日本が鎖国の眠りから覚めて外国人を受け入れはじめたころ、一人のアメリカ人女性がやって来た。
その女性エリザ・シドモアは明治の日本人を見てこんな印象を記す。
愛くるしい日本国民の微笑、比類なき礼節、上品で果てしないお辞儀と明るく優美な表情には、はるかに心よさを覚えます。
「シドモア日本紀行 (講談社学術文庫)」
アメリカに桜を紹介した親日家のシドモアはいま横浜に眠っている。
横浜外国人墓地にあるエリザの墓碑の傍らには、1991年にポトマック河畔から「里帰り」した桜が植えられ、「シドモア桜」と名付けられている。
それから150年ほどが過ぎて、いまの日本は令和の真っ最中。
それでも日本人のおもてなしはかわらない。
日本を訪れて、礼儀や笑顔などのサービス精神に感動する外国人はいまでもたくさんいる。
でもポーランドはその反対側にあるらしい。
今回は、日本に住むアメリカ人から見た日本人とポーランド人の違いについて書いていこうと思う。
でも、「なるほど、ポーランドね。で、それはどこ?」という人も多いと思うから、まずはこの国ついて簡単に知っておこう。
ポーランドはドイツとウクライナに挟まれた国で、NATOやEUに加盟している。
基本スペックはこんな感じ。
面積:32.2万平方キロメートル(日本の約5分の4)
人口約3,840万人(2019年)
首都:ワルシャワ(約176.4万人)
民族:ポーランド人(人口の約97%)
言語:ポーランド語
宗教:カトリック(人口の約88%)
ポーランド共和国(Republic of Poland) 基礎データ
ポーランドの歴史は長いが、現在のポーランドは1989年に誕生した新しい国。
戦後、ソ連の強い影響下にあったが、1989年に憲法が改正され、国名もポーランド人民共和国からポーランド共和国にかわった。
ポーランドの初代大統領ピウスツキ
大の親日家で、日露戦争時で活躍した日本軍将校たちに勲章を授与した。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
さて、まえにアメリカ人とポーランドで生まれ育ったベトナム人(ややこしいから以下、「ポーランド人」とする)と話をしていたときのこと。
ボクが日本人とポーランド人の違いについてたずねたら、「サービスだね。ポーランド人のサービス精神のなさにはあきれたよ」とアメリカ人が言う。
彼が飛行機に乗っていたとき、ポーランド人のCAが機内食を入れたカートを彼の膝にぶつける。
「痛っ」と思ってCAを見ても、彼女は知らん顔。
日本人のCAなら「たた、大変申し訳ございませんっ」と顔色をかえるところだ。
さらにCAは誤ってミネラルウォーターを彼の服にかけてしまった。
日本人CAなら、「私はドジでノロマな亀ですっ。すみませんっ」と平謝りするところ。
アメリカ人の感覚でも「すいません」の一言は必要な場面で、ポーランド人CAは「水だから大丈夫」と言ってその場を去った。
「そんな細かいことを気にするな」と背中で伝える。
この話を聞いて、前回の「謝ったら死ぬ病」のようにメンツやプライドの問題かと思ったら、ポーランド人いわく、そうではない。
そのCAは本当に気にしていないし、愛想もないだけのこと。
これに限らず、日本人に比べたら、ポーランド人は全体的にサービス精神がないと同じと言う。
日本のコンビニ店員のように客が店に入ってきたら、「いらっしゃいませ」と笑顔であいさつをすることはない。
ドアを開ける音がしたら、反射的にその方向を見るだけ。で、また視線をそらす。
客ではなくて、だれかが来ただけ。
客からお金を受け取るときも「~円お預かりいたします」と礼儀正しい態度はなく、面倒くさそうにお金をつかんで何も言わずレジに入れる。
店を出る客の背中に「ありがとうございました」と言って頭を下げることはあり得ない。
ポーランド人の店員なら、お釣りをわたした時点ですべての関係が終わるから、何も言わずにまた個人的なことをはじめる。
10日以上ポーランドで過ごしたアメリカ人が感じた、日本人との最も大きな違いのひとつがこのサービス精神。
それは一緒にいたポーランド人も否定の余地なく認めていた。
ポーランドは国民の大部分がカトリック教徒で宗教心の強い国だけど、日本には身近に小さな天使がたくさんいるのだ。
ポーランド人がサービス精神に乏しく無愛想な理由は、この国が1989年まで社会主義国の影響下にあったことが大きいと思う。
では始めと同じく最後も、明治の日本を見たアメリカ人にしめてもらおう。
東大教授をしていて、大森貝塚を発掘したことでも有名なモースはこう思った。
衣服の簡素、家庭の整理、周囲の清潔、自然及びすべての自然物に対する愛、あっさりして魅力に富む芸術、挙動の礼儀正しさ、・・・、これ等は恵まれた階級の人々ばかりでなく、最も貧しい人々持っている特質である
「日本その日その日 (平凡社東洋文庫)」
モースと申す
新幹線で寿司を運ぶ、ジャパニーズおもてなし
このサービスに感動して、ポーランド人がSNSに投稿していた。
こちらの記事もどうですか?
>ポーランド人がサービス精神に乏しく無愛想な理由は、この国が1989年まで社会主義国の影響下にあったことが大きいと思う。
これ、私も全く同感なのですが、今の若い人達にとっては意味不明の文言にすぎないかもしれないです。
「社会主義国(の影響下)」であることが、なぜサービス精神の乏しさや無愛想につながるのか、社会主義国とはどういうものか実感として知らなければ、理解のしようがない。
かつては(80年代くらいまで)、北欧諸国も同じような病にかかっていて、現在のEU主要国から避難を浴びていたものです。今では北欧諸国に対してそんなこと言う人は全くいませんが。
>「社会主義国(の影響下)」であることが、なぜサービス精神の乏しさや無愛想につながるのか
おっしゃる通りです。
じつはその理由を書こうとしたのですけど、中国やリトアニアの話を持ち出したら思う以上に長くなってしまって、別にひとつの記事にすることにしました。
ただポーランドが30年ほどまえにできたことに触れたので、その複線を回収するために短く最後に付け足しました。
ついこの前初めて回転ずしの新幹線が運ぶおもてなしを受けてきたところです。 これは日本人でも嬉しい(笑)
ピタ!っと止まるあの爽快感はたまりませんね♪
最近は日本人も無愛想なことが多いです。 レジは日本人より海外の人の方が優しいし愛想がいいです。
そうなんです!
「ピタ!っと止まる」ということに単純に驚く外国人が多いです。
レジの日本人については、海外の人に負けないようがんばってほしいです。