はじめの一言
「日本人はいろいろな欠点をもっているとはいえ、幸福で気さくな、不満のない国民であるように思われる。(オールコック 江戸時代)」
*ラザフォード・オールコックは、日本史の重要人物だ。
初めて見た人は、ウィキペディアもチェックしておこう。
今、バスに乗って出発を待っているところ。
このとき、バスチケットの券売機を見て、イギリス人とラーメンを食べに行ったときのことを思いだした。
ということの続き。
ベトナムに行ったとき、いろいろな外国人との混在ツアーに参加した。
ジャングルクルーズのように、メコン川を小さなボートで移動したり蛇を首に巻いたりと、それはそれは盛りだくさんのツアー。
でも、このツアーで一番印象に残っているのが、一緒にランチを食べていたスウェーデン人のこんなグチだった。
「私はね、日本人の近くで食事をしたくないの」
え?
一瞬、食事の手が止まってしまった。
日本人が、ですか?
日本人の自分が言うのもなんだけど、日本人は世界で人気があるんじゃなかったっけ?
英国放送協会(BBC)が発表する「世界に良い影響を与える国」で、日本はここ数年、世界のベスト5に入っている。
ちょっと古いけど、Expediaの調査では、世界最良の観光客(ベストツーリスト)に、3年連続で日本人が選ばれている。
世界のホテルマネージャーによるアンケート調査で日本人が3年連続で「世界最良の観光客」に! 唯一の欠点は”言葉” 〜 エクスペディア・ベストツーリスト 2009 〜
日本人が世界のベストツーリストに選ばれたのは、こんな理由による。
日本人は「行儀の良さ(その国のマナーや一般的なエチケットを守る)」「礼儀正しい」、「部屋をきれいに使う」、「騒がしくない」、「不平が少ない」の項目において1位に選ばれた
日本人には、いろんな欠点はあるかもしれないけれど、「礼儀正しさ」と「マナーの良さ」では世界でもトップクラスだ。
と、思い込んでいたから、このスウェーデン人の言葉を聞いたときは本当に驚いた。
でも、間違いなく日本人だという。
なら、その理由を聞かせてもらおうか?
「日本人が麺をすする音が嫌なの。前に、バンコクのレストランで食事をしていたとき、近くに座っていた日本人が大きな音を出して麺料理を食べていたの。その音に耐えきれなくなって、席を移動させてもらったわ」
どうやらその人は、麺を豪快にすすっていたのだろう。
外国人が、あの「ズルズル」という音を嫌うというのは聞いたことがある。
でも、何でその人が日本人だと分かったのだろう?
一緒にいた人から、「あれが、日本人の食べ方なんだよ」と聞いたという。
彼女の話によると、外国人の間で日本人が音を出して麺をすすることは、わりと知られているらしい。
不幸なことに、そのスウェーデン人は別のレストランでも、日本人が麺をすする音を聞いて不快になったという。それで、「もう日本人の近くで食事をしたくないの」ということになってしまったらしい。
正直この言葉を聞いた時は、驚いたというより軽いショックだった。
麺をすする音って、そんなにイヤなのだろうか?
でも、本を読むと確かにそう書いてある。
日本人や朝鮮半島では、麺類などを音を立ててすするが、欧米人は食事のときに音を立てることをひどく嫌う
(常識の世界地図 文春新書)
このスウェーデン人の言葉が強く記憶に残っていたから、一緒にいたイギリス人がラーメンを食べるときに、その様子をひそかに観察していた。
すると、やっぱり麺をすすっていない。
まったく音が出ないことはないけど、静か~にラーメンを食べている。
「麺をすすることはタブーなのだ」と改めて実感した。
「そりゃね、子どものころから『音を立てて食事をするな!』って、親から注意されてきたからさ。イギリス人なら、誰でもそうだろ」
と彼は言う。
ボクがいろんな国の人から話を聞いた限りでは、この「麺をすする」という食べ方には「味方」がいない。
先ほどの文章には、「朝鮮半島では、麺類などを音を立ててすする」と書いてあったけど、韓国人の友だちは「ダメです。音を出してすするのは、マナー違反ですよ」と言っていた。
前に、アメリカ人とフィリピンの友人と日本のテレビを見ていたとき、CMでタレントがお茶漬けを豪快にすすって食べていた。
このとき彼らに、この「すする」という行為について聞いてみた。
「私は、日本にいて慣れたからいいけどけど、これは本当に下品。アメリカでやったら嫌われる」
「フィリピンでも同じ。フィリピンには中国系の人も多いけど、そんなことをしない。麺をすするのはマナー違反」
彼らに言わせると、「人によっては、受け入れられないくらいの不快感を覚えるかもしれない」ということらしい。
それはまさに、あのスウェーデン人だ。
インド人やトリニダード・トバゴ人に聞いても、音を出して麺をするのはNGだと言う。
これがOKだという外国人に会ったことがない。
この「音を出して麺をすする」というのは、世界中で「マナー違反」になってしまう。
日本だと、「中国人は、大声を出して食事をするからイヤだ」という声を聞くけれど、海外では日本人が麺をすすることが相当嫌われている。
もちろん、日本で食事をする場合は問題ない。
豪快にすすってラーメンを食べれればいい。
けど、外国では外国のマナーを守る必要がある。
外国では、外国人と食事をするときもちろん、外国人が近くにいるときも音を出して麺をすするのはやめた方がいい。
「郷に入っては郷に従え」で、その土地の人の考え方に合わせた方がいい。
これも1つの異文化体験だ。
昭和初期に日本を訪れたイギリス人の女性が、日本人の食べ方を観察してこんなことを書いている。
お百姓さんがご飯をかき込む姿は、(中略)大きく開けた口もとに飯茶碗を添えて、箸をせわしなく動かしながら音をたててご飯をかき込みます。これがご飯をおいしく食べる唯一の方法なのです
(東京に暮らす キャサリン・サンソン 岩波文庫)」
これは今の日本人も変わらない。
さっき書いたお茶漬けのCMと同じだ。
日本人にしたら「おいしそうに見せる演出」なんだけど、外国人からしたらマナー違反で下品なんだろう。
これとは別で、このイギリス人とラーメンを食べに行ったときに、気づいたことがある。
「ひょっとしたら、食券機っていうのは世界でもすごく珍しい物じゃないの?」
食券の自動販売機を前にして、彼がこんなことを言っていた。
「こんなのイギリスじゃ、見たことないよ。食券機で買うなんて、人生で初めてだ」
そう言って、食券の自販機をアイフォンで撮っていた。
イギリスにはジュースの自動販売機ならあるけど、食べ物の券売機は見たことがないという。
言われてみれば、ボクもこれを海外で見た記憶がない。
フードコートで食券(トークン?)を買ったことはあるけど、券売機で食券を買ったことはない。
「すごく便利な機械だと思うよ。何でこれがイギリスにないか分からないけど。逆に、そういうことに気づいてこの機械をつくった日本人がすごいと思うよ」
と、ほめられた。
このバス停のチケット券売機を見て、そんなことを思いだした。
バスの券売機なら、イギリスにもあるのかな?
そんなことを思ったあたりで、バスは時刻どおり5時35分に出発した。
この時間の正確さは日本だけだろう。
おまけ
2016年10月26日の「サーチナ」の記事にも、「日本に来た外国人が驚くこと」として「音を出してメンをすすること」があげられている。
これは「中国メディアの天天快報」が伝えているということだから、主に中国人から見た日本人の姿だろう。
飲食文化としては「ラーメンなどの麺類を大きな音を出して啜って食べること」、「クリスマスにケンタッキーフライドチキンを食べる人が多いこと」も、世界的に見ると変わっている習慣だと主張。
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記事読ませていただきました。
麺を啜る行為って、今の若い日本人ではあまり見ない気がします。
日本のラーメン屋でも若い人は音立てない人が多い気がする。
因みに僕も麺を音を立てて食べるのが嫌いです。
外国人並みに嫌ではないですが、正直僕もこの文化は理解できないです。
海外に行くなら尚の事、その国のマナーやルールを理解していって欲しいですね。
sabo さん、コメントありがとうございます。
若い人の間では、減っているのですかね。
外国人の友人からは、この「すする」は、評判は悪いですね。
「日本ならいいけど、外国ではやるな」と言います。
相手を不快にさせないためのマナーやルールは大事ですね。
現在アメリカに住んでいるのですがあなたが書いた記事の通りです。
最初の頃は、麺を日本式で食べていたのですがアメリカ人の友達にマナーが悪いと言われてすすらないようにしました。あれから早6年経ち時々日本に帰りラーメン屋とかに行くと記事で書かれていた外国人のようになってしまいました。笑 世界に出てみないと日本人のしていることが時々マナー違反になることがあるんですね!
これからも拝見させていただきます。