無視の一徹に尽きる。
反日活動をすれば日本を動かせる、という成功体験をさせると、これからの日本人が困ることになる。

元外務副大臣の佐藤正久議員が言っているのもそのことだろう。

 

*ツイートが消えてしまうかもしれないから、佐藤議員の言葉をここに載せておく。

「文大統領の日本への反発演説。日本を加害者とか、盗っ人猛々しいとか、極めて品がないし、どう見ても未来志向ならぬ過去志向だ。
「二度と日本に負けない」発言も?だ。そもそも日本は韓国と戦っていない
韓国が騒ぐから日本が擦り寄る悪癖はダメだ。将来への禍根にもなる。焦らず腰を据えて対応が必要」

 

いまの日本に必要なことは、会津藩の什(じゅう)の掟にあるこの態度だ。

「ならぬことはならぬものです」

韓国でどんなに激しく反日感情が爆発しても、それに動かされないことが大事。
ゴールポストを動かす共犯者になってはいけない。
日韓関係はいつまたってもうまくいかない理由にこれがある。

それと「日本は韓国にゆずらない」というのは、いまの日本政府の生命線になっている。
日本は余裕がありそうだけど、じつは崖っぷちのところもあるのだ。

西日本新聞の記事(2019/8/3)

「総理はもう一歩も引けない。譲ったり妥協したりしてしまえば、政権は終わってしまう」(政府関係者)状況に陥っている。

日韓相互不信底なし 輸出優遇除外 日本「譲れば政権終わる」

これは重要なことなので、別の記事でも書くつもりです。

 

 

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2 件のコメント

  • 韓国はごねれば日本がお金を出してくれていたので国民動員してやっているのでしょう。
    今までは日本もそれなりにお金もあったので黙っていたんだと思いますが、さすがにこれからはおいそれとお金を出せないところまできているのでしょう。 老後2000万円問題とか。 普通に日本の財政赤字とか。
    ほんとかどうかわからないですが、徴用工補償の問題で海外企業は韓国企業への投資や出資、業務提携から手を引き始めているとか。 

  • 韓国の国民感情を過剰に配慮した結果、それが当然になってしまったと思います。
    今回も、輸出管理で優遇をやめて普通扱いにしたら激怒しました。
    日本にも余裕はないですし、韓国もほぼ先進国と言うのだから、自分のことは自分で片づけてほしいですよ。
    なお、ここに載せられるようコメントを一部変えさせてもらいました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。