エジプト在住日本人の怒りの素、アラブ人の性格「IBM」とは?

 

熱い中東でも、日本への信頼は厚かった。
という記事をちょっと前に書きました。

中東でも日本の評価は高し!「信頼できる・友好的」が8割

日本については、「友好的」「平和的」と感じているアラブ人は多い。
でも、日本人にとって中東のイメージは薄いと思う。
アラブと聞けば「アブラ」を思い浮かべるか、「テロや紛争が多い」といったイメージで、信頼・友好・平和についてのアンケート調査をしたら真逆の結果が出ると思う。

そんな日本人とアラブ人は性格や価値観も正反対だった。
今回はそんな話を書こうと思う。

 

20年ほど前、アラブの大国エジプトを旅行していたとき、遺跡観光に飽きたから、シナイ半島のダハブというところに足を運んだ。

 

北海道の左にある三角形がシナイ半島

 

ちなみにエジプトとはこんな国

面積:約100万平方キロメートル(日本の約2.7倍)
人口:9,842万人
首都:カイロ
民族:主にアラブ人(その他,少数のヌビア人,アルメニア人,ギリシャ人等)
言語:アラビア語,都市部では英語も通用
宗教:イスラム教,キリスト教(コプト派)

エジプト・アラブ共和国(Arab Republic of Egypt)基礎データ

 

エジプト旅行中に出会った日本人から、ダイビングには「世界三大聖地」があって、それがグレートバリアリーフとモルディブとエジプトの紅海だという。
当時のエジプトは物価が格安で、日本から行くと貧乏学生でもマハラジャ(王)になることができた。
当時の宿代は1泊200円(ドミトリー)、エジプトの国民食といわれる「コシャリ」なら50円ほどだったと思う。

 

パスタ・米・豆などにトマトソースをかけた炭水化物のかたまりが「コシャリ」

 

だからエジプトのダハブ(紅海に面した街)では、あり得ないほど安い値段でダイビングができるし、ライセンスの取得も可能だ。
エジプトといえばピラミッドとスフィンクスで、「海に潜る」という発想はなかったから、そのときは海水パンツも持っていなかった。
でも日本人旅行者から、「迷わず行けよ。行けばわかるさ」みたいなことを言われて、とりあえず紅海に行ってみた。

*ダハブでダイビング・ライセンスを取る日本人は昔から多い。
3日から1週間ぐらい滞在するから、ここでカップルが誕生することもある。
それでいまでは「恋するダハブ」と呼ばれている。

砂漠の乾いた黄色に慣れたボクの目に海の青は新鮮で、ここに来たことを後悔することはなかった。
ダハブでは体験ダイビングだけをしようと思っていたけど、3日間ここに滞在してライセンスを取ることにする。

*紅海(red sea)といっても、海水が赤いわけではない。
「紅(赤)」の由来には諸説あり、ボクはダハブのエジプト人から「周囲の岩山が赤く見えるから」と聞いた。また、古代ギリシャでは方角を色で表したことから、南は「赤」の紅海、北は「黒」の黒海となったという説もある。

このときお世話になったダイビングスクールの先生がエジプト人と付き合っていた日本人女性で(結婚していたかも)、この人からエジプト人のグチをよく聞かされた。
生真面目な日本人とちがって、エジプト人の性格は超いい加減。
そのテキトーさは「IBM」という言葉に集約される。

「インシャッラー(アッラー(神)が望めば)」
「ボクラ(あした)」
「マーレイシュ(しょうがない)」

この3つのアラビア語の頭文字をとって「IBM」。
「有言実行」「時間厳守」「誠心誠意」を美徳とする日本人の真逆がこれ。
エジプト人のIBMには怒りしかわかない、とその日本人女性は言う。
このとき聞いた具体例を書こう。

「あした3時に来ます」と約束したあとに、エジプト人は「インシャッラー(神がそれを望めば)」と一言くわえる。
それで4時や5時に来ても、「神が望まなかったから」という言い訳になるから悪びれることがない。日本人ならジャンピング土下座だ。
エジプト人は時間に超ルーズだけど、責任逃れの弁は立て板に水。

ダイビング機材を発注していつ届けてくれるか聞くと、いつも「ボクラ」という答えが返ってくる。
でも、1週間たってもその「あした」がこない。
電話して聞いても、また「ボクラ」と言われるだけ。
で地震と同じく、忘れたころに機材がやってくる。
その日本人女性は「ボンクラ」と言っていたような。

エジプト人はミスをすると、「すみませんでした」の代わりに「マーレイシュ(しょうがない・気にするな)」と言う。
「明日までにこのボンベに酸素を入れといて」とエジプト人スタッフに頼んで、「わかりました」という返事をもらってもそれが実行に移されない。
次の日に確認したら、ボンベに酸素が入ってない。客の命にかかわる重大事だけど、エジプト人スタッフは「マーレイシュ」とニコニコして言う。

日本人の自分としては、こんなエジプト人の性格にはストレスがたまってしょうがない。
でもそれ以上の魅力があるから、エジプト人男性と付き合ってここに住むことにしたという。

「私が女だから舐められるのかも」と嘆いていたけど、ボクも旅行中にそんなことは何度かあった。
約束や時間を守らない。言い訳するけど謝らない。自己主張するけど、一歩もゆずらない。
1か月半の旅行だったけど、そんなIBMなエジプト人に会ってそのたびに血圧が上がった。

 

そんなエジプト旅行のあと、アラブの家麺へ旅行に行った。
あ、イエメンだった。

 

イエメンで英語ガイドに「エジプト人のIBM」の話をしたら、「それはエジプト人だけじゃない。アラブ人の性格を表す有名なことばだよ」と言われた。

約束したあと「インシャッラー」と言って、実際に守られるかどうかは状況や気分しだい。
「ボクラ」は「tomorrow never knows」で、いつくるか分からない。
ミスをしても、うまくいかなくても「マーレイシュ」。

イエメン人いわく、こんな「IBM」はアラブ人全体の気質で世界的に知られている。
アラブ人ではないけれど、インドネシア人と付き合っていると「IBM」を感じることがある。
この精神はイスラーム教に由来するのだろうか?

 

おまけ

イエメンの首都サヌア

 

ここから宿の予約ができますよ。

 

中東 目次

イスラム教 「目次」

 

2 件のコメント

  • >「有言実行」「時間厳守」「誠心誠意」を美徳とする日本人

    本当にそうですかね? それは現代的な経済システムを成立させるための要素であって、必ずしも国民性とは実は結びつかないのではないか? という気もします。
    たとえば、「有言実行」なんて、明らかに伝統的な日本人の価値観ではない(20世紀にそんなことを言う人はあまりいませんでしたよ、書物とかで探してみると分かりますが)。日本人が昔から尊重してきた考え方は、むしろ「不言実行」でしょう。
    「時間厳守」も程度次第であって、日本だって地域次第でその程度にかなり違いがありますよ。
    「誠心誠意」もどうですかね? それは相手によりけりなんじゃないですか? 少なくとも私はそうです。

  • 日本人の「有言実行」「誠心誠意」については、江戸時代に貨幣経済が深く浸透した背景を調べてもらえたら分かると思います。
    信用第一で自分の言ったことを守らなかったらこんな社会にはなりません。
    それと日本人の国民性ですから、外国との比較になります。
    「有言実行」「時間厳守」「誠心誠意」を日本人以上に大事している国はどこがあるでしょう?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。