「旭日旗に不満があるのは韓国だけではない」は本当か?

 

日本ではじめて開催されたラグビーワールドカップは、とてもにぎやかですごく静かだった。
瞬間最高視聴率53.7%をたたき出した「日本ースコットランド戦」はラグビー史上最高の視聴率を記録して、日本戦以外の試合でもスタジアムは観客で埋まった。
そんなふうにW杯はすごく盛り上がったし、同時に、旭日旗に文句を言う国がなかったからその意味では無風だった。

来年の東京五輪オリンピックで旭日旗の持ち込みを禁止するように、韓国は日本や国際オリンピック委員会(IOC)に要請したけど、ラグビーW杯ではほとんど抗議の声をあげなかった。

毎日新聞の記事(2019年9月20日)でも今回、旭日旗騒動が起きなかった理由を韓国の不在に求めている。

なぜか話題に上っていない。組織委は持ち込みを禁じていないのにだ。韓国が出場していないということだけでなく、その背景にはラグビーというスポーツの文化が深く関わっていそうだ

ラグビーW杯、なぜ「旭日旗」騒動ないの?五輪では日韓対立

 

ラグビーのスポーツ文化も背景にあるけど、そのおもな理由は「韓国が出場していないということ」だ。
旭日旗を「戦犯旗」と呼んで、オリンピックやサッカーW杯などの世界的スポーツ大会での使用禁止を叫ぶ国は世界で一か国しかない。

でも韓国の人たちはわりとナイーブで、そう言われることをすごく嫌う。
だから中央日報のような記事(2019.11.04)を読むと安心するのだ。

米教授「旭日旗への不満は韓国だけでない、IOCが東京五輪での使用禁止を」

「へえ、韓国だけじゃないんだ」と思って読んでみたら、結局そんな国は韓国だけだったでござるという記事。
韓国紙が推すこの米教授は旭日旗を「厳密に言えば戦犯旗であり」、「日本帝国主義旗」と規定したという。
「戦犯旗」は韓国でつくられた新しい表現で、韓国国内でも、「戦争犯罪」は人を指す言葉なのに、これに旗をつなげるのは正しくないのでは?という疑問の声もある。
それにアメリカ人の教授が「日本帝国主義旗」という韓国的な表現をしていることにも違和感ありまくり。
でも最も重要なことは「韓国だけではない」というところだから、謎は謎のままにして先に進もう。

では旭日旗に対して、どこの国がどんな不満を表明しているのか?
そのことについての記述がこれ。

「IOCは東京五輪に対する懸念とボイコット要求が中国、シンガポール、フィリピン、ミャンマーに広がる前に気づくべき」とし「これらの国でも数百万人が旭日旗の象徴の下で似た暴力を経験した」と説明した。

 

「数百万人」という数字があまりに大ざっぱだし、「似た暴力を経験した」の中身も書いてない。
具体的な数字や内容を書いてしまうと、あとで事実から反論されてしまうから、こんなあいまいな書き方をしたのだろう。
「中国、シンガポール、フィリピン、ミャンマーに広がる前に気づくべき」というのはつまり、これらの国は旭日旗に対して文句を言っていないということだ。
いま現時点でそんな国は韓国だけと考えていい。(あと北朝鮮ぐらいか)

 

シンガポール、フィリピン、ミャンマーは旭日旗に関心がないし、中国も「軍国主義の象徴」と見ていても韓国のような激しい拒否反応はしない。

中国と韓国の違いがハッキリあらわれたのがことし4月。
きょねん韓国が開催した観艦式では、海上自衛隊のかかげる旭日旗が最後まで認められなかったため、日本は式典参加を断念した。
でも、ことし4月に中国が開催した観艦式では、中国側は旭日旗を受け入れた。

韓国が大騒ぎしたことをまったく問題視しない中国の姿を見て、朝鮮日報が記事(2019/04/24)で韓国の国際的孤立に不安を感じている。

中国海軍70周年観艦式にはためく旭日旗、中・日の雪解けアピール

くわしいことはこの記事をどうぞ。

旭日旗をどう見る?過去に縛られる韓国と大人の中国

 

米教授が「旭日旗に不満を抱く国は韓国だけでない」と主張しているけど、その内容や根拠はすごくあいまいだ。
中国、シンガポール、フィリピン、ミャンマーに東京五輪に対する懸念やボイコット要求が「広がる前に(IOC)は気づくべき」と韓国やこの教授が勝手に先走っているだけで、それらの国は何も不満を言っていない。
これからも何も言わない。
韓国こそ、いま自分たちが世界でオンリーワンであることに気づくべき。

結局上の韓国紙を読んで分かったことは、東京五輪での使用禁止をIOCに要請するほど旭日旗に不満を持っているのは韓国だけということ。
そんな隣国にはローマの哲学者セネカのことばをプレゼントしよう。

「過去はもはや関係がなく、未来はまだ来ぬ。」

 

 

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近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。