日韓首脳会談:韓国寄りの朝日毎日 vs 日本寄りの読売産経

 

きのう1年3か月ぶりに日韓首脳会談がおこなわれた。

安倍首相と文大統領が輸出管理や元徴用工問題について話しあった結果、お互いの意見を述べるだけでまったくかみ合わなかったことが判明。

アメリカ人がよく言う「I think we can just agree to disagree on this」、同意できないという点では同意できるという状態だ。
話し合いの重要性はお互い確認したけど、それは会談の前から言っていたことで特に新しいことでもない。

さて一夜明けて、今朝の新聞各紙は社説でこの首脳会談をとり上げている。
というわけでこれから、それぞれ何を強調しているか見ていこう。
どの新聞も日韓関係の重要性や関係改善の必要性は指摘しつつも、そのアプローチはちがう。
大ざっぱに分けて朝日・毎日新聞は韓国政府の立場に近くて、産経・読売新聞は日本政府に近い。

まずはもっとも韓国寄りの朝日新聞の社説から。(2019年12月25日)

日本と韓国の対立 「最悪」を抜け出すために

朝日新聞は韓国の不買運動で日本がうけたダメージをアピールする。

韓国で人気のあった日本のビールの輸入が統計上ゼロになったり、韓国人観光客が来なくなったことで対馬の観光業者が困っているという。
でも、韓国への日本ビールの輸出量は全体からみるとわずか0.15%だから、影響はないも同然。
ノージャパン運動でダメージをうけたところは確かにあるけど、日本全体でみればほとんどないのだ。

韓国での不買運動、日本への影響は「ほぼゼロ」だった

それに対馬には韓国人観光客を目当てに仕事をはじめた韓国人も多いから、いまどれぐらいの日本人が困っているのかはこの社説から見えてこない。
そもそもこの朝日新聞は対馬で働く韓国人には触れていない。

この社説では、「これまでのところ深刻な経済ダメージが取りざたされるのは日本側だ」と表現していて、「日本が深刻なダメージを受けた」とは書いていない。
そんな実態はないからだ。
いままで朝日新聞がとり上げて報道していたのに、「取りざたされるのは日本側だ」と書くのはあまりフェアじゃない。

朝日新聞がここで最も言いたいのは「互いに大幅な譲歩を伴う政治決断なしに、事態は動かない」ということで、実質的には日本が韓国へ譲るよう安倍首相にせまっている。
いまの韓国が日本に譲歩できることは特にないから。
約束を守ることが「日本にゆずった」ということにはならないはずだ。

日本は韓国に対しておこなっている輸出管理強化を撤回しろということだけど、それは韓国側信頼回復がまず先だ。
韓国が日本との合意や国際法を破ったままの状態で、日本が譲歩することはありえない。
でも韓国よりの朝日新聞はそれを求めている。

つづいて毎日新聞の社説(2019年12月25日)

首相と文氏が会談 対話積み重ね信頼回復を

信頼回復のためには約束を破った側がまず誠意を見せる必要があるけど、毎日新聞の社説を読むと日韓に五分五分の責任があるようでその点は不公平。

それに根本的な関係改善には、元徴用工問題を避けて通るわけにはいかない。
そのことについては「韓国が主体的に解決に動くべき課題だという自覚を持つ必要がある」と韓国側に解決をうながしているから、「互いに大幅な譲歩を」という主張より客観的で好感がもてる。

 

ここからは日本政府寄りの新聞。

まずは読売新聞の社説

日韓首脳会談 文政権は事態の収拾に動け

「日韓関係を立て直すには、韓国政府が国家間の合意を守り、事態の収拾に動くことが重要だ」とまずはじめに韓国の責任を明確にしている点が高評価。

読売新聞は日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判決を「協定に反するのは明白だ」と言い、「国際法違反の状態を解消する責任がある」と韓国政府に求めているところが上の韓国寄り2紙とはちがう。
問題をつくった側が解決するのは当たり前。
日韓の協力はそのあとだ。

 

最後は文大統領の天敵・産経新聞

韓国大統領 対日改善の意思ないのか

韓国への愛はないのか。

今回の会談で関係修復に向けた具体的な動きはなかった。
「その責任は、文大統領の側にある」とバッサリ。

韓国最高裁の判決については読売新聞よりも一歩ふみ込んで、日本の朝鮮統治自体を「不法」と断じたことを非難し、「請求権協定に反する判決で、日本断罪の道具として理不尽な賠償訴訟の続出を招きかねない」と書く。
韓国併合は当時の国際法では合法で、いまになって違法判決をだして合意をひっくり返すなんてことは、近代国家ならあってはならないこと。

文大統領は日本について、

「最も近い隣国であり、貿易や人的交流でも極めて重要な、共に生きて繁栄するパートナーだ」
「決して遠ざかることのできない仲だ」

と首脳会談で言ったけど、元徴用工問題を解決する具体案は何も示さなかった。
自分の問題は自分でケリをつけるという意思を見せずにきれいな言葉を口にするだけだから、「対日改善の意思ないのか」と産経に見破られてしまった。

日本の世論に大きな影響をあたえる四紙のうち、露骨に日本へ譲歩を求めているのは朝日新聞だけ。
韓国寄りをこえて、もはやべったり一心同体。
いまの韓国を擁護するのには、かなりの覚悟と技術が必要だ。
いままで韓国の反日を大目に見てきたから、そのつけが回ってきた。
文大統領が責任逃れしているうちは首脳会談を何度やったところで、結果は「we can just agree to disagree on this」しかない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。