“民度”はどこへ? スマホを差し込み死体を撮影する日本人

 

きょねん2018年に女性タレントがひき逃げ事件を起こしたとき、「日本人は冷たい」「恐ろしい」といったことが話題になった。
そのタレントは横断歩道にいた通行人を車ではねてそのまま逃走。
これは論外だけど、その場に居合わせた人で被害者にかけよった人はほんの少し。
学生やスーツを着た通行人はのほとんどは見て見ぬふりをして、足早にその場を歩き去っていく。

エラそうな言い方をさせてもらえば、日本人の二面性は前から知っていた。
いまラグビーW杯が日本で開かれていて、多くの来日外国人が日本人の親切や配慮に感動している。
でも一方で、こんなふうに赤の他人にはとても冷たい。
日本人にはそんな面がある。

いまから50年ほど前(昭和49年)、東京の千代田区で三菱重工爆破事件が起きた。
8人が死亡し、376人の負傷者を出したこの事件は、当時としては戦後最大規模のテロ事件だ。
事件を取材した外国人記者はこのときの日本人と様子を見て、先ほどのコメントと同じようなことを感じた。

道路に重傷者が倒れていても、人びとは黙って傍観している。ただ所々に、人がかたまってかいがいしく介抱していた例もあったが、調べてみると、これが全部その人の属する会社の同僚、いわば「知人」である。

「空気」の研究  山本 七平 (文春文庫)」

 

困っている人が知人なら何としても助けようとするけど、他人なら黙殺してかかわろうとしない。
50年前の外国人がそう驚いていたのだから、いまの日本人が昭和の日本人と同じか、もっと冷たくなっていてもおかしくない。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

【144カ国中142位】昔から他人に冷たい、関わりたくない日本人

 

道路に人が倒れていて、傍観するのも歩き去るのも同じレベルだけど、これは本当にひどい。

共同通信の記事(10/3)

人身事故スマホ撮影、モラル問う JR新宿駅、異例の放送

自殺だと思うけど、JR新宿駅で人身事故が発生した。
現場をブルーシートでおおって救出作業が行われていたところ、シートの内側にスマホを差し込んで撮影する人が続出。
これをやめさせるため、駅員は異例のアナウンスをした。

シートの下部などからスマホを差し込むやじ馬が複数いたため、ホームのアナウンスで「お客さまのモラルに問います。スマホでの撮影はご遠慮ください」と放送したという。

 

この“民度”にはネット民もドン引きだ。

・亡くなった人に失礼な言い方ではあるが、死の穢れとか感じる気持ちないのかね
そんなもんスマホで自宅に持ち帰るなんてとても怖くてできない
・規則になければ、やって良し。な国になっちまったな
・要するにみんな暇なんだよ
・これはやりすぎ
逮捕していい
・差し込んでる奴らを晒せよ。
頭がおかしいだろ・・・

「お客さまのモラルに問います」というアナウンスがくり返し流れたという。
そんないまの日本にびっくり。
これはそのときその場にいた人だけ。民度が低いのは彼らだけで一般の日本人は違う、と思いたいけど、他の都市で起きたら同じことが起きる悪寒がする。

電車にひかれた人体は、血の海と無数の肉片になると聞いた。
車にひかれて血を流している死体とはわけが違う。
だからそれを撮影する目的が分からない。
個人的に保存するためか、他人に見せるつもりなのか。
倒れている人を傍観したり、その場を立ち去る日本人の“民度”ならまだ分かるけど、人身事故でシートのすき間にスマホを入れて撮影する生き物はさっぱり理解できない。

 

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

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8 件のコメント

  • 結局、全部他人事というか、自分と周囲の僅かな知己だけが現実だと捉えているのでしょう。
    モラルだけでなく、想像力も足りていないのだと思います。
    他人は非現実だから、どうなっても構わない、その血も肉片も映画に出てくる作り物やゲームの映像と同じ。
    先日の記事で取り上げられたトロッコ問題でも、ネット上で「五人を助けるために一人を殺すと自分で手を下した殺人になるから何もしないのが正解」という書き込みをいくつか見ましたが、これも所詮仮定の話と考えている為に言えることで、五人は血の通った人間であり彼らにも家族や友人がいること、救える立場にありながら何もしないのは五人の「人間」を見殺しにする決断を下すという意味であることまで想像していないからでしょう。
    五人は非現実の存在だから、自分という現実さえ守られればどうなっても構わないのです。
    死体を撮影する人も、自分が見殺しにされたり死体を晒し者にされるという、起こりうる現実を想像できず、自分以外の非現実としか見ていないのだと思います。

  • 現場じゃザラだぜ
    勤務中の警察職員、消防職員撮影は百歩譲るけど、被害者、患者の撮影はね
    昔、こんな実話がある
    飛行中の旅客機、日本の航空機
    心肺停止が発生
    医療関係者は誰も申し出なかった
    無資格の搭乗者2名が心肺蘇生法を実施
    周囲の乗客は携帯撮影に夢中
    その後、2名は心的外傷後ストレス障害になりました
    ここで問題なのは、携帯撮影した乗客は言わずもがな、論外、だけど
    ではなくて、まず本当に医療従事者が同乗していなかったのか、普通乗ってる
    そしてCAは何をしていたのか、社内教育有無
    の2点
    とりあえず、緊急時は手を出しましょう

  • > 民度が低いのは彼らだけで一般の日本人は違う、と思いたいけど、他の都市で起きたら同じことが起きる悪寒がする。
    そんなことはないと思いますよ。
    そんな外道の行動を平気でするのは、スマホやネットのSNS環境に過度に依存している、東京の若者を中心に存在する狂った者たちだけです。決して日本全国に普遍的な現象ではないですよ。
    救出作業をしている人たちも、どうして、周囲に立ち入り禁止措置をしないのか? 常識を身に着けていない愚かな者には、言葉や行動で分からせるしか無いと思いますが。これも教育の一種だ。

  • ご指摘のように彼らにとってはリアルなものではなくて、映画やゲームの映像のようなものなんでしょうね。
    いまはお葬式でも以前のようにあまり死体を見ないようになっています。
    いまの日本は死を見せない社会ですから、現実の死もフィクションのように“身近”に感じるかもしれません。
    まあ私にはさっぱり分かりませんけど。

  • その話は初めて聞きました。
    2人には気の毒ですね。
    航空会社側もそういう事態を想定して準備をしていると思うのですけどね。
    みんな「君子危うきところに近寄らず」なんですかね。

  • そう思いたいですよ。
    さすがにこんなことは東京の一部の若者だけだと思いたい。
    でも名古屋や大阪、私のいる静岡では絶対にないか?と考えると100%ないと言う自信がありません。
    もちろん現実にはこの想像が外れたらいいのですけどね。

  • >2019年10月5日 12:55 PM

    トロッコの問題をここで引用するのは違くね?
    5人を見殺しにするのが悪いみたいな言い方だけど
    分岐を切り替えなければ死なないで済んでいた無関係な1人を殺すことをになるという
    そんなどっちが正しいとか簡単に割り切れる問題じゃないよ

    逆に数が多ければ、関係ない人を一人殺すことを当たり前だとする考えのほうがゾッとする。
    5人も1人も、同じ血の通った人間だよ。

  • 「犠牲を覚悟で選択する」という点はトロッコ問題も共通しています。
    ただこれは現実感がなくて、ゲーム感覚なので共感しませんけど。
    >5人も1人も、同じ血の通った人間だよ。
    だからこそ、限られた条件で多くの人を助けることが大事です。
    1人のために5人がなくなることも、助からない1人のために5人が犠牲になることもどちらも間違いです。
    「オレが必ずみんなを救う!」というルフィのような人物がいれば別ですが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。