独島まで“日本製”!韓国で「ノージャパン」が不可能な理由

 

「韓国に妖怪が徘徊(はいかい)している――不買という幽霊が」

とマルクスの共産党宣言の出だし、「ヨーロッパに幽霊が徘徊している――共産主義という幽霊が」のようなことを書いてみた。

でもこの中央日報の紙面のように、韓国では連日、日本製品の不買運動がおこなわれていることは間違いない。

 

いま韓国では日本製品の排除だけではなく、日本に関連するものすべてを社会から取り除く進行中だ。
韓国企業の商品でも、原材料に日本のものがふくまれていると、国民の批判対象になってしまう。

そんな空気を背景に、今度はお札が問題視された。
韓国の通貨単位は「ウォン」で、以下のようなお札が出回っている。

 

韓国社会から日本を見つけて取り除く「日本デトックス」の影響で、お札の中にも“日本”がふくまれていたことがわかり、全国紙で報じられる騒ぎになった。

1万ウォン札と5千ウォン札には独島(竹島)がホログラムの地図に描かれている。
ホログラムは偽札を作らせないための処理で、日本のお札にもあるから珍しくはない。
でも「ノーノージャパン」で盛り上がっている韓国の場合、これが「日本製」と発覚するとスキャンダルになる。

中央日報の記事(2008年08月04日)

実はこの独島が描かれているホログラムは日本製だ。韓国銀行と造幣公社によると、日本の図版社は2005年に国際入札を通じ、ホログラムの供給業者となった。

韓国紙幣に独島の絵…ホログラムは日本製

 

韓国の造幣公社側は、「日本の業者が安い価格を提示したため、このホログラムを使っている」と説明しているとか。
現実的で合理的で常識的な発想だけど、それがいまの韓国国民に通じるかどうか。
でも、韓国のプライドのひとつである独島の絵が日本製というのは、国民としてはいい気持ちはしないはず。

でも韓国の人たちはこれを不満に思っても、不問にするだろう。
だって面倒くさいから。
いまの韓国では社会のいろんなところで日本が活躍しているから、これをすべてなくすことは現実的に無理だ。

中央日報の記事(2019年08月15日)で韓国人記者がそれを語っている。
記者が知人の住む高層アパートに行ったとき、「戦犯企業」として韓国で嫌われている三菱のエレベーターに乗って上の階に移動した。
その直前までは反日一色だったのに。

団地内のコンビニエンスストアに日本ビールを売らないという案内文が張り出され、進入路周辺に「もう負けません」と書かれた垂れ幕を掲げていることとは違い、住民のその誰も三菱エレベーターは意に介さなかった。

三菱エレベーターで浮かんだ考え

 

日本のものは売らないし、日本にはもう負けない。
でも、上の階まで歩いて行くのは絶対に断る。

ノーノージャパンを「気分」でしていたら、これは当たり前の反応だ。
だれかが無料で韓国製のエレベーターに替えてくれるのならいいけど(それも三菱製と同じクオリティーのもの)、そんなことは現実的には不可能で、住民もそれが分かっているから戦犯企業のものでも毎日お世話になっている。
みんなが見ているところや建前では「反日」の態度をとるけど、個人的には「割とどうでもいい」という韓国の人は多いと思う。

 

 

上の記事でも、日本製品の不買運動を伝えるテレビ局の「放送装備の相当部分は日本製だ。国内で使う放送カメラのほとんどは100%日本製だと考えてもいい」と指摘している。
日本製品の力を借りてジャパンボイコットを伝えている。
これがいまの韓国の姿だ。
そのうえで中央日報の記者は、いまの韓国で一切の日本製品を拒否することは「不可能なミッションだ」と結論をくだす。
かといって、ここまで盛り上がった”祭り”を急に中断することも不可能なミッションだ。

韓国で「ノーノージャパン」を本気でやろうとしたら、すぐにそれが無理であることに気づくはず。
さいきん運動のキャッチフレーズが、「ノージャパン」から「ノーアベ」に変わった理由のひとつがこれだ。
妖怪「反日」とうまく付き合う方法を熟知している。

 

 

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2 件のコメント

  • ウォン自体が漢字で書くと圓。
    日本の統治時代に設立された朝鮮銀行が発行した朝鮮円が基なんですけどね(笑)

  • その通りです。
    そのことを書こうと思ったのですが、長くなったので独立して別の記事にすることにしました。
    中国の通貨単位「元」ももとは「圓」だったのですけど、それだと日本円とかぶるから同じ発音で違う漢字の「元」にしたという話を聞きました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。