【不都合な過去】徴用工問題で文大統領が決してふれないこと

 

韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長を拒否して、破棄すると電撃発表した。
その理由はとても韓国的で、一言でいうと「日本が悪い」。
文大統領が8月15日の演説で日本に対話の手を差し伸べたけど、日本は何の反応もしめさなかった。「ありがとう」の一言もない。
ほかにも韓国側の要求を無視し続けるなど日本の不誠実な態度によって、韓国はGSOMIAするしかなかったという。
つまりいつもの「こうなった責任は日本にある」だ。

そんな韓国文政権が決して言及ことがある。
「歴史を忘れた民族に未来はない」と日本によく言うのだけど、自分の不都合な過去には目を背け続ける。
文大統領はずっと口を閉ざしていたけど、きょう毎日新聞がそれを伝えてしまった。(2019年8月24日)

文大統領が沈黙を続ける 2005年に下した徴用工問題巡る外交判断

2005年といえばノ・ムヒョン政権の時代だ。
そのとき韓国は「官民共同委員会」をつくって、1965年の日韓請求権協定についてくわしく検証していた。

この協定で日本が無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドルを韓国側にわたすことで、「日韓両国とその国民の財産、権利並びに請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」ということを両政府が確認した。
韓国の言う植民地時代の賠償問題はこれにて完全終了。

2005年の「官民共同委員会」もこれを認め、いわゆる徴用工問題については「韓国政府に道義的責任がある」とし、日本には責任を求めないで、韓国が元徴用工の人たちに支援を行う方針を決定した。
この「官民共同委員会」のメンバーの一人がいまのムン・ジェイン大統領その人だ。
だから文大統領は、徴用工問題を解決する責任があるのは韓国政府だということをよく知っているはず。

でもきょねん韓国最高裁はこの問題について日本企業の責任を認めて、賠償を命じる判決をだしてしまう。それで毎日新聞は、「日本企業に賠償を命じた昨年10月の最高裁判決は、この決定に矛盾しないのだろうか」と疑問をていする。
2005年に「韓国政府が解決する」と決めたのだから、「だろうか」ではなくて明らかに矛盾している。
文政権が支持するのは2005年の政府見解か?それとも2018年の最高裁の判決か?
これには絶対答えたくないから、文大統領は「沈黙を続ける」しかないのだ。

かわりに文大統領がやったことと言えば、日本への責任転嫁。
「三権分立の原則にもとづいて、政府は口を出せない」と言い訳をして、自分たちが解決しないといけない問題を日本に押しつけ、日本企業に慰謝料を出させようとする。
その結果、過去最悪といわれる現在の日韓関係の出来上がり。
これを「言い訳」と書いたのは、判決から8か月後に韓国政府は「日本企業と韓国企業が原告側に慰謝料を払う」という解決策をだしたから。
口をはさめないのではなくて、嫌なことはやりたくなかっただけのこと。

そういう態度だから、「2005年に下した徴用工問題巡る外交判断」と裁判結果との矛盾について、文大統領はいつまでも沈黙しているのだ。
それにしても、「韓国寄り」と思っていた毎日新聞がこれを突き付けたというのはわりと意外。

 

文大統領の矛盾をつく動きは韓国国にもある。
『週刊ポスト』(2019年3月15日号)で、ジャーナリストの赤石晋一郎氏が文氏への猛烈な逆風を伝えていた。

文在寅氏に大ブーメラン 徴用工被害者1386人が韓国政府訴えた

元徴用工への慰謝料は韓国政府がはらうべき、と被害者たちが政府を訴えた。
これは2005年の「官民共同委員会」の見解と合致しているのだから、この訴えは当然だ。

アジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会の崔容相(チェ・ヨンサン)事務局長がこう言う。

「韓国政府は韓日条約に基づいて日本からお金を受け取っています。韓国政府はその受け取った資金を(戦争)被害者に渡さなかった過去がある。だから私たちは、日本から韓国政府が貰ったお金が被害者に渡っていないという状況を“正す”ことが必要だと思いました」

安心してほしい。
文大統領は誤った過去を正すことが大好きだから、この思いに応えてくれるはずだ。

 

きょねん日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判決は広がりを見せている。
元徴用工ではなくて、元徴用「兵」の遺族も動きだした。

朝鮮日報の記事(2019/08/15

強制徴用被害者遺族「日本から受け取った請求権資金、私たちの分をください」と憲法訴願

先ほど書いたように、1965年の協定で日本は韓国に5億ドルをわたした。
でも韓国政府はそれを個人にはほとんど支給しないで、国の経済発展のために使ってしまった。
この構図は元徴用工と同じだ。

それで日本軍に「連行された強制徴兵」と主張する被害者遺族が政府にこう訴える。

「強制徴兵された被害者は対日請求権資金に対する直接的な請求権を持っているにもかかわらず、政府は被害者に(補償金を)支払うことなく、経済協力資金として使ってしまった。国が強制徴兵被害者の命の価値を横領したものだ」

たしか韓国では、被害者が言った言葉がそのまま事実になる。
「被害者中心主義」の文大統領はこの件でも、きっと誤った過去を正してくれる。
「被害者の命の価値を横領した」韓国政府に正義の裁きを下すはず。

 

元徴用兵のことはよくわからないけど、これが韓国の国内問題ということはわかっている。
請求権に関する問題は1965年に日韓両政府が「完全かつ最終的に解決された」と確認したのだから。
日本企業が一度でも賠償に応じたら、とんでもない大事に巻き込まれることは必至。だから日本は「解決済み」「それは国際法違反」で押し通すしかない。
この問題は関わったら負けなのだ。

 

日本に対話の手を差し伸べたけど、日本は無視した。
「ありがとう」の一言もなく、日本はとても不誠実だ。
そんなことを言うまえに文大統領には語ることがあるし、やらないといけないこともある。
文大統領が徴用工問題を韓国政府の責任で解決すると発表したら、いまの日韓関係は劇的にかわるはずだ。
2005年の自分との約束を守ってほしい。

 

 

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14 件のコメント

  • 文政権も最近は大統領側近の不正疑惑がボロボロと出てきて、弾劾集会や学生のろうそくデモが起きていますから、なおさら都合が悪いことは隠さないとですね。
    ここで韓国政府の責任を認めたりしたら、親日派のレッテルを貼られて弾劾、刑務所行きでしょう。韓国人は民意による圧力で大統領を弾劾できることを知ってしまいましたから。
    味を占めた国民は気に入らない政権はどんどん潰そうとする。そして次の大統領にはより急進的、過激な主張で民衆に迎合する者が選ばれる……。
    民主政治と衆愚政治を取り違えた結果です。

  • ろうそくデモ&革命は諸刃の剣でしたね。
    日本に対するデモや不買運動もあの成功体験によるところが大きいかなあ、と思います。
    GSOMIAを破棄した背景にも文大統領が反日世論に迎合したことがあります。
    リーダーシップがなし崩しになって、衆愚になってますね。

  • “韓国寄り」と思っていた毎日新聞がこれを突き付けたというのはわりと意外。”
    ではなくー
    毎日がこう言うんだからこの記事がどう韓国をりすることを考えましょう。

    と、言うわけで50点
    もう少しがんばりましょう www

  • 当時、韓国内にあった日本の資産53億ドルを日本は放棄したのだから条約破棄するなら当然お金返せって話です。今の金額で500数十兆円、韓国はそのお金を誰が使った?今の経済は全てが日本ありきだったのでは?無償、有償5億ドルもそう、まずは金返せって話です。元に戻すとはそう言う事でしょう?都合のいい歴史作るより真実はそこでしょ。後、ベトナム戦争でも虐殺、強奪、性的暴行、ダイライハン問題も韓国はちゃんと賠償すべき。

  • なんか後継に目されているヤツのスキャンダルで支持率が低下しているらしいっすね。スキャンダルの火消しで、つまり国内問題でGSOMIA延長せず、を政府が正式に発表した訳です。文大統領は理解不能、非常識なんだと考えるしかないありませんな。

  • 匿名さん、あなたの言うとおりです。1個人が自分の判断でどこの国を好きになろうと他人がとやかく言うことではないはずですよね。

  • 民主政治と衆愚政治は同じものですよ。

    建前は民主政治で、本質は衆愚政治…。

    古代ギリシャでは最低の政治制度として蔑まれていましたがね…。

  • >日本に対話の手を差し伸べたけど、日本は無視した。
    「ありがとう」の一言もなく、日本はとても不誠実だ。

    なんで上から目線? しかも言いがかり!
    きっと韓国の国民は真実を知らされず、政府からいいようにコントロールされまくりでしょう。

  • >建前は民主政治で、本質は衆愚政治…。
    という皮肉はよく聞きますが、では民主政治に代わり得る(替えるべき)政治体制は何なのですか?
    この手の批判者は、そこに言及している人がほとんどいないと思う。

  • 「民主主義は最悪の政治体制だ。ただし、人類が今までに試してきたあらゆる政治体制を除いては」
    とはイギリスのチャーチル首相の言葉ですが、民主政治は衆愚政治と根は同じかもしれませんが、長い歴史の中で別のものに進化させてきた物です。
    ただし、根は同じだから混同しやすいし、民主政治は容易に衆愚政治に陥ってしまうのだと思います。
    大事なのは国民ひとりひとりが、衆愚とならないように心掛けることだと思います。

  • 民主主義は衆愚政治であるとは限らないですよ。
    民主主義において、国民が衆愚になってしまった時に限って、衆愚政治となるのです。
    つまり「民主主義⊃衆愚政治」なんですが、人間の使う自然言語にはこれを簡潔に表現する用法がありません。
    数学の用語では「AはBの真部分集合である」と言います。

  • ハ、ハ、ハ、そんな物あるわけない。
    左翼の妄想だな。連中が、喚きちらしている、正義と同じさ!見る立位置によって変わるさ!それでわ、逆に聞こう
    ワイマール憲法下ナチスは、どうなるんだい?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。