クリスマス・ツリーと御神木:海外と違う日本人の信仰

 

きょうはクリスマスという名の平日。

キリスト教徒のアメリカ人は事前に、こんなクリスマス・マーケットでツリーやリースなどを買ってきてこの日のために準備しておく。
きっと今夜はごちそうだ。

 

 

これはまだクリスマス前、あるアメリカ人の家でツリーに飾りをつけている状態。

 

さてこ一か月ぐらい前、ロシア人とトルコ人の女性とインドネシア人と一緒に、静岡の小国神社という県内では有名な紅葉スポットへ行ってきた。

冬も秋もないインドネシアにある木は一年を通じてオールウェイズ緑色で、葉っぱの色が変わらない。
だから、こんな燃えるような赤色を見ると、いろんな角度から写真を撮るからなかなか動かない。

 

 

写真撮影に忙しいインドネシア人を置き去りにして先へすすむと、こんな大きな御神木を発見。

 

 

トルコではイスラーム教、ロシアではキリスト教(ロシア正教)の影響が強い。
それぞれ他の神を信じてはいけないという一神教だから、神道みたいに木に神が宿るという発想はなく、2人とも御神木なんてものは日本にきて初めて見たという。

この木の前で、空気を読まないインドネシア人を待つことにした。
3人で話をしているとき、トルコ人が「もうすぐクリスマスだね」なんて話題をふる。
ロシアの事情をきいたら、ロシア正教のクリスマスは1月にあるから、12月25日は平日でとくに何もしないと言う。

トルコでは、外国人客の多いレストランやホテルでクリスマス・ツリーなんかのデコレーションをするらしい。

そのときロシア人が、「クリスマス・ツリーはもともとはこういう御神木だったという話を聞いたことがある」と話すと、トルコ人も「わたしもそう聞いた!」と言う。
はるか昔のドイツではキリスト教とは別に、大きな石や木に神が宿るという神道のような信仰をもつ人たちがいた。
そういった自然崇拝や多くの神々を信じる信仰を「ペイガニズム」、その信者を「ペイガン」という。

歴史的に “pagan” 及び “heathen” はユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教の信者によって自分たちの宗教を信じない者を指す軽蔑語として用いられてきた。

ペイガニズム

 

キリスト教が広がる前のヨーロッパ各地にあった信仰を「ペイガニズム」と呼ぶことが多い。

ウィキペディアにはペイガンという言葉は侮辱的や差別的と書いてあるけど、アメリカ人、イギリス人、フランス人なんかに聞いても、この言葉にそんなネガティブな意味はないという。
会話の中で、ペイガニズムやペイガンと言っても特に問題はないようだ。

ヨーロッパではケルトの多神教や古代ギリシアの宗教、それ以外では、自然崇拝が特徴的なヒンドゥー教や神道などがペイガニズムに分類される。
だから神道の信者を「ペイガン」と呼ぶこともできなくはない。
でも個人的には、神道は「Shintou」として外国人にしっかり理解してもらいたい。

 

 

キリスト教の伝道者が、巨大な木を御神木としてまつる風習のあったドイツのペイガンをキリスト教徒にかえようとしたとき、その風習をキリスト教に取り入れたことが現在のクリスマス・ツリーになったという。
ロシア人とトルコ人が聞いた話もそんな内容で、これがクリスマス・ツリーの起源のひとつとされている。

ヨーロッパでは、キリスト教が広まると同時にペイガニズムは姿を消していく。
でもペイガニズムに由来する行事はクリスマスの他にもあって、たとえばハロウィンもそのひとつだ。
日本の場合は6世紀に仏教が伝わったあとも、それまで信仰されていた神道(古神道)がなくなることはなく、神仏混交でいまでも仲良くしている。

日本のように、世界宗教と民族宗教が同じぐらい尊重されている国は海外で本当にすくないのだ。
だからロシア人は御神木やしめ縄なんかの神道の世界を見て、キリスト教前のヨーロッパ人の信仰もこんな感じだったとおもうと話していた。

 

 

 

【ヨーロッパの食文化】クリスマス・イブはウナギだね

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

ヨーロッパ 目次 ②

ヨーロッパ 目次 ③

ヨーロッパ 目次 ④

 

2 件のコメント

  • クリスマス(Christ-mas)つまり「キリストの生誕を祝うミサ」ですから。キリストの生誕エピソードにモミの木なんか全然登場しない。クリスマス・ツリーなんか、元々のキリスト教と関係あるはずがないですよね。
    それよりもペイガニズムの影響といえば、「サンタ・クロースがトナカイのソリに乗って家にやってくる」という話の方が、どう考えてもペイガン起源色が強い風習でしょう。キリスト教が誕生したのは中東ですから、あんな暑苦しい格好でトナカイが引く雪上のソリに聖者が乗ってくるなんて、元々のキリスト教に関係するはずがない。
    ヨーロッパ各国では、緑の服を来たサンタとか、サンタが2人だったりとか、悪い子供を連れ去る怖いサンタだったりとか、サンタの兄弟みたいな人が新年に改めてやって来るとか、ペイガンに基づく様々な伝承があるらしいですよ。

  • 聖書にはイエスが12月25日に生まれたなんて、まったく書いてありません。
    ペイガンの風習から生まれたんでしょう。
    イギリス人から「母の日」もペイガンの影響とききました。
    いま欧米にある習慣やイベントで何がペイガン由来かなんて欧米人にも分からないようです。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。