対話での解決は可能か?日本が韓国に「あぜん」とした理由

 

ことし6月、韓国の全国紙・朝鮮日報にこんな記事(2019/06/26)があった。

韓日の国防当局は、軍事摩擦とは関係なく、両国間で軍事的に協議すべき問題について話し合いを続けていると表明しているが、実質的な対立解消のためにはかなりの時間と努力が必要となる見通しだ。

韓日の軍事摩擦収束せず…日本「観艦式に韓国海軍招待しない」

 

韓国国防省と防衛省との対立はきょねんから続いていて、解決の見通しはこの時点でもまったく立っていなかった。
この原因は韓国側にある。
きょねん10月、韓国軍が開催した観艦式で海上自衛隊を招待しておきながら、旭日旗の掲揚を認めなかった。
海上自衛隊が艦船にこの旗をかかげることは法律で決まっているのに、韓国側は国民の反日感情を優先して、日本側に旭日旗をおろすよう要求する。
結局、自衛隊は観艦式への参加を断念した。

さらに12月、韓国軍の駆逐艦が自衛隊機へ射撃用レーダーを照射する。
これは相手に銃口を向けるような行為で、友好国にするものではない。
この2つが決定打となって、日韓の対立は解消不可能なほど悪化した。
というわけでもないと思うのだ。

「韓日の軍事摩擦収束せず」の決定的な原因はレーダー照射そのものより、その後の韓国側の態度にあるだろう。
韓国とは話し合いでの問題解決は無理、と日本側に確信させるほど韓国の主張はめちゃくちゃだったから。

2018年12月20日に、韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」が日本海で自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを当てたことからこの問題がぼっ発。
日本が韓国側に説明や謝罪、再発防止を求めたところ、韓国は「自衛隊が危険な低空飛行をした」と逆に日本へ謝罪を要求してきた。
頑として自分の非を認めない韓国に対して、日本は証拠映像を世界に公開。
すると韓国も、自説の正しさや日本を非難する映像を公開した。
でも、その内容に日本中があきれた。

時事通信の記事(2019年1月4日)

「低空飛行を脅威に感じたというだけで、客観的なものの提示はない。主観の問題でいつまでも平行線だろう。韓国の主張する高度150メートル、距離500メートルだとしても、一般的には脅威ではない」と話した。

「主観的で一方的」=韓国反論動画にあぜん―防衛省

 

もし韓国側が本当に脅威を感じていたら、自衛隊機に無線でその意図を確認すればよかったのだけど、このとき韓国側は何も連絡していない。
あとになってから、客観的な根拠を示すことなく「低空飛行を脅威に感じた。日本こそ謝れ」と言い出す。

このあとも防衛省は韓国側と対話での解決を試みたものの、韓国側の不誠実さにとうとうギブアップ。

防衛省は、実務者協議において、更なる客観的根拠の提示を求めましたが、韓国側からは、そのようなものは示されず、逆に「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」などの全く客観性に欠ける回答を繰り返しています。

韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について

 

*自衛隊機は国際法や国際慣例にしたがって、適切な高度と距離を保って安全に飛行していた。
くわしいことは産経新聞の記事をどうぞ。(2019.1.24)

自衛隊トップ「脅威飛行していない」 韓国の言い分を否定

 

こちらが脅威と感じたらそれは脅威だ。だから、日本は謝罪しなければならない。
国際法を無視して主観的で一方的な主張を何度もしてくる。日本としては「あぜん」とするしかない。
慰安婦問題や徴用工問題でも韓国はこんな感じ。
客観的な根拠がなくても、本人が被害を訴えたらそれが事実になる。そしてその歴史的事実を日本は認めないといけないし、被害者に賠償や謝罪をしなければならない。
全く客観性に欠ける回答をくり返すのだから、話し合いはもはや不可能。

先ほどの防衛省の見解にはこう書いてある。

韓国側に、相互主義に基づく客観的かつ中立的な事実認定に応じる姿勢が見られないためレーダー照射の有無について、これ以上実務者協議を継続しても、真実の究明に至らないと考えられることから、本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難であると判断いたします。

役所が作成した文章だけど、悔しさがにじみ出ている。

 

韓国側の見方はというと、最後まで主観的で一方的だった。

中央日報の記事(2019年09月24日)

日本側の主張に対して韓国海軍は「日本海上自衛隊哨戒機が低空威嚇飛行をしたため」としながら「加害者である日本海上自衛隊が被害者を装って韓国軍に抗議している」と反論したことがある。

日本政府、海上自衛隊観艦式に韓国海軍招待しない方針へ

 

あと2週間後(10月14日)に日本は海上自衛隊の観艦式をおこなう予定だ。
アメリカやオーストラリア、中国などを招待したけど、韓国には招待状を出さなかった。
日本はレーダー照射問題をまだ忘れていないし、「過去の問題」にもなっていないのだ。

9月27日に発表した防衛白書でも韓国の重要度を下げ、この事件についてくわしく述べている。

朝鮮日報の記事(2019/09/28)

自衛隊哨戒機が当時、低空飛行をして韓国海軍を威嚇した事実は示されていない。防衛白書の後ろの方には、この事件に対する日本政府の「最終見解」が2ページにわたり全文掲載されている。

日本「哨戒機事件再発ないよう韓国に要求」

 

きょう(9月30日)の中央日報でも、「昨年末日本海上自衛隊の海上哨戒機が低空飛行して韓国の駆逐艦を脅かした」と書いてある。
でも韓国の言う“事実”とは、「脅威を受けた者が、脅威と感じれば、それは脅威である」というデタラメなもの。
「日本=加害者、韓国=被害者」という一方的な設定も、これらの文章から読み取れる。

慰安婦問題でも徴用工問題でも韓国側は主観的な主張をくり返すし、合意したとしても、日本が約束を守ったあとにひっくり返してしまう。そしてそのあとに謝罪や反省を要求する。
だから日本はあぜんとするしかない。
そんな韓国を相手に対話での問題解決というのは本当にむずかしい。
いま日本政府が「戦略的無視」をつらぬいて、ムン政権の韓国を相手にしていないことにはこんな背景もあるはず。

 

ちなみに日本の怒りは長引く。
韓国のホテルが日本の重要行事を一方的にドタキャンしたときには、その後一年以上、そのホテルを一切利用しなかった。

反日感情に苦しむ韓国 ⑥ 日本政府を敵にしたロッテホテルのドタキャン。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。