日本のお寺の鐘とイスラーム教のアザーン、その共通点は?

 

2019年が終わる直前の12月30日、日本に来て3か月というバングラデシュ人を浜松市内のお寺へ連れて行った。

ちなみにインドの東にあるバングラデシュはイスラーム教徒の割合が約88%、その他(ヒンドゥー教徒、仏教徒、キリスト教徒など)が約12%とイスラーム教の影響が強い国。
彼は“いちおうイスラーム教徒”で、あんまり熱心な信者ではない。
イスラーム教で禁止されているお酒もたまに飲むという。

そんなバングラデシュ人がお寺の境内にあった観音像を見て、「これはヒンドゥー教の神様ですか?」と驚いていた。

 

下はインドの博物館にあるヴィシュヌ神の像。
半裸で薄い服を着ていることやネックレスなどの装飾はヒンドゥー教の神様と似ている。
もともと観音菩薩はインドの神様だから、バングラデシュ人がかん違いしてもおかしくない。

バングラデシュ人の彼にとって、仏教寺院とイスラーム教のモスク(礼拝所)の違いはこうした像の有無。
イスラーム教では偶像崇拝が禁止されているから、モスクにこうした神様の像は絶対にありえない。

 

観音様を過ぎて小高い丘を登ると梵鐘があった。
下は浅草寺の鐘だけど、そこにあったのもこんな感じのふつうの鐘。
個人的には2020年あたりに、レインボーカラーや萌えキャラがデザインされた鐘が登場しそうな気がする。

 

まだ日本に時計が広く普及していなかった時代、人々はお寺の鐘の音で時刻を知らされていた。
前にイギリス人をこの寺へ連れてきたとき、「キリスト教の教会の鐘も同じ役割を持っていました」と言っていたから、こういう考え方は世界的にあったのだろう。

そんな話をすると、「それは私の国のアザーンと同じですね」とバングラデシュ人が言う。
なるほど聞いて納得。
日本のお寺の鐘の音はイスラーム世界ではアザーンになるのか。

イスラーム教では1日に5回礼拝するという決まりがあって、その時刻になると大音量で呼びかけがおこなわれる。
ボクがエジプトを旅行中、まだ日の出が昇っていない時刻に、いきなり町中のスピーカーからアザーンが聞こえてきて何度もそれでたたき起こされた。
そのときはアザーンなんて文化を知らなかったから、テロでも起きたのかとめちゃくちゃ不安になった。

エジプト人にきいたら、「あなたはいま何をしていますか?もうお祈りの時間です。早くモスクに来てください」と言っているという。
バングラデシュのアザーンもこれと同じ内容というから、きっとこれは世界共通だ。

肉声で行われることに特徴がある。「神は偉大なり」という意の句「アッラーフ・アクバル」の四度の繰り返しから始まる。

アザーン

 

「梵鐘」の「梵」という言葉は古代インドの言語サンスクリット語「Brahma」(神聖・清浄)の漢字訳で、この鐘の音には、聞いた人の苦しみを取り除き、それだけで功徳になるというありがたい効果がある。

イスラーム教のアザーンは聖書クルアーン(英語読みコーラン)を読んでいるわけじゃないから、聞いただけで清浄化されるという効果はない。
キリスト教の教会の鐘もこれと同じでただの呼びかけだろう。

お寺の鐘の音が悪い心や苦しみを消すという考え方が、12月31日につく除夜の鐘に結びついている。
そんな日本の文化、除夜の鐘がいまピンチ。
次回、そのことを書いていきます。

 

イエメンの首都サヌアに響くアザーン

 

 

中東 目次

イスラム教 「目次」

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

中東でも日本の評価は高し!「信頼できる・友好的」が8割

 

2 件のコメント

  • インドネシアでアザーンの公共放送(昔と違って今ではスピーカーがあるので大音量での放送が可能、そのような欧米近代的手段を採用するのはイスラム的には構わないのか?)は、いいですね~。いかにも「外国へ来たんだ!」っていう感じを受けました。
    私は、除夜の鐘よりも、昭和時代の田舎では普通にあった「村のチャイムと放送」を思い出しましたよ。ブログ主さんは知らないのかもしれませんが、昭和の頃には、日本でも朝、昼、夕方、平日には必ず町村の全域に届く放送を役場が流して、皆の生活を律していたのです。
    東日本大震災の時には、その放送システムを利用して最後の最後まで人々に危機を伝えながら、自分は津波の犠牲となった女性が話題にされていましたよね。

  • アザーンを聞くとイスラーム世界にいることを実感します。
    朝と夕方の放送はいまでも静岡の村落や地方都市でたまに聞きますよ。
    時報によって時刻のおとずれを共同体で共有するのもいいと思うのですけど、いまでは「うるさい!」という人のほうが多いかもしれません。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。